第12話 それぞれの戦い



 空中に佇む、アリア目掛けて矢を放つ三人の天使たち。

 その弓から放たれる矢は、ただの矢ではなく、火矢というより炎の矢と呼べるものだった。

 そして放たれる数も一射や二射ではなく、次々と放たれる炎の矢はアリアの逃げ道を遮断している。

 だが、アリアは避けない。

 地面より出でる巨大な木の根、それも一本ではなく三本あり、まるでタコの足のようにグネグネとうねり、炎の矢をことごとく防いでいる。

「これは……さすがと言わざるを得ませんね……」

 さすがの天使も、微動だにせず、言葉すら発せずに、自身が打ち出す炎の矢を防がれては、称賛せずにはいられない。

 だが、当然と言えば当然である、魔王の子供なのだからと納得もしていた。

 しかし天使たちはそんなことで弱音を吐いてもいられない。

 そう思い、絶対に、何が何でも殺さねばならない、自分たちの標的であるアリアに対して気を引き締めなおす。

 そして弓を捨てた。

天弓てんきゅうの使用を許可します! 即座に敵を燃やし尽くしなさい!」

 天使が叫び、他の二人も現在握っている弓を捨てた。

 そして片手を前に突き出し、詠唱する。

「コール――スワロー」

「コール――アルバトロス」

「コール――パラキート」

 天弓てんきゅうが三人の天使の前に具体化する。

 弓を専門として使っていても、自身の専用武器を持つ天使はかなり稀である。

 故に、アリアの相対している相手は天使の中でも上位の実力者だと言っていいだろう。

 そして、まずは一射。

 先程までとは比べ物にならない火力で燃え上がる炎の矢。

 天弓に変えたことによる、能力値の上昇率は、アリアの生やした木の根を一射で燃やし尽くしたことで理解できた。

 ふぅ――アリアは息を吐いた。

 矢を防ぐことに集中力を全振りしていたため、動けないでいたが、燃やし尽くされたおかげで動けるようになった。

 初めから魔法を行使せず、動いてもよかったのだが、アリアのとっても実力の高い天使との戦闘は、先のことを考えると貴重と言える。

 つまり、今までのはただの、様子見だった。

 相手はどうだろうか――アリアは考える。

 天弓の使用許可、普段使いはしていないその武器を使用した。

 本気に切り替えたと判断してよさそうだ――そう結論付け、アリアも動く。

 腰に下がる剣を握り一言。


変形へんけい――二銃にづつノ剣のつるぎ


 アリアに握られる剣が形状を変えていく。

 だが、見た目が大きく変わったわけではないように思うその剣には、先程まではなかった銃口が二口付いている。

 ソードピストルとも称されるその武器の最大の利点は、なんと言っても近・中どちらに対しても対応できるところである。

 魔力が芽生え、発達したこの世界においても、銃は存在していた。

 ただ、存在していた程度の認識であり、存在を知らない者のが相当数。

 そして、その天使たちは人間が使用していた武器、銃の存在を知らない。

 アリアは構えた。

 剣先で狙いを定めるかのように握られたアリアの構えは、今すぐに刺突できるような体勢でもない。

 距離も十分に開いている。

 なのに天使たちは身構えずにはいられない――得体のしれない何かを相手にしているようで。

 ぱんっ――銃声が響く。 

 天使の一人が悶えた。

 銃口から飛び出した二つの弾丸、それが天使の一人に命中した。

 開けられた穴から噴き出す血を、片腕で押さえながら悶えていた天使が告げる。

「……ふぅ。この程度なら…すぐに回復する」

 天使の治癒能力は人間の並ではない、無論アリアもそうなのだが、天使の言う通り、この程度の傷はかすり傷にも等しい。

 油断のせいで面食らったというだけである。

 アリアはその発言を気に留めず、空いた左手をその天使に向けて唱える。


開花かいか――渦紅羽衣うずべにはごろも


 天使が表情を歪めた。

 穴から吹き出すのは自身の血――ではなく花。

 文字通り渦を巻きながら体外へ飛び出したその花は、魔力で成長してはいない。

 ――血液。

 天使の中に流れる紅い血を吸いあげ成長する、その花の花弁は、紅色に染めあげられている。

 天使の体外へと渦を巻きひらひらと舞っている紅の花――故に、渦紅羽衣うずべにはごろも

 血を吸いつくすまで成長をやめないその花に、憑りつかれてしまった天使から、アリアは視線を切って、残りの二人に目を向ける。

 その視線を浴びて、僅かにビクついた体を、抑えながら天使が告げる。

「確かに驚いたのは認めるが、そこから種が飛び出すことは分かった。当たらなければどうということはない――」

 天使のその発言は、食らってしまえば終わりということでもある。

 アリアは答えた。

「お前たちは逃げられない」

 逃げるつもりなど毛頭ない天使であったが、問いかけた。

「なにからだ?」

「俺だよ」

 アリアは動く――空を蹴るようにして飛翔し、剣本来の役割、天使の首を狙って横薙ぎに斬り付ける。 

 天使は身を反らしながらギリギリでかわし、そして反らした体勢のまま天弓を構えた。

 弓は近距離には向かない、だが打ち出されるのは炎の矢。

 その形すら自由自在――反った体勢から引いた弦を放し、飛び出すのは炎の塊。

 打ち出した本人すら呑み込みそうな巨大な炎がアリアを捉える。

 当たった――天使は思った。

 アリアはその天使を勢いよく蹴り、後ろへと回転、飛翔しながら銃を構えた。

 天使はアリアに体勢を反らされ、蹴られた事により視界からアリアの姿が消えている。

 ぱんっ――銃声が響く。

 アリアは弾丸が着弾したことの確認が終える前に、まずは向かってくる炎を避ける。

 自身の体に走る、激痛に耐えながら体内に手を突っ込み種を探す天使だったが、聞こえてきたのは自身の死へのカウントダウン。


開花かいか――渦紅羽衣うずべにはごろも


 天使の体外へと咲き誇るのを確認するが早いか、アリアは最後の一人へ向きなおす。

 俺だよとアリアが告げてから、十秒にも満たない時間の中で、一人の天使を始末し終えたアリアに戦慄し、最後の一人は動けない。

「行くぞ」

 遠くで言ったはずなのに、アリアの言葉が天使の耳に届いた時に勝負はすでに終わっていた。

 自身の言葉を追い越して、斬り付け別れた天使の首に。

「じゃあな」

 アリアはそう告げ剣を収めた。


 アリアが勝者となったことで国を覆う炎が消える――。



 数刻前――。

「おっさん、本気じゃねえだろ」

 少年天使はセキエンに向かって告げた。

「無論、アリア殿なら先を見据えて見極めを行うでござるからな」

「先を見据えて? 生き残れる気でいるのか?」

「それも無論でござる。拙者に本気を出してほしいなら、お主が先に出すことを奨める」

 はあ――分かったよと言わんばかりに深い溜息を吐いて少年天使は剣を捨てた。

「コール――ホーネット」

 剣、ではなく細剣さいけんが天使の前に具体化する。

「ほう、細剣を相手にするのは久しぶりでござるぞ」

天剣てんけんっていうんだが……まあいいか。おい、おっさん。こっから段違いだから気をつけな――行くぞ」

 そう告げ、少年天使は地を蹴りセキエン目掛けて刺突していく。

 だが。


「――地返ちがえし」


 セキエンは刀を地面に突き立て唱えた。

 なっ――少年天使は驚きの声を上げる。

 セキエンの前方の地面が捲り上がり、少年天使の細剣は捲られた地面に突き刺さる。

「おい! ずりいぞ! 魔法を使うなんて聞いてねえ!」

 地団太を踏みながら少年天使は声を荒げた。

 セキエンは首を傾げる。

「本気を出してほしいのではなかったのか?」

 そうだけど――ぶつくさと文句を言いながら拗ねる少年天使は、どうやら中身まで、少年だったようだ。

 セキエンはそんなことを思いながら告げる。

「会話は十分でござる。ダラダラとしていてはアリア殿に怒られるでござるからな」

 未だに不満の感情を出し続ける少年天使を置き去りに、「参る」と告げるセキエン。

 セキエンから攻撃を仕掛けるのは、この戦いでは初めてだった。

 だから、少年天使は知らないのだ――セキエンの本気を。

 参ると聞こえた、その先にはすでに誰もいなくて、自分の横で刀を振りかざす甲冑の男が一人。

 早すぎる――天使でも悪魔でもない、ただの妖怪一匹が出せる速度じゃない。

 少年天使は思ったがそれを思ったのは命辛々いのちからがら、避けられた後だった。

 そして、さっきまでいた場所にも、その男はすでにいない。

 ヤバい――そう判断して少年天使は飛翔する、が。

 地上より三メートル地点にて、自分よりも上にいる甲冑を着たその男に少年天使は蹴り落とされた。

「――がはっ」

 地面に叩きつけられ横になる少年天使の首元に、冷たい感触が走る。

 セキエンは、今にも泣き出しそうな顔をした少年天使に告げた。

「死を恐れる者が、他の命を踏みにじるな」

 その後、同情の余地なく、首を落として幕とした。

 そして、辺りを包む炎が晴れる。

「お、誰かが勝ったでござるな。会話を続けていなくて良かったでござる」

 そう独り言を呟いてセキエンは刀を収めた。



 ライセはひたすら逃げていた。

「おい! 五秒じゃなかったのか?」

「てんめえ! だったら逃げるな! 止まりやがれ!」

 その少年天使は街を覆う炎が邪魔で速度を出せずにいた。

 故にライセは、逃げ続けられたわけだが。

「お。アリアか? セキエンか?」

 炎が晴れライセはその足を止めた。

 そして、少年天使は笑いながら告げる。

「なんだ? 追いかけっこは終わりか? 良いぞ、逃げても」

「今逃げても一瞬で追いつかれるし、炎が消えてくれたおかげで、やっと魔法が使える」

 ライセは自信に満ち溢れた表情で言った。

 だが、その内心は。

(うおおおおお! 怖ええええええ! ぶっつけ本番すぎる! しかも相手はいきなり天使とか、無理だろ!)

 怯えまくっていた。

 そのハッタリの効果は最悪の形で表れる。

 自信に漲るライセの様子に、面白くないと感じる少年天使。

 人間ごときが天使である俺に勝てると思っていやがる、そんな気持ちだったのだろう。

 故に。

「コール――モスキート」

 天剣てんけんを具体化させてしまった。

 こちらの少年天使の天剣てんけんも細剣のような形状で具体化する。

「なんだ? その剣は」

「俺たちの力を引き上げてくれる専用武器さ」

「……ふ、ふーん、そうなのか。だけど無駄だぞ? 勝負はついた」

 ライセの駆け引きは、すでに始まっていた。

 少年天使が激昂げきこうする。

「ったくよー……人間ごときが! ……調子に乗るな!」

 家の外壁を蹴り、ライセの心臓目掛けて刺突――。

 したはずだったが。

 当たった――少年天使の握る細剣の切っ先は確かに当たったはずなのに、感触もなければ、微動だにしていないライセ。


 ライセは目撃していた、自身の魔法の効力を。

 少年天使は、何もない場所へ突撃していたのだ。

 ライセは歓喜に打ち震え、少年天使は動揺を抑えられていない。

「おい! お前! 何をした!」

 少年天使が声を荒げる。

「そんなの言うわけないだろ?」

 目の前にいるはずのライセから声は聞こえず、後ろから聞こえた気がして少年天使は回転しながら細剣を振るった。

 だが、そこにもライセはいるが斬り付けた感触を得られない。

「まあ、そうだな。ディストリビドール――ライト。ってところだな」

 分配し差し込む光によって作られた自身の虚像のような幻影。

 その場に分身を作り出すのではなく、相手、敵の瞳に差し込む光量を調節することによりそこに自分がいると思わせるハッタリ技。

 一見、せこいようにも思えるが、そのイメージしなければならない情報量は膨大で、ひとえにライセの才能と努力の成果と言えよう。

 ぎりっ――悔しさだろか、怒りだろうか。

 少年天使のその表情はどちらも多分に含まれていそうで。

 冷静だったならば、飛び立てば済む話と気付けるはずなのに、我を忘れ、それをしなかった事が敗因だろう。

 ライセが口を開く。


「そしてこれが、神々しい剣ディバインソードだ――」


 少年天使を二つに分かつ、ただ光るその剣は、僅かに切れ味を増しており本物の神聖剣ディバインソードへと近づいた。

「ただ光るだけでも、勝つとちょっとはカッコがつくな」

 そうライセは呟きながら、自身の握る剣を見つめる。

 僅かだが増強された切れ味に、全く気付くことなくライセは剣を収めた。



 炎が消えたはずのその場所は、今も炎に包まれている。

 もちろん、それは天使のものではなく。


「飛び立て獣火じゅうか――十火燕じっかえん!」


 ミヤの放ったお札が炎に包まれ、その効力を発揮する。

 十個に別れて飛び立つ火の鳥が、自動で天使を追尾する。

「ウォーターフロー――ドーム」

 天使が地に手を当てそう唱えると、半球状の水流が天使を覆う。

 ちっ――自身の唱えた魔法によって、自身を追尾する火の鳥は消せたが、天使は舌打ちをした。

 なぜなら、先程からずっと防戦一方だからである。

 はっきり言おう。

 水と火の相性は最悪である、それはもちろん火が不利だと言う意味だ。

 火の七大精霊サラマンダーの中には水を恐れ近づかない者までいるという。

 ミヤは相性最悪の天使を相手どっているにも関わらず、善戦している。

 そのミヤをチラリと見て、フィンドはアリアたちとのある会話を思い出す――――。


 五日前――――。

「ミヤって小さいのにすごいよな」

 アリアは訓練をするミヤを見て呟いた。

「確かに、十一歳の少女とは思えない強さです……」

 ミヤと比べ、不甲斐ない自分に項垂れながら返すウニ。

「拙者が十一の時は、首蹴くびけりをして遊び回っておったでござるな」

「首蹴りってなんだ…怖いな……」

 セキエンの発言を受け、顔を引き吊らせながら話すアリア。

「首を地面に置いて、蹴ったり踏んだりする遊びでござる。やってみるでござるか?」

「やらねえよ!」

 セキエンの提案をばしたアリアは、話を戻す。

「なあ、フィンド。ミヤの修行ってお前がつけたんだろ?」

「ああ、六歳からは。だがな」

「ん? 六歳前より修行してたのか?」

「ミヤの母親がな。二歳のころより修行を開始した」

「二歳!?」

 アリアが素直に驚きの声を漏らす。

「はっはっ。アリア殿の二歳のころはまだ母君の乳を吸っておったでござるからな」

 ばこっ――アリアがセキエンの顔面を殴り飛ばす。

「ぶっ飛ばすぞ」

 すでにぶっ飛ばした後であった。

 おむすびのようにコロコロと転がるセキエンの顔面を横目に、微笑を浮かべながら、フィンドは話を続けた。

「ミヤは産まれたすぐのころより話をしておったそうだ」

「……なにと?」

「霊……つまりお化けのような者と。だな」

「……なるほど。それで?」

「故に、神童しんどう。と呼ばれておった」

 神童、この世界では神にも近しい能力を授かったわらべのことを神童と呼んでいた。

 そして、ミヤの場合、霊と話せるだけではなく、神力においても強い才能を授かって産まれてきていた。

「だから、ミヤの母さんは二歳から修行を付けた……と?」

「そうだ」

 アリアは思い出す。

 母がまだ生きていた二歳のころの自分の様子を――。

(これじゃあマザコンみたいだな。まあ…別にいいか)

 亡くなった人のことをいつまでも想い続けることは、良いことかはさておいて、悪いことではない。

 そう考え、思い出に浸りアリアは静かに笑った。

 フィンドは考える。

 アリアたちになら話しても問題はないか――と。

「ミヤが神童と……」

「アリアどのー! 訓練は一旦休憩にして、首蹴りでもして遊びませんかー!」

 セキエンの提案という名の邪魔が入り、遮られた話の続きを、急ぐ話でもないし別にいいか、とフィンドは胸にしまった。


 そして現在へ戻る――。

「あら? 考え事かしら? ずいぶんと余裕ね、このお馬さんは!」

 そう言ってフィンドと相対していた天使は、拳でフィンドに殴り掛かる。

 それを後ろへと飛び下がりながらフィンドは避けた。

 ドゴンッ――落石でもしたかのような音が響き、大きく大地が削られる。

「馬ではない、ユニコーンだ」

「あら? 同じようなものじゃない?」

「そして、ユニコーンでもなくフィンドだ」

「あら、名前があるのね、それは失礼したわ」

 フィンドはそこまで言うといななく。


「向かう暴風ぼうふう――千弾波弾せんだんはだん


 風のつぶて。

 荒波の如く、フィンドの背より吹き荒れるその暴風は、大砲を思わせる威力で、天使ごと一帯を吹き飛ばす。

 広範囲に及ぶその攻撃を、全力で飛翔し避ける天使。

 天使はそのまま上空にて、片腕を天に掲げる。

「ジ・ハード――フィスト!」

 天使が詠唱を叫ぶ。

 それは、先程までと同様の地属性魔法による、拳の硬化――だが、上空にて天使が掲げる拳のサイズは明らかに――。

 上空で掲げた拳のさらに上空、そこに集まる瓦礫たち。

 それはまるで月のようで、フィンドは只々見守っていた。

 天使が、その岩の拳の完成を告げる。

 そして――。

 高速で落下させる、その拳はもはや――隕石。

 一瞬にして隕石の影に覆われ、フィンドの眼前には岩しか映らない。

 ただ、そんな危機的状況なのに。

 その時のフィンドの胸のうちに抱く想いは何だったのか。

 お月見でもするかのように、穏やかな表情を浮かべるフィンドが一言。

「使うのは久しぶりだが…まあ大丈夫か……」

 久しぶりの使用、それは魔力に不随することではない。

 フィンドにあり、馬には無い、ユニコーンの持つ特有の――強靭な角。

 隕石にも思えるその巨大な岩に向けて、駆け出すフィンドは――――そのまま駆け抜けていた。

 先程までは岩に視界を覆われていたはずなのに、フィンドの視界は開けている。

 そして、目前に迫る天使が驚きの表情を浮かべている。

 それもそのはず――上下左右、岩を避けて現れるのならばともかくとして、そのユニコーン、フィンドは自身の角で岩を割り、前方から現れた。

 なにもなかったと言わんばかりに。

 天使の開いた口は塞がらず、抱いた疑問の言葉も出ない。

 そしてフィンドはそれでも止まらず、未だに自身に向かってきている。

「そ、そんな……」

 絞り出すべきは言葉ではなく、力であっただろうに。

 戦闘において、動揺するのは唯の自殺と変わらない。

 止まらぬフィンドに心臓一突き貫かれ、天使は絶命を果たした。

「綺麗にせねば、ミヤに怖がられてしまうな」

 実際に体験したことがあるかのような物言いで、自身の角を通過して顔に流れる赤き水を、振り払いながらフィンドは呟く。

 辺りの壊滅した街の様子からは考えられないくらい、こうしてフィンドはあっけなく勝利を収めた。

 


 ――――――――――――――――――



『首蹴り』という常軌を逸した遊びが出てきますが、

 絶対に真似しないでください。


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