1-35 茨、魔法適性を調べる
再びティアナと手を繋ぐ。
相変わらずドキドキとしながらも、僕は先程の要領で魔力を体内で循環させ、そのままティアナへと流す。
手を繋いだ事で、パスが繋がったのだろうか。
初めて他人に流したのだが、これと言って苦労も無く、スムーズに行う事ができた。
それを数秒程続けた所で、僕は集中を解き、魔力の流れを止める。
そして目前のティアナへとチラと視線を向けると、
「……どう?」
と恐る恐る問うてみる。
ティアナは何やら困惑した表情を浮かべながら、
「……ごめんなさい。もう一回流してもらっても良いかしら?」
「え? う、うん」
……どうしたんだろう。もしかして属性が感じられないとか?
疑問に思いながらも、僕はティアナに従い再び魔力を流していく。
それを幾らか続けた所で、ティアナは1人頷き、
「なるほどね……」
と声を漏らす。
その声に僕は集中を解き、ティアナへと目を向け、次の言葉を待つ。
「茨。結論から言うわ」
真剣な表情でこちらを見つめるティアナ。
ごくりと喉を鳴らしながらその容貌をじっと見つめる僕の前で、ティアナはその表情を緩めると、
「おめでと。貴方、属性持ちよ。それも2属性持ち」
「おおー!」
「ワフッ!!!!」
僕とモフ子が思わず声を上げる。
しかしそれも仕方がないと言えるだろう。
何故ならば、2属性持ちと言えば、向こうの世界では優秀な部類に入るのだ。
つまりは、こちらでは特にこれといった取り柄の無い僕が、しかし魔法という観点では「才能がある」と判断されたも同義であるのだ。喜ばない訳がない。
嬉しそうに床を走り回っていたモフ子が、興奮のあまりその走路を空中へと広げる。
僕もそんなモフ子に続き空中を駆け出す勢いで、モフ子と共に喜びを分かち合う。
と、そんな僕達の姿に目を向けるティアナであったが、その表情は何故か困惑に染まっている。
そんなティアナの姿に疑問を覚えつつも、しかし興奮が冷めやらない僕は、変わらないテンションのまま、
「その属性って何!?」
と問う。ティアナは僕の勢いに少し圧倒されつつも、
「……1つは風属性。モフ子様と同じ属性ね」
「おおーー!!」
「ワフッ!!!!」
……モフ子と一緒だ!
再び喜びをあらわにする僕とモフ子。
その眼前で、ティアナは間髪入れずに再度口を開く。
「そしてもうひとつの属性が──ごめんなさい。わからないわ」
「…………へ?」
「ワフッ?」
想定外の答えに、僕とモフ子は思わず声を漏らす。
「わからない?」
「えぇ」
「どういう事?」
「どういう事……なのかしらね。私もかなり困惑しているわ」
言葉の後、ティアナは少し考える素振りを見せる。
一瞬の静寂。
たかが数秒でありながら、しかし永遠にも感じられるその静寂の後、ティアナは考えが纏まったのか、静かに声を上げる。
「考えられる理由は2つね」
一拍空け、
「一つは私の検査ミス。7属性共その魔力の質は完全に理解しているから、基本無いとは思うけど、絶対とは言い切れないわ」
「もう一つは?」
「──茨が私の知らない属性、つまり未知の属性を有している可能性よ」
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