1-33 モフ子、魔法適性を調べる

 魔法を教わるとはいえ、現在の時刻は20時と既に夜遅い。


 確かに明日も休みである事を考えれば、僕自身は日が変わる時刻まで起きていても問題は無い。

 しかし、ティアナは異世界からやってきたばかりであり、そんな彼女に初日から夜更かしをさせるのは流石に申し訳ない為、今日はひとまず魔法適性というものを調べるだけにした。


 ちなみに魔法適性とは、先程の話であったように、その人が発現できる魔法属性の事である。


 例えば、火属性の適性があれば火属性の魔法を使用でき、それ以外の属性を扱う事はできない。


 これは他の属性でも変わらず、故に魔法適性が多ければ多い程、一般的には魔法使い

 として大成できると言われている。


 つまり、逆に言えば、魔法適性が無ければ、属性魔法は扱えないという事でもある。


 ちなみに「スキル欄に魔法の表記がなかったら、魔法は使えないのでは?」と思い、ティアナに確認した所、どうやらそういう訳では無いらしい。


 何でも、適性がある属性をある程度扱えるようになった所で、初めてスキルが発現する為、現在所持スキルが無いからといって、悲観する事はないようだ。


 その話を聞き、僕はほっと息を吐く。

 ティアナは、そんな僕の姿に小さく微笑んだ後、口を開く。


「……さ、それじゃ早速調べましょうか。まずは……モフ子様からいきますか?」


「ワフッ!」


 ティアナの声に、彼女の太ももに居るモフ子が元気良く吠える。どうやらモフ子も、魔法適性が気になるようだ。


「茨もそれで良いかしら?」


 早く知りたいという気持ちもあるが、多少の順番の前後に特に意味はない為、僕はうんと頷く。


「うん、いいよ」


「一応、モフ子様から調べるのには理由があるわ。それを説明する為に、まずはどうやって調べるか、簡単に教えるわね」


 言葉の後、ティアナが順序を説明してくれる。


 まず、どこでも良いのでティアナと接触し、その状態のまま、彼女へと魔力を流す。


 どうやらこの時に流す魔力により、適性を測るようだ。


 詳しく話を聞くと、何でも適性持ちの場合、その人の流す魔力の質が、有する適性属性に寄るらしい。


 そしてそれを、7属性を扱えるティアナは全て感じ取れる為、適性がわかるという仕組みのようだ。


 ここまで話を聞き、僕は納得と同時に疑問を覚える。


「……あれ、てことはまず魔力を流せないと話にならない?」


「そういう事。ただ、茨はその方法すら知らない……だから、今回はモフ子様の属性を先に調べる事にしたのよ」


 なるほど、確かにモフ子は既に魔法を使える。ならば当然魔力を流す事も可能であり、手間取る事無く調べられる事であろう。


 納得したように頷く僕。その姿を確認した後、ティアナはモフ子の方へと視線を向け、


「……モフ子様、こちらに手を乗せていただけますか」


「ワフッ!」


 広げたティアナの手のひらに、モフ子がいわゆるお手の姿勢で前足を乗せる。


 その愛らしさに思わず表情を緩めるティアナ。

 しかしすぐ様気を引き締めると、


「それでは、いつものように、私の手に魔力を流してください」


「ワフッ!」


 ……今、流してるのかな?


 魔力が目に見えない為、僕にはただお手をしか見えないが──


「……えっ?」


 と、ここで突然ティアナが声を上げ、


「そんな、フェンリル様よ。それなのに──」


 次いで、僕に聞こえない声で何やらぶつぶつと呟く。


 ……何かあったのだろうか。


「ワフッ?」

「ティアナ?」


「あ、いえ、ごめんなさい。……モフ子様の適性がわかったわ」


 一拍空け、


「モフ子様の適性は……風属性よ」


「おお!」

「ワフッ!」


 ステータスの表示にあった風属性。スキル化するのは適性があるという証明である為、そこに驚きはない。

 しかし、やはり適性があるという事実が喜ばしい事には変わりない為、僕とモフ子のテンションが上がる。


 しかし、何故だろうか。

 ティアナの表情は優れない。


「……どうしたの、ティアナ」


 その姿を不思議に思い、思わず声を掛ける。

 するとティアナは、ハッとし、


「いえ、何でもないわ」


 と言った後、表情を元に戻し、


「……さ、次は茨の番よ。魔力を流す感覚も掴まなきゃだし、さっさとやっちゃいましょ」


 と続ける。そんな彼女の様子に疑問は覚えたものの、しかしそこまで深刻では無さそうであった為、


「お願いします!」


 と言い、僕の適性検査へと移る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る