第13話 【イートン校】

それから彼女と私は行動を共にする事が多くなった。


実際には私の方が一方的に彼女を追いかけていると言った方が正しいのだが、とにかく日も彼女と昼食を共にしていた。


いつものカフェテリアが混雑していたため、私達は学生食堂に移動している。


「えっ!!真夕まゆさんって附属高校出身じゃないの?絶対初等部から麗央れいおうだと思ってた。」


「私、初等部は麗央れいおうに通っていたわよ。」


「?」


「初等部卒業後は両親の教育方針もあって、英国のイートン校に進んだの」


「イートン校?」


「ロンドン郊外にある小さな町のパブリックスクールね。」


「フーン・・・そうなんだ。」


その時の私にとってイートン校の知識など皆無である。


彼女は当たり前のように話をしたため、イートン校に通っていたというのが凄い事なのか、私には当然分からない。


イートン校が英王室のウィリアム王子やヘンリー王子も在籍ざいせきした超名門校である事を私が知るのは、ずっと後になってからの事だ。


「私としては、そのままオクスフォード大学に進むつもりだったんだけど、日本に呼び戻されてしまったので、仕方なく麗央れいおう大学に入学したのよ。つまり『出戻り』ね。」


「オクスフォード大学なら私も聞いた事があるよ。凄い大学なんだよね。」


「そうね、全世界から優秀な人材がつどう、刺激的な大学だと思う。」


麗央れいおうには人が沢山いるの?」


「どうだろう?・・・帰国子女なら珍しくないけど、イートン校出身者は私だけじゃないかな。」


「今の話で謎が解けた気がする。」


「謎?」


「うん。私、真夕まゆさんは初等部から麗央れいおうだと確信していたけど、それにしては附属高校出身者と全く付き合いが無い様に見えるし、それが不思議だったの。あの子たちと友達じゃないのかなって?」


「『出戻り』は仲間だと思われていないのかもね。それに友達なら最近出来たわ。」


「えっ!真夕まゆさん友達出来たの!?」


「・・・あなたって面白い人よね。」


そう言うと彼女は無言で私の目を見つめる。


数秒後、彼女の言葉の意味にようやく気付いた私の顔は真っ赤になる。


「あの・・・友達になってくれてありがとう。真夕まゆさんのおかげで大学生活がとても楽しくなったよ。」


私の「告白」を聞いた彼女は、無言でと微笑んだ。

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