第11話 【アプローチ】

それからというもの、私は大学で常に彼女の姿を探すようになった。


その結果、彼女についていくつか分かってきた事がある。


まず同じ学部の同じ学年である事。


次に学内では友達とつるんだりはせず、一人で行動している事。


そして週に何コマか、私と同じ講義を履修りしゅうしている事も分かった。


一通りの情報収集が終わったところで、私は再び彼女にアプローチを掛ける事を決意する。


「隣、空いてますか?」


第二外国語であるフランス語の講義が行われる教室で彼女を発見した私は、思い切って声を掛ける。


「ええ、どうぞ」


私の顔を見た彼女は、あっさりと隣に座る事を許してくれた。


どうやら私の事を覚えてくれていたようだ。


私の方も前回ほどは緊張していない。


「あの、お名前は『まゆ』でいいんですよね?」


たちばな真夕まゆよ、オオシオさん。」


「私の名前をおぼえてくださっていたんですね!」


感激した私が自分のフルネームを名乗ろうとした時、フランス語の教授が入ってきたため、そこで会話は中断された。

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