第2話 大丈夫だけど…ね

 つまづいて、転んだ。

 登校途中の誰にも見られたくない姿、かっこわるい姿。

「大丈夫?」

 転んだままの私の横に後ろから走ってきた自転車が止まった。

 スッと差し出された手…あの人の手。

「大丈夫だから」

 そう言ったけど…立ち上がれない。

 ううん…立ち上がらない?

(その手を掴んでいい? それとも一人で立った方がいい?)


 どうしよう…どうしよう…

(動いて、私の右手…)

「どうしたの怪我した?」

「ううん…大丈夫」

 自転車から降りた彼、私の右手を引っ張る。

「ありがと…大丈夫だから」

 立ち上がると距離が近くて、ドキドキする。

(大丈夫じゃない…かもしれない)


 この手を自分から放したくないな…。

 もう少しだけ…あと数秒だけ…

 誰も来ないで…あと数秒でいいから。


 伝えて…私のドキドキ、繋いだ手から、少しだけでいいから。

(握り返していいかな?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る