第九話「大聖女、森の湖水で沐浴す」
「「ガラクティカ様!」」
剣に手を
「大丈夫ですか?」
「退治できたのですか?」
その姿は魔物の青い体液にまみれ
見るかぎり大きなケガは見当たらない。
おそらく魔力の使いすぎで
「取りあえず、お体を清めてお召し替えかな?」
「そうだな。こんな事ならレオットも連れてくるんだったな」
レオットとは洗浄の生活魔法の使い手だ。
彼がいれば汚れなど容易に落とせるところだが、最小限の人数で挑んでいる冒険なので彼まで連れてこれなかった。
「そうだけど、仕方ない。
「あなたたち、
「はい。私たちはお世話が本分ですから」
その視線の先を追うと鳥? が舞っていた。
「クリスト、あれを収納しておいて」
その視線の先に目をやると、空を舞う大きな鳥がいつの間にか数を増やしている。
クリストは収納魔法がつかえる
魔物を
あいにく調べもせず討伐に
きっとガラクティカ様はご存じなのだろうと
そのため
道中、収集を続けていると「そんな物、集めてどうする」とまで言われて、
にも関わらず
「はあ……はい。構いませんがかなり大きいので収めておくのに、今までの小物のようにいかないかも……」
「早いほうがいい。片付けられるならお願い」
「分かりました」
私が知る限り収納していた最大の物は、ガラクティカ様の馬車だった。
今回の物はそれを上回る。きっと重さもそれなりのはず。
しかもこれまでの魔物があるのでクリストは収容量に不安があるのかも知れない。
クリストはガラクティカ様の言葉に従ってセルポンダを収納する。
もう大魔境のど真ん中と言っていい場所まで侵入して来ている。
こんな所に魔物が押し寄せてきても困るのだと思っていたが──。
「魔物に
──後に続いた
食べるのですか、アレを?
青い体液は
「肌の張りが……お体がしぼんだようです、ね?」
「そうだな。前に触れた時はツヤツヤしていたような……」
「連日、剣の素振りで
「あなたたち、おしゃべりしてないで早く。アレが来るかも知れないのに。それに、寒い」
手ぐしでお
湖の水は冷たいが、まったく手早く済ませるつもりなどなかった。
クリストがどうかは分からないが、私は少しでも長くそうしたかった。
「はい、申し訳ありません。……あの
されるがままのガラクティカ様は我らを
そんなにあの
「もう、寒い。やめ。おしまい。終了」
「ええ? まだ不十分です……。コヒュー、コヒュー……」
「あなたたち、
冷たい水で思いの外、体を冷やしてしまっていたようだ。
呼吸が浅く早く、心臓が
あらぬ感情を呼び覚まされるようだけど、
私たちは、そう
「ですが──」
「早く食事を取って、次に行かないと。一日は短いのよ」
それに
「修業が上手く行って時間ができたら──来た! 私の後ろに」
お体を
空を見ると鳥の数羽が列をなして降下してきた。
お世話に夢中で接近に気付けなかった私の
私たちがいる水際と
空にいる時には感じなかったけれど、間近で見るとヒトの子供くらいの大きさがある。
驚くべきことにその鳥はヒトの頭と身体を
目付きがきついが、そんな顔つきのヒトだと言われると、そうなのかと思える程度にヒトの造形をしている。
「アレも魔物ですか? ガ……ラクティ様」
「そう、ハーピーだ。アレも伝説級の魔物だな」
「アレも?」
「先ほど
「海……。今は
「そうだ。かつては『母なる海』と言われていたが見る影もないらしいな。そこから清浄な水を求めて陸に上がったらしい。まあ、伝説だな」
「伝説……ですか」
樹々の方、奥に降りた二羽はこちらを警戒しながらも鳥らしい覚束ない足取りで森の奥へ──我らが隠れていた辺りに進んでいく。
手前の二羽は、こちらを見張りながら森に進んだ二羽の様子も気にしている。
向こうの二羽を観察すると、私たちが隠れていた辺りにいる。
体に巻きつかれた物を外した触手を
一羽が触手を
見張りの鳥──ハーピーへ、グギャギャアと鳴くと助走を付けて空に舞い上がった。
釣られて他のハーピーも飛び立っていく。
「それほど、恐ろしくはなかったですね? って、いつの間に」
ハーピーから視線を戻すとガラクティカ様は、ほとんど着付けて、あとは
「お前がハーピーに夢中になっている間にな」
「夢中になどなっていません。警戒していたんです」
「まあ、なんでもいい。早く食事をすませて討伐を再開するぞ」
持たせてもらった携帯食を手早く食べて、準備を整えると、午後も魔物を狩り回った。
もちろん、手出しすることなく短剣を構えて身を守るだけで、ほとんどはガラクティカ様がたおしていく。
「これはダメね。効率が悪すぎる。もっとうじゃうじゃいる場所じゃないと。
それに弱すぎる。刃が当たりさえすれば、たおれてしまう。湖のアレみたいな魔物は、そうそういないものね」
「王都の周りは冒険者が討伐して回っていますので、あれほど魔物はいないのではないですか」
「……遠出しないとダメか」
また恐ろしいことを考えていらっしゃる。
簡単にたおれてくれれば良いじゃないですか。
無許可で王都を離れるのもまずいのに遠出などして日
さすがにそれはマズい。
先行きに不安を抱えて日が傾くまで、私たちは森を
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