第3話 許して、この嘘
「あのね、I君…あの、教室でね…あっO君が探してたよ」
「ホント? わりぃ…A、俺、戻るわ」
「あぁ…じゃあな」
卒業式が終って、皆が離れ離れになる日、中学最後の日。
私は嘘をついた。
「ずっと3年間、好きだったんだもの」
A君と一緒に帰りたかったから、私は嘘をついた。
A君のこと待ってたから…ずっと。
でもA君はI君と一緒に帰ろうとするから、だから…嘘をついた。
ごめんね…
「あの…A君、あの…あのさ…その…ラジオ、私にくれない?」
A君が実習で作ったラジオが鞄から見えた。
「ん?コレ…あ~いいけど…コレ失敗して音が出ないんだ、こんなのやれないよ」
A君が照れくさそうに笑う。
「そう…残念」
「ごめんな」
でも、自然に話しながら私の家まで一緒に歩いて帰ってきた。
「じゃあな…高校、別々だけど…」
「うん…」
(じゃあねって…言えない…言いたくない)
またねって言えたらいいのに…。
「あっ…う~ん…」
「なに?」
「うん…コレ直すからさ、そしたら…渡すよ、うん、きっと直す」
「うん、絶対だよ」
「あぁ…じゃあな…じゃなくて、またな」
「うん、またね」
ごめんねI君…許してね。
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