お題「ヤンデレ、束縛」タイトル「あかい、あと」
「離さないから」
君がそうつぶやいたのを覚えてる。
「もう、離れてほしくないから」
そう、いって、縋り付いてきてくれたのを、今でも覚えている。
右手には、嫌味なくらい白い肌に、映える赤い筋が何本も引かれている。
「ぜったい、逃げないから」
涙目になり、しかし、こちらを見ないままこぼしたのを覚えている。
うそつき
私の手を握っていた細い手は、するりと解けていってしまった。
縋り付かれて、よれたスカートは、みじめったらしく、今でもお気に入りの一着だ。
だって、君のしるしがいっぱいで、こんなにも君を感じられるから。
しっかりと、君の顔を覚えている。泣きはらしたまぶたも、うらやましいくらい、白い肌に、痛々しい赤みのさしたほほも覚えている。
うそつき
こんなにも、こんなにも、君のことを見ていたのに。
君の肌に、ハサミが食い込むのを、食い入るように見て、必死になって止めたのを思い出す。
どうして、こんなことするの?
「悲しませてしまったから」
私はただ、君がいてくれるだけで、それだけでいいんだよ?
「知らないままでいたから」
君が知る必要はないんだよ?私が、ぜんぶ解決してあげるから。
「うそを、ついてしまったから」
いいんだよ、もう二度と、つかないならそれで。
それなのに
それ、なのに
うそつき
今でも君を覚えている。
そう、あの頃の君は、今の君とは違ったよね。
「”今度こそ、逃げないでね?”」
かちゃかちゃと、ちょっとだけいやな音が響いてる。
嫌味なくらい白い肌には、今もまだあかい跡。
でも、大丈夫。
君が、ここにいるって証拠だから。
今の君が、私は好きだから。
今の君は、私のことが、きらいかもだけど。
かちゃかちゃと
かちゃかちゃと
「だから、もう、”離さない”し、”離れない”」
「もう、私も逃げ出さないから」
だから
かちゃかちゃと、ちょっとだけいやな音がまた響く。
うらやましいほどの白い肌に、あかい跡が増えていく。
ああ、一緒に、いれて
「しあわせだなぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます