第47話 かき氷が解けちゃうから
そんなこんなで30分程度で全ての試合が終わった。
最下位は俺・梨沙子ペア。単純に運動能力で負けた。
ビリから2番目は成瀬・御代ペア。主に成瀬が足を引っ張ていた。
そのことを御代にからかわれていたが、成瀬は嬉しそうな顔で否定していた。
けっ、幸せ感じやがって。
俺は心の中で毒づきつつ、ビーチバレー対決に負けた罰としてみんなの注文を聞いた。
「何が食べたい?」
すると一番に答えたのが、
「私、焼きそば! 紅ショウガ増し増しでね」
梨沙子だった。牛丼屋みたいな注文しやがって。
「お前も行くんだよ」
「え、ここは男気を見せて喜太郎が……」
「男気の前にまずはお前が優しさを見せろ」
気を取り直して、順々に注文を聞いていった。
前林と成瀬は梨沙子と同じく焼きそば、吉田と皐月はたこ焼き、御代はチャーハンとフランクフルト2本。
俺はスマホのメモ機能に記した。
最後に茉莉の注文を取る。
「茉莉はどうすんだ?」
「かき氷。ブルーハワイ味」
「お、もういっちゃう?」
成瀬の質問に、茉莉は頷く。
多分、お腹空いてないのと暑さに耐えられないんだな。
雪女みたいに白い肌をした茉莉は、見た目通り日差しに弱い。
「おっけ。かき氷、ブルーハワイ味な」
これですべて注文を受け取った。
「よし、これで全部な。じゃあ、行ってくるから。ほら、行くぞ」
「はーい」
めんどくさそうに返事する梨沙子。
その返事でさらに俺のテンションが下がる。
あーあ、これが皐月だったらな〜。
歩き出そうとした瞬間、「ね」と茉莉が話しかけてくる。
「私も手伝うよ。かき氷、解けちゃうし」
「え、ほんと!?」
梨沙子が目を輝かせる。
茉莉の提案は嬉しいのだけれど。
「いや、そーゆーわけにはいかないよ」
穏やかな声音で伝える。
「負けたから俺らが行くんだ。ゲームだから」
茉莉の優しさはありがたいが、これじゃあゲームの意味が無い。
罰ゲームを受けるから、ゲームが楽しいんじゃないか。
それがわからない茉莉じゃないと思うんだけどな。
「…………………」
言い返す言葉が見つからないのか、茉莉はもどかしそうに口をつぐんだ。
「解けないよう早めに持って帰るから。心配すんなって」
「うん」
「じゃ、行くぞ」
親に怒られてしゅんとなる幼女のような顔の茉莉を背に、俺は梨沙子と買い出しに向かった。
茉莉のやつ、なんでそんな辛い顔したんだ?
そんな顔されるとは思わなかったので、俺としても少し罪悪感にとらわれた。
若い観光客でにぎわう砂浜を、俺と梨沙子が横切っていく。
はぁ……この海岸はカップルが多いなぁ。
暑いのにくっついて海を見たり、2人で楽しそうに水をかけあったり、俺が夢見てたのはあーゆーのなんだよぁ。
「あのさ」
梨沙子が妙に真剣な顔で言う。
「今更だけど、茉莉って喜太郎のこと好きだよね」
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