第22話 【真夕さんの本心】
自宅への帰り道、私は前席と後席の仕切りにある小窓を笹井さんに開けてもらったため、運転中の笹井さんと直接話をする事が出来る。
「行きも帰りも送って頂いてありがとうございます。」
「
「そんな、お友達になって頂いたのは私の方です。」
「お嬢様とこれほど親しくなられた方は、大汐様が初めてでございますよ。」
「あの・・・それなんですが、実は『大汐様』という呼び名に慣れなくて・・・別の呼び方にならないものでしょうか?」
「左様でございますか。では何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「珊瑚でいいですよ。皆そう呼んでいます。」
「承知しました。私の方も実を申せば、珊瑚様に会わせて欲しいと、以前から真夕お嬢様にお願いしておりました。」
「え!私に?」
「そうです。私は珊瑚様に直接お会いし、
「笹井さんにお礼を言われるような事を何かしたのでしょうか?」
「それを説明するには昔話から始める事になりますが、よろしいですか?」
「ええ、もちろん構いません。」
「ありがとうございます・・・真夕お嬢様は橘家の
「!」
「
「・・・・・・」
「それがご両親の方針で、真夕お嬢様の意思とは無関係に日本に呼び戻されてしまった。お嬢様としては
「そんな・・・いくら何でも買い
「いいえ、買い
「私は自然にやっているだけで、信頼されるような特別な事なんて何もしていません。」
「そこが良いのですよ。珊瑚様は今のまま自然にお嬢様とお付き合いして頂ければ良いのです。」
「それでいいんでしょうか?」
「ええ、決して御自身では口に出されないでしょうが、お嬢様はあなた様をとても信頼されているのです。」
私は以前に真夕さんが、自分は出戻りだと言った事を思い出した。
その時は特に意識せずに聞き流してしまったのだが、彼女の短い言葉には
『私は一体、真夕さんの何を見ていたのだろう・・・』
私が見ていたのは完璧なお嬢様としての表面的な真夕さんだけであり、その裏にある悲しみや孤独について全く
笹井さんからは感謝されたものの、真夕さんの気持ちを何も理解していなかった事に気付いた私は、少なからずショックを受けていた。
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