Sideざまぁ イーサンの破滅
「【ホーミング・ショット】!」
パーティーメンバーの半分20人にルデルの闇討ちをさせている間、俺は残りの20人を率いて、バイブリーの街の西側にある平野に出かけた。
醜悪なイモムシ型モンスター【スクワーム】85匹の討伐クエストをこなすためだ。
【帰らずの洞窟】攻略参加に必要なパーティーリーダーのレベルが15になっちまったから仕方ない。
メンバーに【スクワーム】を一箇所に集めさせ、【三日月の弓】で一匹ずつ仕留めていく。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!こんな楽な仕事で金がもらえるんだから冒険者はちょろいよな〜〜〜!」
「流石です!イーサンさま!」
横には何でもいうことを聞く都合の良い使い走りのエドワードがいる。
こいつは危険なことも多いレベルアップを早々に諦め、俺に媚を売ることで小銭を稼ぐだけの小物だ。
「しかし、【スクワーム】によって汚染された土の浄化もクエスト内容に入ってますが、どうしましょう」
「そんな汚い仕事は【新入り】にさせておけ。俺は帰る」
「はい!さすが高貴なるイーサンさま!」
このパーティーはチャーチルのように使える奴や媚を売ってくる奴を【幹部】、それ以外は【新入り】としている。
【新入り】と判断したやつ以外には何もやりはしねえ。
散々こき使っていらなくなったら捨てるだけだ。
「【チャージ・ショット】!」
最後の一匹を仕留め、俺にとってのクエストは終了。
「経験値上限を満たしました。レベルが11にアップします」
「ちっ!戦技の追加はなしかよ」
まあいい。
『他人の経験値を金で買い叩く』のがレベルアップの最適解だと気づいた俺に死角はない。
ヴェルト大陸のほとんどの人間は月収10ゴールド以下の貧民として暮らしている。
だから、危険な仕事を押し付けても、経験値を根こそぎ独占しても、1回あたり5ゴールドぐらいのはした金をやれば大抵のやつは黙った。
まあ、そもそも大陸のあちこちで活躍しているギボンズ氏に表立って刃向かえる奴はいねえけどな。
貧民どもに支払った支出は、独占したクエストの成功報酬及びドロップアイテムの売却額を足すと余裕で黒字。
(今回の収益は500ゴールドぐらいにはなるだろうな…くくくく、経験値も報酬も全て俺のものだ)
他人の努力で楽して成功する。
これが俺の美学だ。
「俺はエドワードとバイブリーに戻る。【新入り】共は、ここの【スクワーム】に汚染された土を浄化するまで帰ってくるな!行くぞエドワード!」
「ははっ!イーサンさまのご命令通りに」
いつものように引き上げようとすると、遠くでぶつぶつと呟く声が聞こえる。
「また【新入り】だけこき使われるのか…」
「最初は5ゴールドでもいいと思ってたけど、危険な業務も沢山あるのに釣り合ってないわよ!」
「重症を負ったり、死んだりしてもなにもないなんて」
くるりと振り返り、【三日月の弓」を構える。
「【新入り】ども、何か言ったか?」
誰も答えない。
だから、罰をくれてやる。
「お前らにやる報酬はしばらく1ゴールドにする。連帯責任だ」
唖然とする【新入り】の顔を見ながら、俺は再びバイブリーへと向かう。
「あひゃひゃひゃひゃ!【新入り】をいびるのは楽しさしかねえなぁ!」
「ははは!イーサンさまの怒りにみんなひれ伏しておりましたね」
そろそろチャーチルと嬉しい知らせを持って戻ってきてる頃だろう。
【試しの石】をどうやって破壊したかは知らんが、所詮はレベル10。
チャーチルの含む【幹部】クラスが8人もいる集団には叶わないはすだ。
「くくくくく…あひゃひゃひゃひひゃ!あいつの死顔を拝めるのが楽しみだぜ〜〜〜!」
俺の顔に消えない傷をつけたゲス野郎がついに倒される。
ワクワクが止まらないぜ。
****
「おい!クエストをこなして戻ったぞ!さっさと報酬を寄越せ!」
エドワードとバイブリーのギルド支部に到着した時には、すでに夜のとばりが降り始めていた。
いつものように受付嬢を呼び出そうとしたが、誰もいやがらねぇ。
真っ暗だ。
「ちっ!エドワード、さっさと様子を見に行け」
「は、はいいいい!ただいま!」
「ちっ…チャーチルのやつもいねえし、どこにいやがる」
備え付けの椅子に座って休憩しようとした時ー、
支部の明かりが一斉に灯された。
「…っ!何だよいきなり…」
周囲に広がる光景に、息を呑む。
「ひっ!ちゃ、チャーチルっ!?お前なんでこんなところに!」
「た、助けてくれイーサン…化け物だ」
「よ、寄るんじゃねえ!」
ギルド支部の床に、ボコボコにされたチャーチル含むルデルを闇討ちに行った奴らが全員横たわっていた。
ど、どういうことだ!?
こいつらがルデルに負けるはずが…
「い、イイイイーサンさまっ!あれを!」
エドワードが怯えながら、ギルド支部の一角を指さす。
「久しぶりだな、イーサン」
そこにはー、
1年ぶりに見るあいつの姿がいた。
【皮の鎧】があちこち破れてるが、怪我1つしていねえ。
何でだ!
あの人数なら間違いなく勝てないはずなのに!
「る、ルデル・ハート!な、ななななんでお前がいるんだ!お前は死んだはず…」
「あの程度で僕が死ぬと思ったのか。笑わせる。さあ!みんなも来てくれ!」
ルデルの掛け声と共に、奥の衝立から新たな人物が姿を現した。
「あれだけの人数でルデルを倒そうなんて…本当に馬鹿なのね、あなた」
【ウマ耳娘】の
「ここまでのルール破り、流石に看過できないにゃ。ギルド本部の裁きを受ける時が来たにゃ」
ネコ耳を生やしたギルド受付嬢にー、
「ついにこいつも年貢の納め時か」
「他のパーティーのクエストも散々妨害したしな。自業自得だろ」
「こいつがどうなるか、ワクワクするね!」
バイブリーの街に集っている冒険者たちの面々もー、
続々と現れる。
「な、何だお前ら!俺に何の用があるんだよおおおっ!」
俺は【三日月の弓】で精一杯威嚇したが腰が抜けちまった。
「俺に何かあれば、ギボンズ氏が黙っちゃ…うひいいいいっ!」
床に尻餅をついて、無様な姿を晒しちまう。
名家に生まれたこの俺が…!
「安心しろ。別に全員で暴行しようってわけじゃない」
「じゃあ、じゃあ何するってんだよおおお!!!」
「簡単だ」
そんな俺を見て、ルデルは【ショートソード】を引き抜き、冷徹な視線を送った。
俺をボコボコにした時に浮かべた、あの視線を。
「イーサン・ギボンズ!僕やライラの安全を脅かした代償として、お前に決闘を申し込む!
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