第18話 【まりも登場】

ふすまの外には制服を着たまりもが立っていた。


彼女は真夕さんが持ってきたラスクを手に持ってさせながら興奮した様子で私に話しかける。


「姉ちゃん食べた?メチャクチャ美味しいよ。」


「口の中に物を入れながらしゃべらない!それから他人ひとの部屋に入る時はことわってから入る事。」


姉妹しまいなんだから別にいいじゃん・・・あれ、お客さん?」


「そうよ。こちらはお友達のたちばな真夕まゆさん。」


「こんにちは。」


「あ、どうも。珊瑚さんごの妹のまりもです。姉がいつもお世話になってます。」


「まりもさんは高校生?」


「はい、二年生です。」


まりもは私に向き直ると、真顔まがおで確かめる。


「ねえ、真夕さんは本当に姉ちゃんの友達なの?姉ちゃんの100倍くらい上品なんだけど。」


「ウルサイ!そんな事より用事があって来たんじゃないの?」


「用事?・・・あっ、そうだ。このお菓子全部食べてもいい?夕飯はまだだし、部活でお腹減ってるんだよね。」


「全部はダメよ!お父さんの分はちゃんと残しておいて。」


「ちぇっ、分かったよ。」


「それからアンタが馬鹿食ばかぐいしようとしたお菓子は真夕さんが持ってきてくれたものなんだから。真夕さんにお礼を言いなさい。」


「メチャクチャ美味しかったです。これ、何て言うお菓子ですか?」


「シュガーラスクよ。」


「ラスクご馳走ちそうさまでした。ゆっくりしていって下さいね、真夕さん。」


「ありがとう。」


まりもふすまを閉じると、バタバタと足音をひびかせながら自分の部屋に戻って行った。


「ごめんね、騒々そうぞうしい家で・・・」


「そんな事ないわ。楽しそうなご家族ね。」


みんな口が乱暴でびっくりしたかもしれないけど、地元こっちではこれが普通なんだ。」


「別に気にしていないわ。それよりも今日はご招待ありがとう、珊瑚さんご。来て良かったわ。」


「こちらこそ来てくれてありがとう。真夕さんが下町を気に入ってれるとうれしいな。」


私が最初、真夕さんを家に招待する事を躊躇ちゅうちょしたのは、最近起こった衝撃的な経験が大きな原因となっている。


それは私にとってある意味、ニューヨークでの体験以上に衝撃的なものだった。

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