1-6 モフ子、お留守番をする
名前を決めた後、モフ子と遊びながら、僕はどうしたものかと思案する。
……というのも、一緒に住むにあたって足りないものが多過ぎるのである。
住処に関しては百歩譲って良いとしても、食事は絶対に必要だ。
しかし、現状のストックではもってあと1日といったところ。
これは早急に補給する必要がある。
が、それには1つ問題があった。
……モフ子を置いて、出かけるのもなぁ。
そう。今買い物に行けば、モフ子を家においていく事になる。
例えばしつけのなった成犬ならまだしも、生まれて間もなく、この家の事もあまり把握していないだろうモフ子を家においていくのは、やはり抵抗があった。
さて、どうしようかと、モフ子の相手をしつつ僕が悩んでいると……突然モフ子が、あぐらをかく僕の前でお座りの体勢になり、ポンッと右前足を膝の上に乗せてきた。
いわゆる『お手』の形だろうか。
「……? どうしたの? モフ子」
突然の行動に僕は訳が分からず首を傾げる。
対しモフ子は、前足を引っ込めると、お座りの体勢のままこちらをジッと見つめている。
……ま、まさか!?
モフ子の行動に、僕はとある可能性を思い浮かべる。
それは天才犬かもしれないモフ子だからこそ考えられる可能性で……
「まさかモフ子、1人でお留守番できたりする?」
半信半疑の状態で、こちらに目を向けるモフ子へと僕がそう声を掛けるとモフ子は、
「ワフッ!」
と元気良く声を上げ、再度右前足を僕の膝へとのっけた。
……た、偶々だよね?
モフ子のこちらの言葉を完全に理解しているかのような行動に、しかし今回ばかりは完全には信じられず僕は苦笑いを浮かべる。
……よし、なら。
が、すぐに真実を確かめるべく、僕はゆっくりと立ち上がった。
そしてサイフ等を持つと玄関まで行き、靴を履く。
その間もモフ子は僕の後ろをちょこちょことついてきたが、僕が土間へ降りると、モフ子は土間へ降りたりはせず、廊下で静かにお座りをする。
……まさか、本当に?
僕はごくりと喉を鳴らすと、廊下で佇むモフ子に、
「じゃ、じゃあ買い物行ってくるね。すぐ戻ってくるから、お留守番していてね」
と声を掛け、反応を待つ。
するとモフ子は、やはりこちらの言葉がわかっているのか、可愛らしい右前足をすっと持ち上げ、ワフッと鳴いた。
……や、やっぱり天才だ!?
その姿を目にし、モフ子がこちらの言葉を理解していると確信すると、僕は急いで近所のペットショップへと向かった。
◇
「ただいまー!」
買い物を終え、ドアを開けると僕はモフ子に向けそう声を掛けた。
すると、僕がドアを開ける前から動いていたのか、モフ子はすぐに土間前へとやってきて、お座りの体勢になる。
しかし、テンションが上がってるのだろう、尻尾は千切れんばかりに動いている。
僕はそんなモフ子の姿を見て、まず何の問題もなくお留守番できた事に対し驚くと共に、僕の帰宅を喜んでくれる事に対し多幸感を感じた。
だからだろうか。僕は荷物を全て床へと置くと、モフ子を抱え上げると、ぎゅっと優しく抱きしめるのであった。
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