クライマックス・フェイズ②―SUGARLESS・FOOLS―

シーンプレイヤー:カルロ・カラヴァッジョ


 翌日、エヴァはカルロと共にホテル前に待機させてあったタクシーに乗り込んだ。

 カルロと『初老のタクシーの運転手』はお互いに頷きあって、乗り込み車を発進させる。

 運転手がチラリとバックミラーを覗いた。タクシーの後ろには『手発通り』に車がついてきている。

「エリオとの約束だ…彼に会いに行く。」


GM:「兄はなんで、ワタシに会いたいのかしら。」

カルロ:「知りたいか?それが、残酷な事実でも?」

GM:「…ワタシは兄の事が知りたい、覚悟はできてる。」

カルロ:「たとえ、その兄がキミを殺すつもりでもかい?」


 その言葉で、エヴァは全てを理解した。

 実はそうではないかと分かっていたのかも知れない。

 だが、毅然とした態度とは裏腹に瞳からは涙があふれたのだった。


GM:「たとえ、そうだとしても…。」

GM:エヴァが覚悟を決めたところで、タクシーはサンタ・マリア教会の広場につきます。

エンリコ:では、『タクシーの運転席』から降りてエヴァの席の扉を開きに行こう。うやうやしく、頭を垂れて「お客様、お着きになりました。」と。

カルロ:オレも車から出る。

GM:有名観光地のはずですが…『不自然に人の数が少ない』ですね。そして、広場の中心辺りにエリオ“ストラーダ”ラフェッロが待っています。

エンリコ:エヴァに対する狙撃を警戒して、彼女の盾になる位置をキープします。

シルヴァーナ:車から降りてシーンに登場、昨日の資料にあった人物を警戒して建物の影に。

湯河原:同じくです。


 エヴァがそっと、カルロの手を握る。その手は震えていた。

「カルロ達が、『ワタシの意思』を尊重してここまで連れてきてくれた。だから、ありがとう…感謝しています。」

 震える手だが、カルロにはどんな人間よりも力強く感じれた。

 エヴァは笑顔だった。初めて見るエヴァの笑顔は…エリオに瓜二つだった。


カルロ:うれしいね。はじめて彼女の笑顔が見れた。

エンリコ:死亡フラグにならないようにしないとな。(一同笑)

GM:「仕事は終わりだ、カルロ。エヴァをこちらに。」

カルロ:「エリオ、聞かせてくれ。何故、こんな回りくどい真似をした?」

GM:「必要なことだった。」

カルロ:「オレに話さなかったのは?」

GM:「兄弟でも話せないことはある。嘘をついてすまなかったとも…。」


「だが、お前を守るためにはコレが最善だったんだ。」


GM:「古い因習にとらわれ、お前や若い者たちを使い潰し、取り立てないファミリーを変えるにはこれしかなかったんだ。」


――――俺にとっての家族は…お前なんだよ…『カルロ』。――――


カルロ:…。

GM:エリオは家族のロイスをタイタスにして、カルロのロイスを残したんですよ…データ的に解釈すると。

シルヴァーナ:なるほど。

エンリコ:重たいな。

カルロ:「お前は、この街をどう思う?」

GM:「綺麗な街だ、好きだよ。」

カルロ:「ならば、街をこれ以上、お前の『家族』の血で汚したりするな。」

GM:「必要な事なんだ。譲れない。」

カルロ:「なぜ、そこまで?」

GM:「…『兄弟』のためだ!エヴァを渡せ!!」


「兄さん!もう止めて!」

 エヴァが、叫んだ。カルロと結びあった手にはもう震えはない。

「エヴァ、父を祖父を殺した俺を…まだ、兄と呼んでくれるのか。」


GM:「ありがとう、最後に『兄』と呼んでくれて。」その瞬間、エリオは拳銃を素早く抜きエヴァを撃とうとします。

カルロ:それに合わせて、コチラも銃を抜く。カルロを撃つ!

GM:では、対決です。使用する技能は〈射撃〉。単純な達成値の比べ合いで、勝った方の行為が成功します。

湯河原:支援を飛ばしてもいい?

GM:いいですよ。

湯河原:では、〈狂戦士〉をカルロに。

カルロ:ありがたい。

GM:コチラですが…エリオは『家族』『エヴァ』のタイタス。そして…『カルロ』に対するロイスをタイタスにして全て昇華します。効果は『判定のC値を下げる』です。これで、C値は7になります。

一同:うおーーーー!!?

GM:カルロはあくまで人間なのでこれが限界です。今回のセッションの特別仕様って感じですね。


(特別仕様→いわいる、ゴールデンルール。本来ならばNPCはタイタスを昇華しても特殊な効果の恩恵は得られない。)


カルロ:本当に全てを捨てる覚悟で挑んできているんだな。オレも応えよう!『エリオ』に対するロイスをタイタスにして昇華します。効果はC値を下げる!

一同:おおおおお!!


かくして、運命の賽は投じられた。


カルロ:…思いが爆発したな。達成値は71だ。

GM:……。

湯河原:(GMのダイスを見ながら)……GM、この出目。

GM:…達成値4。

湯河原:エリオ君はもう、こんなことしたくないって心の底では思っていたんですね。

GM:こんなのってあんまりだよ…。

(一同拍手&爆笑)


 広場に銃声が1つ響いた、驚いた鳩たちが空へと飛び去る。

 一人で立っていた男が、グラリと体をゆらして倒れた。

「兄さん!」

 エヴァが、声を上げて兄に駆け寄った。


湯河原:医療トランクを持ってエリオに駆けよる!

エンリコ:通信機で周囲に配置していた公安職員に指示をだす。一斉検挙だ。

シルヴァーナ:隠れているオーヴァードは私が対処しましょう。

カルロ:では、オレはこの騒ぎに乗じて立ち去ります。

GM:了解です。エヴァはそれに気づけません。ただ、「兄さん!兄さん!」と。

湯河原:「大丈夫です。ボクに任せて。」

エンリコ:待機させていた救急車両を呼び出そう。彼に死なれては困る。


 この日を境に裏社会で「葬送の弾丸ガンスリング・レクイエム」と呼ばれた暗殺者の足跡はぷっつりと途絶えた。

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