第13話 2021年5月21日(金) 古い家
私の実家は、元農家の家だ。
実家の周りは山や田んぼ、畑だらけであり、隣の家とも50m以上離れている。
よく言えば自然豊か、悪く言えば過疎化高齢化地域だ。
母方の家であり、母はこの家で生まれ育って過ごしてきた。
祖父祖母の代まで農家をやっていたが、それ以降では、家の田畑のほとんどは地元の会社に貸して耕作してもらっている状態だ。
私が小学生の頃はこの家に最大8人で生活していた。
私、妹二人、両親、祖父母、祖祖母。
当時は何も思わなかったが、今考えるとかなりの人数だ。
実家は母屋と隠居に分かれる2棟の構成。
母屋は築50年以上、隠居は改築を何度かしているが土台は明治時代からのものだ。
母屋は屋根裏部屋はあるものの、ほぼ1階建ての平屋と言っていい作りだが、天井が5mほどもありやたら高い。
土間があり玄関がやたらと広く縁側もある。
一方で部屋の間取りは、上から見るとふすまや障子で正方形を十字に区切ってある昔の作りだ。
なお、トイレは未だに汲み取り式だ。
ここ10年で何度か屋根の雨漏りや床板の腐食対応などの細かい修繕を行ってはいるが、所々傷みがあり年々ひどくなっている。
母の収入は多くはないため、これまでの修繕費用はほぼ私が出してはいるが、解決には程遠い状態だ。
そして現在はその広い家に母が一人きりで暮らしている。
私は転職してからは、この実家にこれまでから2週間に一回は帰っていた。
理由はいろいろあるが、最も大きな理由は、私は家の周囲の畑で家庭菜園をやっているからだ。
その畑は家のすぐ近くにあり、私が小学生の時に祖父が亡くなってからは、ずっと祖母が野菜や果物を育てていた場所だ。
元々そこは立地の制約がいろいろあったため、地元の会社に借りてもらうことはできなかった。
しかし、祖母が歳をとるにつれて農作業が厳しくなり、祖母が管理できる範囲はどんどん狭くなった。
管理されていない畑は、すぐに雑草で覆われ荒れてしまう。
転職して私が地元に戻った時には、ほとんどの範囲が雑草に覆われており、私はその畑が荒れ果てた光景に少なからずショックを受け、昔の状態に戻したいと思って雑草を刈り取って荒地を耕し始めたたのがきかっけだ。
帰ってから祖母は一年少しで亡くなってしまったが、だからと言って畑をまた荒れた状態にするのは忍びなかったので今までずっと続けてきた。
それにこの畑は、祖母の形見のようにも思っていたこともある。
もっとも他にも理由としては、私自身の運動不足解消のためだったり、仕事が激務だった時のリフレッシュ方法だったり、地元の人受けだったり、オタク趣味のカモフラージュのためだったりいろいろあるのも事実だ。
復旧の作業については、農業用機械等は所有していないため、ほとんど手作業で進めることになってしまったが、現在では8割くらいは回復している。
この畑に植えた作物を管理するために、これまでから月に何度も実家には帰っていた。
ちなみに、母は農家の娘の割にそこまで農業に興味はない。
昔の農家時代の家の手伝いがとても大変だったイメージが残っているのが原因だそうだ。
だから、気が向いたときに自分の好物の作物の水やりや食べたいものの収穫くらいしかやる気はないらしい。
もちろん私としても無理してまで手伝って欲しいとは全く思わない。
特に今となっては。
婚活にあたっては、この古い家や畑等の土地もこのままにしておくわけにはいかないので今後は対応を考えていく必要があるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます