第26話 【世界の全て】
カフェテリアの出口で真夕さんと別れた私は、そのまま午後の授業に向かった。
だが昼休みの事件のせいで、とても授業に集中できる精神状態ではない。
『真夕さんが言ってたケリーって何だろう? ブランドの名前かな? さらに謎なのはヒマラヤだよ。どうして地名が出てくるの? ヒマラヤ産のバッグ? そんな訳ないよね?』
頭の中に次から次へと疑問が浮かんできて、授業内容は全く頭に入って来ない。
答えが全く見つからないまま午後の授業は終わり、私は真夕さんとの待ち合わせ場所に急いでいた。
先に着いていた真夕さんは私の顔を見るなり、意外な言葉を口にする。
「ああいう
「遠山さんの事? うん、そうだね・・・ちょっとびっくりしたかな。でも何ていうか、ルックスはTheお嬢様という感じで圧倒されたよ。」
「外見だけはね・・・内部進学者が全部あんな人ばかりではないけれど、ああいうのも一定数はいるわね。」
「そうなんだ・・・まあ確かに遠山さんと仲良くなるのは難しいと思う。」
「向こうも珊瑚と仲良くする気なんて最初から無いから、そんな心配はしなくていいわ。」
「それもそうか。」
真夕さんの表情が急に真面目になる。
「あの人たちは内部進学者だけの小さなコミュニティの中で生きていて、それが世界の全てなの。」
「世界の全て?」
「そうよ。そして彼女たちは
真夕さんの表情は嫌悪感に満ちており、私は彼女の内面をほんの少しだけ
もう私にも分かっていた。
真夕さんは
いつだって
私にはそれが不満だった。
私だって少しは役に立つ事が出来るのに・・・。
いつか真夕さんは、私に本当の気持ちを話してくれる時が来るのだろうか?
私もまた、自分の本当の気持ちを彼女に話せないでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます