ルデル、パーティを結成する

第5話 ひたすらレベルアップを目指しました

 「ギギギギ」

 「グギギ…」

 「ゲゲ!」


 バースの街を出発してから約7日。


 いつものように早朝から出発して街道を歩いていると、知性を持つモンスターの一種、討伐推奨LV4である【ゴブリン】の一群に遭遇した。


 数は3匹。

 横一列に並び、不気味なうなり声を上げながら待ち構えている。


 それぞれがお手製の剣、弓、盾を携えており、駆け出し冒険者1人には危険な相手だ。

 



 でも、今なら大した敵じゃない。


速度を上げて一気に距離を詰めていき、鞘から【ショートソード】を引き抜く。


 「ギ、ギギ!?」


 まさか正面から突撃すると思っていなかったのか、中央のゴブリンが慌てながら弓を引き絞り、矢を放った。

 みるみる僕の額に向けて迫ってくるがー


 =====



 スキルシート(334日目)


 名前:ルデル・ハート

 種族:人間

 レベル:7

 クラス:【荷物持ち】ポーター

 ランク:F

 所属パーティ:なし

 称号:【勇気ある者】

 レベルアップに必要な経験値:49876/50000


 HP:500/500

 MP:50/50

 攻撃力:65+5

 防御力:68+5

 素早さ:68


 スキル:【神脚】~一歩歩くごとに経験値を獲得。歩いたり走ったりしても疲れにくい。

 戦技:【ソード・ストライク】

 武器:【ショートソード】【皮の鎧】



 =====

 

 7僕にとっては、遅すぎる攻撃であった。


 「遅い!!!」

 「ギイッ…」


 【ショートソード】で矢をはたき落とし、そのまま中央のゴブリンにタックルを決める。

 肘が頭に命中し、悲鳴を上げながら吹っ飛んでいった。


 「グギーッ!」


 もちろん他のゴブリンにそのまま見過ごされるはずもなく、列の右にいた個体が、剣を抜いて斬りかかってくるのが見えた。


 油断なく構えていた【ショートソード】で対応。


 互いの剣が一瞬火花を散らすが、腕力で押し切り、そのまま一刀両断。

 真っ二つになったゴブリンが音もなく崩れ落ちるのを確認して、最後の1匹に取り掛かる。


 「ゲ…」


 背丈と同じぐらいの盾を構えていたゴブリンは一瞬怯んだが、覚悟を決めたのか、言葉にもならない叫び声を上げて殴りかかってきた。 


 創造主である魔王パズズから与えられた指令『人間を倒せ』を忠実に実行するため、モンスターは決して逃亡しない。

 を除き、ただ与えられた本能に従ってがむしゃらに攻撃を繰り返す。


 「【ソード・ストライク】!」


 だから、戦技を当てることに苦労はしない。


 「ギャアアアアアッ!」


 石で作ったらしき盾ごとゴブリンの肉体を薙ぎ払い、新たな【はぐれモンスター】との戦いは終了した。




 「経験値が上限に達しました。ランクEに昇格し、レベル8にアップします。また、新たな戦技【ストリーク・ストライク】を取得」

 「よし!」


 普通なら勝利の喜びを味わうところだが、あいにくそんな暇はない。

 ドロップアイテムである【ゴブリンの首飾り】を3つ拾い、僕は再び走り出す。


 次の街バイブリーまでは残り2~3日。


 それまでにレベル10に達し、【荷物持ち】ポーターから別のクラスに転職するのが今の目標だ。

 そのため、日が昇っている間は疲れにくい【神脚】を利用してひたすら走り、経験値を稼いでいく。


 バイブリーに近づくたび増えていく【はぐれモンスター】との戦いも行いつつ、経験も積んでいこう。


 誰よりも早く、そして誰よりも強く。


 先に進んでるみんなに、絶対追いついてみせる!


 「レベル10まで最短で到達するぞおおおお!」


 誰もいない街道の上で僕は叫び、道を走り続けた。



 ****



 「かーっ!走り終えた後のポーションは最高だなぁ!さて、今日のステータスはと…」


 深夜になり、ようやく休憩を挟むことにする。

 軽い食事とポーションによる夕食を終えた後、わくわくしながら【スキルシート】を開いた。


 =====



 スキルシート(335日目)


 名前:ルデル・ハート

 種族:人間

 レベル:8

 クラス:【荷物持ち】ポーター

 ランク:E

 所属パーティ:なし

 称号:【勇気ある者】

 レベルアップに必要な経験値:51294/60000


 HP:600/600

 MP:60/60

 攻撃力:83+5

 防御力:83+5

 素早さ:82


 スキル:【神脚】~一歩歩くごとに経験値を獲得。歩いたり走ったりしても疲れにくい。

 戦技:【ソード・ストライク】【ストリーク・ストライク】

 武器:【ショートソード】【皮の鎧】



 =====


 定期的に現れる【はぐれモンスター】との戦闘もあるため、流石に1日歩くだけでレベルアップするには厳しい経験値となってきたけど、2~3日ならまだまだ可能だ。

 

 ギルドから仕事を受注するときの基準となるランクも昇格したし、バイブリーに着くまでにはレベル10に到達できるだろう。


  ただし、初めは5000ずつ増えていった経験値の上限が、レベル5以降から10000ずつとなっているのに注意が必要だ。

 レベル5では上限30000であった経験値が、すでに60000までになっている。

 その分ステータスの上昇値も上がっているが、楽観視はできない。

 


 「まあ今はひたすら歩くとして…あとは新しい戦技だな!」


 情報はいつも通り頭の中に入っている。


 【ストリーク・ストライク】〜攻撃力1.1倍の物理ダメージをモンスター10体に与える。


 今日のような複数体のモンスターとの戦いも楽に終えられる戦技だ。

 ただし、僕が使える戦技は一度発動したあと再度発動するのに時間がかかるため、連発はできない。

 戦技を無制限で連発できるのは、MPを利用して攻撃を行う【魔術師】エンチャンター関連のクラスに限られている。


 状況を見極めながら使っていこう。


 このように概ね順調に進んでいるが、気になる点がある。

 

 「結局、この戦技ってどのクラスなんだろう…?該当するものが見つからない」


 冒険者がレベルアップや特定の条件を満たして覚えられる戦技は、選択したクラスに依存している。

 ただし、誰でも選択できる【荷物持ち】ポーターには戦技が存在していない。


 だから、今覚えている戦技は別のクラスに所属しているはずなのだが、飽きるほど読み尽くした入門書【冒険者の手引き】には載っていなかった。


 「【剣士】セイバーでも【槍使い】ランサーでも【暗殺者】アサシンでもなかったし、なんのクラスの戦技なんだろ?」


 バイブリーの街についたら調べる必要がありそうだ。


 「…ふあーあ」


 急に眠気が襲ってきたので、今日はこれで寝ることにする。

 いくら【健脚】とはいえ、一日の大半を走って過ごすのはなかなかの重労働だ。


 その時、懐にしまおうとした【スキルシート】の裏面が、再び輝いているのに気付く。


 「んん?また…ヒントかな。見ない…と…」


 意識が闇に落ちてしまう直前、浮かんでいた文字を辛うじて視認できた。




 ー歩き方は、1つとは限らない。

 ー×か+か


 ****


 

 その後も、ひたすら【はぐれモンスター】と戦いながら僕は走り続けた。


 敵の出現頻度は明らかに増えている。

 エレナさんが言っていた通り、バイブリーの街周辺が危険な状況にあるのは間違いないらしい。


 いつの間にか【ゴブリン】が【エリートゴブリン】に、【スライム】が【グリーンスライム】や【レッドスライム】とモンスターも強力になっていったが、たどひたすら倒し続けていった。


 そして、いつの間にかレベルが9となり、バイブリーの街が目前に迫った頃ー、





 

 「誇り高き一族の血を引くこのアタシが、モンスターにやられるはずがないんだから!」


 一人ぼっちの彼女と出会った。


 そしてー、






 キスをした。




 

 あとがき


 本日は以上です!

 ☆1000およびドラゴンズノベル新人賞獲得を目標に、明日からも毎日更新していきます!

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