第36話 【In a secret room Ⅲ】
「バーキンが誕生したのは1984年の事です。それ以来、一度もデザインは変更されておりません。ただしデザインこそ同じですが、素材とサイズ、さらに色の違いにより実際には多種多様なバリエーションがございます。大汐様が今ご覧になっているお
「サイズが30cmという意味でしょうか?」
「
「『トゴ』はカーフの一種なんですよね。」
「はい。
「
「皮の表面にある凹凸の事です。同じカーフでもタイプによって
私はまるで大学の教室で授業を受けているかのように、斉藤さんの話に耳を傾けている。
「そもそもバーキンの原型となったのは『オータクロア』というモデルです。そのためバーキンとオータクロアのデザインは似ていますが、正面から見ると違いは明らかです。」
「どのように違うんですか?」
「形状です。オータクロアは正方形、バーキンは横長の長方形ですので、見慣れた人であれば一目で区別がつきますよ。」
「そうなんですね。」
「もう一つの違いは大きさです。一般的にオータクロアの方が大きくて重い個体が多いのです。これはオータクロアの成り立ちに関係しています。」
「?」
「オータクロアは自動車が普及する前から存在する歴史のあるモデルですが、元々は馬の
「わざわざオータクロアを小型軽量化しなくても、ケリーバッグでは駄目なんですか?」
「そうですね、確かにケリーバッグ、当時はサック・ア・クロアですが、既にございました。第一次世界大戦までのヨーロッパでは、オータクロアを購入するような
豊富な知識に裏打ちされた斉藤さんの話は私の知らない事ばかりで、聞き飽きる事が無かった。
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