第4話 学級委員だから

「私が届けます」

 武田君が風邪で休んで3日目、溜まったプリントを誰かが届けることになった。

「えっ? 佐藤さん…家、近かったっけ?」

 担任の先生が不思議そうに手を挙げて立ち上がった私を見ている。

「だって…だって…私、そう、学級委員だから…です」

「いや、別に学級委員だからって、帰り道の子に頼めば…」

「学級委員の仕事です…から」

 先生の言葉を遮ってまで学級委員を主張してしまったけど、最後の方は小声になってしまった。

「えぇ、まぁじゃあ佐藤さん、お願いね」

「はい」


 放課後、私はクラブを休んで小走りで武田君の家へ急いだ。

 だけど、家が近くなると、不思議と足が重くなる。

(ドキドキしている…急いだからね、きっと)

 自分に嘘をついた。

 ドキドキしているのは、手を挙げたときからずっと続いてたんだから…。


 武田君の家、どうしよう。

 玄関の前で大きく深呼吸する、もう一度…もう一度…

(何回するの私?)


 ドキドキが収まらない、むしろ呼吸が早くなったような気もする。

 呼び鈴を押す指が熱い…

 ピンポーン♪


(武田君が出てきたらどうしよう…)

 出てきたのは、武田君のお母さんだった。

「はい…ん? 佐藤さんよね、どうしたの?」

「あの…コレ、そのプリント、先生に頼まれて、その、お届けにあがりました」

「あら、そうなの、悪いわね~、わざわざ」

(お届けにあがった…とか言っちゃった)

 なんか色々、どうしたんだろう顔が熱い。

「シンジ、明日から学校に行くから、もう熱も下がってたんだけど、今日は一応休ませたのよ」

「そうですか、あの…じゃあ、お大事に」

(明日から来るっていうのに、お大事にって…私…)


「うん、伝えとく、佐藤さんが届けてくれたってね、ありがとうね…でも佐藤さん、家近いんだっけ?」

「いえ、私、学級委員ですから」


 帰り道、ドキドキが収まって、色々なことを思いだして、自分の勇気を褒めてあげたくなった。

(頑張ったね私)



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