第2話ある方からの呼び出し 2

防衛省

予想を裏切られた、一佐はそう感じた。なにしろ目の前に見えるのは見慣れた防衛省本部その建物の入り口だったのだから。


(なんでだーなんでなんだー。おかしいだろ!!!普通ありえるか。局長自らの出迎えで案件を提示されて”ある方と会え”なんて言われたら、内密な話かなんかだとは思ったが、よりにもよって本部かよー勘弁してくれ、せめて廃工場の跡地とかどこかのカクテルバーとか、それらしいところにしてくれよなー)


なんて内心思いつつ一佐は本部庁舎に入る。

相も変わらず殺風景な廊下とオフィス。変わり映えしない景色に嫌気がさす。

局長からの渡された封筒を自分のデスクで見ると後々面倒な予感がした一佐は、なんとなく個室トイレに入り込む、座って一息つき封筒を開ける、


午前1時 第2会議室 ノック3回 時間厳守


何とも言えない単調な文章が書いてあるだけだった。

日付の回った深夜帯ということもさることながら、ノックで合図とは、随分と古風ではある。しかもあと半日待たなければならないという面倒くささのオンパレード。

一佐は何で暇を潰そうか考えながらとりあえず個室をあとにする。


。。。。。。。。。。。。。


深夜1時 第二会議室


睡魔に襲われながら会議室にたどり着いた一佐。会議室前には特に何もなく、深夜独特のホラー感が漂う、さらに殺風景だから余計に増す庁舎には居たくはない、なんて思いながら一佐は指定された通りにノックする。

すると扉が開き中から入れと男に手招きされる。入って早々に手招きしたその男に入念にボディーチェックを受ける。(明らかにガードマンだな)一佐はそう思いながら会議室の席に視線を向ける。

こちらに背を向け座っている人物がそこにはいた。明らかに体型からして男性であることは疑いないが顔が確認できない。すると


「一佐待っていたよ。まぁ掛けなさい。」


そう言うと男は座っている席の向かい側を指した。言われた通りに席に座ろうと歩く一佐はこの声に違和感を覚えていた。

(何度も聞いたことのある。一体どこでだ?思い出せそうで思い出せない)

だが席に近づくと段々と男の顔が見えてきた、そして全体像が見えてきて一佐は思わず唾をのんだ、そして


「大変失礼いたしました閣下。」っと言いながら敬礼した。


なにしろ真ん前に時の防衛大臣・遠井出刃集がいたのだから。


「いいから座り給え。」と刃集。


「たって聞かせていただきます」と一佐。


「まぁいいから堅苦しいのは無しだ、いいから座れ」そう一佐に言うと刃集はその後ガードを下

がらせた。


刃集は一佐に資料を渡す。「これは?」と当然のことながら一佐は聞く。


「世界中でテロが蔓延しつつある。それは我が国も同様だ。最近では武器の密輸入が後を絶たず、インターネットで爆弾の作り方が掲載されるほどだ。世の中物騒になったものだよ。」


ため息をついた後、刃集は続ける。


「国としては主だったテロ事案を警視庁に水面下での動きの監視と妨害を公安局に一任していたが、手がいくらあっても足りない。」


そう言うと一佐を凝視する。


「そこでだ一佐。我々防衛省でも秘密裏に対テロ専門の犯罪捜査局の設立が閣僚から要望された。今のところ情報は最高機密扱いではあるが、設立後その成果ないし実力次第では表立って動いてもらうことになるだろう。従って、、、、、」


「お待ちください閣下」一佐が話を遮る。


「なぜ私なのですか?適任者ならこの防衛省の中にいくらでもいるではありませんか。」


「それに私は戦闘経験や警察官のような事件調査は行ったことはございません。」


「それは表向きの話だろ。」今度は刃集が遮る。


「君に関する極秘文書は読ませてもらった。射撃、CQCは申し分なし、おまけにある程度の語学力、兵器関連に関する知識。FBIでのテロ事案の調査。それらを踏まえたうえで君を新設組織のメンバーの一人として組み込もうという話だ。いきなり断ることも無いだろう。」


「さっきも言ったが手は足りていない。適性を持ちながら、それを持て余す人間を食わすほど防衛省は優しくはない。言っている意味はわかるだろう?」


「君が必要なのだよ一佐どうかこの国を守ってくれ。」


そう言うと刃集は頭を下げた。


(このタヌキ親父汚いぞ、ここに来た時点で最初から断れる道理など無いんだろう。)

(わかりましたよ。どうせ強制なら、とことんやってやろうじゃないか。)

と頭の中で一佐は考えながら。 了解いたしました。お引き受けいたしますと了承するのであった。






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