お題「経緯書」タイトル「わたしで、私で、貴方と」

お前はまたかと、頭を掻く。


眉間に寄ったしわを見るたびに申し訳ない気持ちとともに頭を下げる。


しかし同時に、さげた頭の裏で少しだけほくそ笑む。


貴方は知らないだろう。わたしがいかに卑怯なやつかを。


仕事ができないわけじゃないのにと、仕方のないものを見る目で見られるのがたまらなく申し訳なく、そして、うれしい。


わたしはまだ、貴方の下でいられる。


わたしはまだ、貴方の前でわたしを出せる。


私と、わたしと、貴方。


とても単純な話で、でも、譲れない気持ちの話で。


貴方は、私の肩を叩き、励ましてくれる。


ちょっとしたトラブル。しかし、後を引く問題に、ため息にめんどくさいという感情と、しょうがないという感情が混ざっている。


そんなため息にさえ、わたしは愛しさを感じてしまう。


愛されてるわけじゃなくていい。


気にかけてもらえる、それだけで、わたしでいてもいいと言ってもらえている気がする。


また今日も、自分のミスを報告する。


誤字脱字のチェックなんて、もう何度もやってる。でも、きっと貴方は見つけてくれる。


完璧な経緯書なんて、ホウレンソウさえできれば書けるのに、私はまたきっとミスをする。


貴方に、気が付いてほしくて。


どうかまだ、私のミスを許してください。


きっと、いつか、貴方にふさわしい私に戻るから。

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