第六界 逃げろ隠れろ!
僕氏、25歳最強の炎系魔法使い。異界にきて、なんとか生きるすべを模索中。
そんな僕ですが、いま、襲い来る軍隊から全速力で逃げています。
「あ!! いたぞー! こっちだ! おい、止まれ貴様! こちらは発砲の許可が既に下りている! 死にたくなければ、火を吹く武器を捨てておとなしく投降しろ!!」
「うわ、ここも見つかんのかよ…! どこかにゴキブリはいないか!? 早くGチャージを行わないと!!」
まるで鬼ごっこをするために作られたかのように凸凹で、裏路地だらけのこの街だが、どうやら逃げ道はないみたいだちくしょう。
なぜ、ちょう最強の僕が、こんな魔力も扱えないような連中に追い詰められているのか。それは、大きすぎる慢心と油断が原因だった。
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……太郎をミスって殺し、仕方ないから食ったあと、僕は次に実験しようと思っていた虫類を探していた。
<二界>でも、虫の中でも魔力を扱える奴は魔蟲として強い戦闘力を持っていた。
なにより、たくさん魔力を持ってたGも虫だから、それに近い魔力をもってる可能性が高かったからだ。
そこまではいい。
ただ、魔法が使えない状態なのに、殺人事件をおこした現場にだらだらと居座ってたってのがちょっとマズかった。
なんてったって魔法が使えない僕なんて、見つかったらすぐにやられるくらいの心がまえでいた方がいいレベルの戦闘力だ。この帯魔加工のシャツのおかげで魔法や打撃への防御力や耐久力、また膂力はある方だが、捕まってしまったらそんなの脱がされて終了だ。
のうのうと、もう結構腹いっぱいなんだよなーとか考えながら虫を探していた僕。そんなとき、路地の向こう側から不穏なサイレンが聞こえてきた。
嫌な予感がしたので、急いで外に出る。するとそこにいたのは、羽虫のようにうるさい音を鳴らす赤と青の色がデザインされた車の集団と、それらの中の、先ほどよりはるかに数を増やした、あの制服マン軍団だった。
「これはやべえ、逃げろ。」
建物の壁伝いに這いながら、気配を消してこっそりこの場をはなれようとした。
「先輩、いましたあいつです! まだこんなところにいました!」
しかしやはり当然ながらすぐに見つかり追いかけられている、ということで今に至るというわけだ。
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幸い、戦場を駆け回ることに慣れているからか、地形を生かした鬼ごっこは得意なほうだ。
しかしやっぱ、[重力操作]が使えないとかなり疲れる…。
走る。走る。息がきれる。
しかしこうして走ってると、僕のチャームポイントの前髪がみだれるからいやだ!
はあ、はあ。後ろを向くと、追手は少し引き離せてきている。いいぞ、この調子だ。この調子で逃げ続けて、さっき通ったような人通りの多いところに紛れ込もう。
お、曲がり角。よし、ここで撒くぞ!
僕は足にハイパワーをそそぎ続け、思いっきり曲がって、追手をさらに引き離す。
そしてさらにもういっこ十字路をを曲がり、完全に逃げ切ることに成功だ!
と思っていたこともありました。
前方から耳に鳴り響くサイレン。
前から迫ってきたのは、例の車たち。
やっぱ機械すごいっす。すごい速いっす。
回り込んできたってことかよ畜生! 手のひらで転がされてたみてーじゃねーかよクソ!
仕方ないので急いで引き返し、さっきの十字路を逆側に曲がる。するとそこには、さびれた感じの住宅街が広がる一本道だった。
まずいまずい、こんな一本道じゃあすぐにあの車に追いつかれちまう。
はあ、はあ。あ、でも家があるのは好都合だ! ひとまずこの家に隠れるぞ!
一時の隠れ家に選んだのは、窓が割れているのが見られて、人がいなそうでなんなら空き家っぽい二階建ての家。
僕はその、一階の割れてる窓から侵入を試みた。まず、割れ目に足をいれて、次に胴体、んで頭…
「いって! あいたた! 狭すぎんだろバカヤロー!」
顔面が痛いいい。触ってみると、顔が血まみれになっていた。僕のきれいなほっぺが、おでこがあ…。
なんでこんなに災難ばっかりなんだよ。それもこれも魔力が使えないからだ。まあとりあえず、ここに入ったところは見られてなかっただろうからここは安全だ。
よし、そんで今声を出しちゃったけど反応もないし、ひとはいないってことでいいか。いいな。
しかしいてて…、血濡れた顔を洗いたいから水場を探してみるか。
ここはちゃぶ台みたいのがあるからリビングかな。お、これは結構いい机。客室っぽいな。この机は作業机かな?家主はどんな職業のひとなんだろ。机職人とかかな。
などと机レビューをしてたら、キッチンらしきところを発見。
蛇口をひねるが、水は出ない。くそ。ひねりまくってねじったら、なんか蛇口取れちゃったし。
うん、やっぱ空き家だなここは。
というかこの界の蛇口ってどうやって水出るんだろ?魔法使えないのに、蛇口ひねると水出てくるとかどーゆー仕組み?
もしかしたらこの界には、魔力とは全く違うエネルギーとかがあるのかな?うーん。謎い。
とか考えてたら、二階からゴソゴソ、と音が聞こえてきた。
「家主か!?」
どうしよ。いま僕には戦闘手段がない。もし見つかって交戦になったらあいつらに突き出されるかもしれない…。いやまてよ。さっき、いかにも侵入しやすそうなところの窓が割れていた。
第三者の可能性がある。
とりあえずの武器として、そこにあった包丁を手にとった。
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