第22話 女性との3人パーティは楽しいです

 「【デザートウルフ】が出た!」

 「手ごわいぞ!」


 バイブリーの街を出てから5日目。


 先頭を歩いていたパーティ、ドワーフたちで構成される【鉱山の男たち】が敵襲を知らせてきた。

 推奨レベル25の大型モンスターで、冒険者の防具ごと噛み砕く牙と武器をはねかえす頑丈な皮膚をもつ強敵。


 「【ファイア】!くそっ、全然効かねえ!」

 「動きもすばしっこくて、攻撃が当たらねえぞ…ぎゃあっ!」


 せいぜいレベル10程度のモンスターしか想定していない大型クエスト参加者では太刀打ちできない。

 このままでは数十人の冒険者に大きな被害が出るだろう。


 だから、前に出た。


 「【ジャイアント・ストライク】!」


 巨大な敵ほど効果が高い戦技を発動し、【デザートウルフ】の横っ腹を打ち砕く。


 「ギャオオオオオオオン!」


 狼は後方へと吹っ飛んでいくが、同時に鋭い角の生えた尻尾で反撃してくる。

 両腕でガードしたが、同時にするどい痛みを感じる。


 多分毒か何かだ。

 大したことはないけど長引くと厄介である。 


 「ルデルさん!力をお貸しします!【ポイズン・ヒール】!」


 その時、ソフィアが【聖なる書】で回復魔法を唱える。

 腕の痛みが引いていき、毒状態が解除されたのを感じる。


 状態も万全になったし、さっさとこの戦闘を終わらせよう。


 「【重力拳】!」


 この前覚えた新たな戦技。


 攻撃力はないが、敵を見えない力で拘束する【拳の勇者】にぴったりのサポート技。


 【デザートウルフ】の巨体が地面に埋まり、もがきながら沈んでいく。


 「ライラ!」 

 「オッケー。【テンペスト】!」


 ライラもこの前覚えた雷を伴う暴風雨を発生させる風魔法で援護。


 「ギャオオオオオン…」


 地属性で風属性攻撃に弱い【デザートウルフ】にとっては致命の一撃。

 ドロップアイテム【狐狼の牙】を落として戦闘は終了。


 「す、すげえ…」

 「あいつら一組でいいんじゃね?」


 ま、こんなところか。

 ライリーは後方でのんびりと歩いてるし、事態に気付きもしなかっただろう。


 「ねえルデル!アタシレベル18になったんだって!」

 「おめでとう。もうちょっとすれば【蹴撃士】に転職ー」

 「ルデルさま!」

 「わっ!」


 その時、駆け寄ってきたソフィアに抱き寄せられる。

 ライラと比べて背は小さいが、胸の大きさは負けていない。


 修道女の服の上からでも柔らかさが分かるってすごくない?


 「お怪我はありませんか?ソフィアのスキルは役に立ちましたか?」

 「ああ、とても役に立ったよ。だからその、もっと距離をー」

 「まあ!嬉しい。やっぱり、あなた様はソフィアの救世主です」

 「そ、そう?あはは、困るなぁ」

 

 ぎゅっ。


 ま、この感触を少しぐらい楽しんでも…


 「じとー…」

 「はっ!」

 「ふーん…アタシという彼女がいながら、そんなことしちゃうんだ…」

 「ご、誤解だよ!これはパーティーメンバーとのスキンシップー」

 「うわああああん!ルデルの浮気者ぉぉぉぉ!アタシとあんなことやこんなこともしたのにぃぃぃぃ!」

 「あ、ちょっと待って!待ってくれえええええ!」


 事態を収集するのに数時間を要した。


 「実績解除条件『女性メンバーと同じパーティーで200時間以上冒険する』を達成。実績【美女と共に歩む者】が解放されます。パーティーメンバーの女性も、歩くたびに自らの経験値が加算されます」


 


 というわけで、新たな実績を伝えそびれるのであった。



 ****



 「というわけで、今後はライラもソフィアも自動で経験値が増えていくことになる」


 攻略目標のダンジョン【帰らずの洞窟】の手前にある街レディング。

 その宿屋で僕たちは現状を確認した。



 =====


 

 スキルシート(345日目)


 名前:ルデル・ハート

 種族:人間

 レベル:25

 クラス:【目覚めの勇者】 アウェイキング・ブレイバー

 ランク:B

 所属パーティ:【同じ道を歩む者たち】

 称号:【勇気ある者】【重荷を持つ者】【力を示す者】【戦いを運命付けられし者】【正義を示す者】【美女と共に歩む者】

 

レベルアップに必要な経験値: 36589/250000


 HP:3500/3500

 MP:265/265

 攻撃力:450

 防御力:300+5

 素早さ:350


 スキル:【神脚】~一歩歩くごとに経験値を獲得。歩いたり走ったりしても疲れにくい。

 戦技:【ソード・ストライク】【ストリーク・ストライク】【ジャイアント・ストライク】【ブーメラン・ストライク】【パニッシュメント・スラッシュ】【虚ろなる拳】【重力拳】

 アクティブ戦技:【エネミー・サーチ】【ラース】

 武器:【皮の鎧】


 ※【拳の勇者】は攻撃用武器を装備不可



 スキルシート(324日目)


 名前:ライラ・スカーレット

 種族:ウマ耳族

 レベル:18

 クラス:【魔術師】エンチャンター

 ランク:C

 所属パーティ:【同じ道を歩む者たち】

 称号:なし

 レベルアップに必要な経験値:12547/150000


 HP:1200/1200

 MP:550/550

 攻撃力:250+30

 防御力:200+10

 素早さ:200


 スキル:【二重の才】〜レベルアップに伴い獲得できるスキルが2つまで増える。【風魔法】および【蹴撃】。

 

 戦技:【ウィンド】【トーネード】【エアライド】【テンペスト】

 武器:【妖精の杖】【風のローブ】【蹄鉄のブーツ】


 ※【蹴撃】スキルにより【蹄鉄のブーツ】を履いても素早さが低下しない


 スキルシート(356日目)


 名前:ソフィア・グリンフィールド

 種族:人間

 レベル:17

 クラス:【神官】プリースト

 ランク:C

 所属パーティ:【同じ道を歩む者たち】

 称号:なし

 レベルアップに必要な経験値:23548/145000


 HP:1000/1000

 MP:550/550

 攻撃力:180+5

 防御力:150+30

 素早さ:150


 スキル:【聖なる祈り】〜回復魔法に対する適性を獲得する。

 

 戦技:【ヒール】【ポイズンヒール】【MPヒール】

 武器:【聖なる書】【神官のローブ】


 

 =====


 「確かに、今日1日だけでアタシの経験値だいぶ溜まってるわね」

 「さすがルデルさま!」

 「ただ…」

 「ただ?」

 「【重荷を持つ者】が発動しないのが気になる!」

 「言うと思った。また【蹄鉄のブーツ】履く?」

 「それはもういい。君に返したものだから」

 「ルデルさまは優しいんですね。このソフィア、感服しました」

 「うーん…なんか新しい防具でも買ったら?重ければ何でもいいんでしょ?」

 「それだ!」


 さっそく、この街の防具屋へ向かうことにする。


 強くなるためなら努力は惜しまない。




 それが、エレナさんとの約束だからだ。



 ****



 「おお、なかなかかっこいいわね」

 「ルデルさま、重くはないのですか?」


 翌朝。


 僕は買ったばかりの【銀の鎧】を着こみ、レディングの街を出る。

 結構重いが、【蹄鉄のブーツ】で慣れてるから大丈夫だ。




 目の前には、目的地である【帰らずの洞窟】が姿を見せている。


 「さあ!いよいよダンジョン攻略だ!気合入れていくぞ!」

 「「おー!」」


 


 色々な意味で予想外のことがおこることを、3人はまだ知らない。

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