父子酒

勝利だギューちゃん

第1話

「息子と酒を酌み交わす」


そう思ったことのない父親はいないだろう。

生まれたばかりの息子を見て、

『いつか、こいつと男同士で酒を酌み交わしたい』

そう思った人も、少なくない。


親父も俺をみて、そう想ったろう。

だが、俺は下戸で酒が飲めない。


逆に親父は酒飲みで、毎日のように飲み歩いていた。

俺からみたら、信じられない。


そんな俺も、今では家庭を持ち、一国一城の主となった。

そして、娘が生まれた。


「パパがお殿様なら、私はお姫様だね」


かわいらしい発想だ。


ある日、親父が尋ねてきた。


「久しぶりだな。息子よ」

「ああ。親父も元気そうだな」

「元気じゃなきゃ、酒は飲めないよ」


確かに・・・


娘は親父になついている。

孫はかわいいんだな・・・


「たまには、付き合え」

親父が酒を差し出す。


「親父、俺は酒は・・・」

「酒じゃねえ、ウーロン茶だ」


妻や娘は気を使ってくれたのか、親父とふたりきりだ。


「悪いな。酒飲めなくて」

「そんなのもの。お前を初めて見た時からわかったよ」

「なんて」

「こいつは、酒に溺れるタイプではないな・・・てな」


そうか・・・


「何でもいいんだ。お前とこうやって、酌み交わせれば・・・」

親父は続ける・・・

「男同士、互いの女房の愚痴に、華を咲かせようや」


父子ではなく、男同士として、酌み交わす。

いいものだな。


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父子酒 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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