第5話

 配信自体は二回に分けて行う予定だった。


 一回目は19時から二人協力プレイの最近流行りの脱獄アクションゲーム。


 二回目は22時からのお泊り女子会雑談配信という構成だ。


 当初ダダ下がりだった私のテンションだがそこは配信者としての矜持で何とか持ち直した。


 というか慣れてくると正直結構楽しかったというのもある。


 私は完全に樹慈ちゃんの器というものを見誤っていたことを徐々に分からされていた。


「先輩意外とやりますね!」


「意外とってなんだよ!ギャアーーー!み、見つかるー!!!!た、助けてー!」


「クソザコすぎませんか先輩!?」


「誰がクソザコだァ!?」


 チャット欄もいつもと違うコメントが流れていくのも新鮮だった。


 樹慈ちゃんにいじられることで、いつもの私のポンコツのゲームな腕前があっという間にネタに昇華されていく。いつも以上に温かいコメントとスーパーチャットが勢いよく流れていっていた。


 樹慈ちゃんにこれだけのコラボ力やコミュ力があるということを私は完全に見落としていた。


 でもこればっかりは仕方ないだろ!?昨日のひなた先輩とのコラボ配信だってそれどころじゃなかったんだから!


 そうして私もいつの間にかいじられるのが楽しくなりつつあった。そういえば友達と一緒にゲームするなんていつぶりだろーとそんなことまでぽろっと話すと、樹慈ちゃんは『先輩どんだけぼっちなんですか!?』といいリアクションを返してくれてそれでまたチャット欄も湧く。永久機関が出来上がちまったぜ…。


 あーたのしーずっとこうして遊んでたいなー…


 ・ ・ ・ ・ ・


(ってちがうだろ!!!!!!!!!?)


 風呂場で私は一人声もなく絶叫した。


 いや、これはこれでいいのか…?


 だが、後輩にまで舐められてたまるか…


 何よりも私はひなた先輩と将来肩を並べるほどのVTUBERになるんだ!


 あんな小娘一人御せずにどうする!?


 私は…やってやる!そう思って私は勢いよく浴槽から立ち上がった。


 反撃開始だ!


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