第12話 僕と模擬試験

 暑い。なのに温度を感じない。体は熱を理解しているし、機能として汗は吹き出ているのに、それとは全く別に体の中はとても冷えていた。まるで骨がつららと入れ替えられたかのような。冷たさが足から心臓、手足へと広がる。白い息が出そうなその中で頭だけは異様に熱を持っていた。耳に音が聞こえる。外から飛び込んでくる音じゃない。耳の血管を通る、脈打つ鼓動。冷えきった心臓がそれでも動きを止めず、ひたすらに頭へと血を送り込む。外界と内界の区別が曖昧で、自分がどこに立っているのか、ちゃんと垂直に立てているのか、そもそも立っているのかすらわからなくなる。息を深く吸おうとして心臓の鼓動が邪魔をする。体内の音節が不揃いだ。それでもむりやり息を吸って吐く。ようやく頭の熱暴走はなりを潜め、それ以外の温度と混ざりあった。

 緊張してる。

 深呼吸一つでようやくそれに気づけた。何となしにこの広い訓練場の中心に出てきたけれど、評価者の視線がこれほど深く突いてくるものだとは思わなかった。突かれた体から何かが吹き出る。僕が僕を支えているそれは思った以上にこぼれやすいものだったのだ。

 こんな場所であんなに堂々と振る舞えるものなのか。

 巽の出で立ちを思い出す。そして、負けたくないと思った。

 よし、少し落ち着いてきた。

 もう一度深呼吸をして、天幕の下にいるリングレットに指示を出す。

 他の訓練者よりも遅かっただろうか、焦りを悟られただろうか。

 ほっとけば何度も頭の中をかき乱すそんな考えをねじ伏せる。混乱はリングレットに伝わる。そうなれば上手くいくものも上手くいかない。僕は僕を失敗させるわけにはいかない。

 リングレットは僕の右側に着いた。人前とはいえ、リングレットに緊張はない。いつも通りだ。

 経路を見る。障害を一通り確認する。でもそうだ、巽の試験を食い入るように見ていたのだから今更見直す必要もない。大丈夫、全て訓練でやってきたものだ。笛がなかなか鳴らない。どうしてだ、犬が横についたら間をおかず始めるのではないのか。

 掲示されている時計に目をやる。驚いたことに、リングレットを呼んでからまだ十秒も経っていない。僕の感覚が時間の経過に遙か先んじている。

 まだ緊張しているのか。

 もう一度深く息を吸い、吐き出す前に笛が鳴った。


「・・・くっ」


 慌てて一歩踏み出し、併走指示をリングレットに出していないことに気付く。混乱を極めた頭でそれでもなんとか手振りで併走指示を出す。

 リングレットは少しの間も空けず僕の横についた。

 幸いだったのは最初の障害までは二十メートルほど距離があったことだ。走っている内に熱や冷たさは放り出され、いつもの訓練の感覚が僕に戻ってきた。

 いける。

 最初の障害はリングレット用の筒。外の見えない筒をリングレットだけが入り、僕はその外を走る。訓練者と犬の速度が合っていなければ出口でお互いの距離が離れすぎる可能性もある。しかしこの訓練なら何度もやった。出口からリングレットの上半身が出るのと、併走していた僕が駆け抜けるのはほぼ同時だった。姿が一度途切れたので改めて併走指示を出す。リングレットは速度を調節して再度僕の真横に着く。

 いつも通り、感覚としてはいつもよりずれが少ないくらいだ。

 次は訓練者用の障害で平均台。落ちれば最初からやり直しなのでどうしてもある程度速度は落ちる。犬が人間の速度に合わせられるかが問題だが、僕はリングレットを狂いなく併走させる。だんだんと感覚が澄んでいくのがわかる。集中力がいつも以上に働き、その上で一部ではなく全体に注意を払えている。

 これなら最高記録を塗り変えることもできる。

 半周した辺りで確信し、確信は行動へと移る。その後の障害も問題なくこなし、残る障害は一つとなった。

 平行棒。

 リングレットが最も不得手とする障害である。跳ばずに迂回しても完走は認められるが、その場合は罰則として経過時間が三十秒追加される。さすがにそれだけの経過時間を足されてしまえば記録は更新できない。ゆえに、僕には越える以外の選択はなかった。

 速度も充分に平行棒へ近づく。リングレットが歩調を合わせ、平行棒から一定の地点で僕を見た。

 今だ。

 手振りで跳躍の指示を出す。リングレットはそれを確認すると、平行棒へ向けて踏み切った。弧を描いてリングレットの体が宙を浮く。

リングレットは棒を越え、着地と同時に転けた。そして直ぐに立ち上がり、僕と併走して一周を終えた。


「・・・・・・・・・。」


 うん、わかる。わかるよ。

 最初の試験を終えた僕が感じたものを他人が想像できるだろうか。経過時間とか評価とか、その辺りはひとまずおいておく。

 模擬とはいえ試験である。研究者として実績を積んだ人が評価する場で、試験そのものは張りつめた空気を保っていて。薄氷の上を歩くような、先の見えない濃霧を手探りで進むようなそんな緊張が、あったはずなのに。

 もう、評価者の一人笑っちゃってるもん。

 犬が転ぶというだけでも珍しい状況なのに、リングレットの転け方はとても剽軽で。その後の持ち直しが異様に早かったことも併せて、とても滑稽に見えたのだ。

 走りながら目の端でとらえていた僕でさえ、いわば当事者の僕でさえ笑いがこみ上げてきたのだ。遠目で俯瞰して見ていた大人達が笑っても不思議ではない。

 巽を見る。やつは顔を伏せていた。巽の肩は小刻みに震えており、伏せた顔から出ていた耳は真っ赤に染まっていた。

 だろうな。

 もしやと思い研究棟の方へ目をやると、入り組んだ棟の中に見える五番棟、その二階の窓に司が見えた。笑っているのだろうか。もしそうなら是非ともその顔を見てみたい。

 最後に、いやこればかりは本当に確認したくないのだけれど、一応確認しておかなければと思い、天幕で控えている父を見た。

 真顔だった。若干恥ずかしげにも見えた。そうか、父からすると身内が恥を晒したことになるのか。ふむふむ。

 冷静に分析する振りをしてようやく、僕は走ったことによるものか、それとも恥ずかしさによるものかわからない顔の紅葉を抑えた。横に鎮座するリングレットは何事も無かったように舌を出して僕を見ている。何だその顔は。

 記録は最高記録よりも二秒早かった。つまり記録更新であるのだが、いまいちすっきりと喜べないのは何故だろうか。

 まあいい、とにかく好成績は出せたのだ。

 僕が周囲の反応や自身の心と向き合っている間に、次の試験準備は完了していた。次は従順試験。まずは静止試験である。

 地面に書かれた線の前に立つ。線の反対側にはリングレットを座らせる。リングレットの背後には、距離を置いて訓練者のいる天幕が見える。おそらく訓練者にも見張らせる意図があるのだろう。


「指示は一度。規定時間は十分。準備ができたら始めてください」


 側に立つ審査員が説明し、目を光らせる。

 始めはこちらの自由にしていいというのは僕としてはとても助かる。リングレットの呼吸を見て始めた方が成功率が高い。

 リングレットの前に右手をかざす。少し上下に動かして、リングレットが手の動きに集中するのを待つ。手の動きにリングレットの目線、呼吸が合い始めたらようやく僕は指示を出す。


「待て」


 リングレットは僕を見上げて静止した。

 静止が始まってからは僕も極力動いてはならない。姿勢を正し、リングレットと向き合う。視線もリングレットと結んだままに。その際、他の訓練者が後ろに組んでいた手を僕は前で組んだ。へその正面で右手が左手に被さるように。

 当然、審査員は何も言わなかった。立ち方に関しては指示を出されていないのだからこれは問題ない。

 二分が経過し、リングレットの視線が動き始める。

 ゆっくりと尻尾が動き始めたら限界が近い証拠だ。そうなる前に、僕はばくちを打つ。慌てないようにゆっくり息を吸う。


「・・・っ」


 手を組んだまま、左手の甲を掻く振りをして、右手の人差し指だけを動かす。そして掻き終わりにリングレットに見えるように人差し指を立てた。数週間前から練習した、別の静止指示。

 リングレットの尻尾が止まる。

 評価者や訓練者の位置からではさすがに離れていて僕の動きはわからない。懸念があるとすれば審査員だけ。

 その審査員はーー何も言わない。

 吸ったままにしていた息を深く吐き出す。最初の関門を越えた。

 その後も間隔や挙動の大きさを調整しながらリングレットへ静止指示を出す。都度四度にわたる静止指示の重ね掛けは審査員に露見することはなかった。最初の指示が一般的な手のひらとかけ声によるものだったことも大きいだろう。あれで迷彩をかけられた。

 残り九十秒の時点で最後の静止指示を出す。事前の練習から、一度の静止指示で二分は保つことがわかっている。これで静止試験は通過できたようなものだ。

 指示後、リングレットは何度も見たとおりに尻尾を止めて静止する。

 リングレットの向こうに見える巽へ僕は余裕の目線を送った。これで一番の懸念事項は片づいた。偽薬に関しては僕の方が先を行っている。体力試験、従順試験共に巽の上に立ったことになる。

 目線を送った先、天幕の中にいる巽は僕の視線に気づき、そして、


「大馬鹿者」

 と、声に出さずに目で言った。


「ーーあっ」


 気付く。自分の失敗に。

 リングレットと結んでいた視線を解いてしまったことに。慌てて目線を戻す。リングレットと呼吸が乱れていることがわかる。

 再度指示を出すか、いやそんな問題じゃない。ここで挙動きを間違えればリングレットがどう振る舞うかわからない。今何秒だ。後何秒だ。ああ、ゆっくり尻尾が動き始めた。動くな動くな動くな。まだまだ耐えろ。まだ、まだ、まだまだまだ・・・・・・・・・。

 リングレットが動き出す。

 と、ほぼ同時に十分経過を知らせる笛が鳴った。

今のはどっちだ?

 十分経過していたのかそれとも。

 審査員の顔を見るが答えてはくれない。評価は訓練者全員が終わった後に発表される。ここで僕の静止試験結果を伝えてはそれに反することになるのだろう。

 控え場所の天幕を見ると巽は呆れ顔でため息を吐いていた。他の訓練者達は僕に何が起きたのかわからないだろう。ただ単に静止時間の限度辺りまで静止させていたという結果しか伝わっていない。

 油断、慢心。

 するつもりなど毛頭なかったのに。事を上首尾に運べているという安堵感が僕の虚栄心に絡み付いた。巽を見る必要など全くない場面で、外してはいけない視線を外してしまった。

 リングレットに触れる。最後の最後、直前まで上手くやれていたのに、ほんの数秒目を離してしまったが故に。リングレットの行動を過不足なく操れていたのに。

 切り替えなければならない。まだ終わったわけではない。従順試験は続いている。


「まだだ」


 体力試験では滑稽ではあるが記録を更新した。静止試験も規定時間かその直前までは静止させられていた。大きな減点を受けるようなことは何もしていない。

 そう、考えようによっては順調に事は運んでいる。

 リングレットに触れていた手を離す。偽薬試験のための一式が運ばれてきた。

 台車の上には犬の食事皿と偽薬の入った小瓶、そして偽薬を混ぜこむための簡易食が置かれている。巽含めて僕の前に行った訓練者は全員、簡易食の中に偽薬を混ぜこんでいた。中には偽薬を砕く訓練者もいたほどだ。

 簡単だよ。

 僕は偽薬の小瓶と皿を手に取る。台車を下げてもらい、リングレットの前に皿を置いた。台車を運んでくれた研究員の人は簡易食が台車に残っていることに気づき、僕に無言で合図を送る。

 せっかくの好意だがそれは不要だ。

 僕は小さく首を振って偽薬の小瓶を空け、それを皿の中に全て入れた。試験としては一錠でいい偽薬を全て。

 そしていつものように、


「待て・・・・・・よし」

 とリングレットに指示を出す。


 リングレットは皿に口を入れるとそのまま平らげた。訓練者の控えている天幕からは小さな歓声が起きる。

 評価者の中にも驚いた反応が見えた。


「いいぞリングレット」


 偽薬を意に介さず飲み込める。これはリングレットの明確な強みだ。間違いなくこの偽薬試験においては良い評価をもらえただろう。

 静止と偽薬の試験をもって従順試験は終了した。残すは嗅覚試験のみ。

 今まで見てきた訓練者と同様に、従順試験と嗅覚試験の間には少し時間ができる。と言っても五分程度だ。嗅覚試験では三人の対象の中から一人の衣服を無作為に選び、犬はその服を嗅いで匂いの元、つまりは服の持ち主の元へと到着できればいい。その三人と衣服を決めるのに些かの時間がいるということだ。

 一ヶ月の訓練でリングレットはまずまずの的中率でそれを行えていた。訓練の後半ではほぼ百発百中。注意すべき点があるとすれば訓練時には人を三人も用意できなかったから、三人分の衣服を二着ずつ用意して、探す匂いの先も衣服でおこなったことだろう。今日は匂いの先にいるのは生身の人間である。衣服に付着した匂いと生身の匂いで結果に違いがでるのかどうか。こればかりは試すことができなかったのでわからない。

 対象と衣服の持ち主を訓練者が知るわけにはいかないので、それらの作業は裏で行われ、訓練者は一度天幕に戻される。

 戻った先で巽は未だに呆れていた。


「巽、何も言うな」


「何故、櫂季は私を見たのでしょうか」


 やっぱり静止試験の事だ。


「だから言うなって」


「あれがなければもっと綺麗な形で十分を迎えられていたでしょうに」


「ちょっと油断したんだよ」


「油断、油断ですか。そうですねそれに一番近いのかもしれませんね。櫂季は表面上で形を整えて満足するきらいがありますから、注意した方がよろしいですよ」


「もうちょっと分かりやすく言ってくれ」


「本質を求めずに、見かけが整っていればそれでよしとすることがある。ということです。静止試験だって、何故あのような手段で行われたのですか?」


「あのようなってーー。」


 巽は声を潜めて耳打ちする。


「櫂季、途中で指示出してましたよね」


「・・・・・・。」


 気付かれていた。巽には内緒に準備していたのに。


「櫂季が具体的に何をやったかに気づいているのは恐らく私だけですが、しかし評価者の目だって節穴ではありません。違和感程度なら抱いていらっしゃると思いますよ」


「でもそれには理由が──、」


 リングレットの現状では間に合わない、そう言いたかった僕だが、その言葉は試験準備完了を告げる笛の音でさえぎられた。天幕から出て試験場所に戻らなければならない。


「・・・行ってくる」


「はい、ご健闘を」


 まあいい。静止訓練が今日この日に間に合っていないのは事実なのだ。だとしたらこれ以上言葉を重ねてもただの言い訳にしかならないだろう。

 再び日差しの中に出る。

 訓練場の中心に書いてある円の中に審判員がいた。手には衣類を持っており、両腕は清潔そうな布で覆われている。きっと衣服に審判員の匂いを付着させないための配慮なのだろう。


「では犬を呼んで」


「はい」


 犬の控えている天幕に向かい、リングレットへ指示を出す。リングレットは僕の指示通り、先ほどと同じように僕の右横へ鎮座した。大丈夫、落ち着いているし指示通り動く。後は僕が気を抜かなければいいだけだ。


「では始めます」


 審判員が言う。


「はい」


 返事をし、僕は審判員の持つ衣服に手を伸ばす。

 しかしその手は審判員に避けられた。

 あれ?


「・・・・・・・・・あ、そうか」


 忘れていた。この試験では衣服は審判員が保持していて、訓練者はその服に触ることができないのだった。試験開始前に行われた説明でそんなことを話していたはずだ。訓練者ができるのは犬に指示を出すことだけである。

 慌てて伸ばしていた手を引く。衣服に触れていたら失権になるところだった。避けてくれた審判員に感謝しなければ。

 審判員に目礼をし、リングレットへと向き直る。リングレットが十分に僕の顔を見たところで、匂いを嗅ぐよう指示を出した。

 誰が衣服を持っていようが関係はないはず。そう自分に言い聞かせる。変に意識し緊張すれば、それがリングレットに伝わり、それこそ駄目になりかねない。

 リングレットは審判者の持つ衣服に近づき、鼻を当てる。

 いつも何度か鼻を衣服にこすりつけた後、軽く口に咥える。口に咥えてすぐに離す。それがリングレットの癖だった。今日も同様に、いつも通りに何度か鼻を衣服にこすりつけ、そして──、


「・・・おっと」


 咥えようとしたところを審判員は避けた。

 いつもの動きを阻害されたリングレットは再度衣服を咥えようとするが、審判員はそれをかわす。

 考えてみれば当然で、借り物の衣服に万が一穴が空いても問題だし、そもそもリングレットがすぐに口から離すかどうかも審判員にはわからないのだ。

 二度三度とかわされて、リングレットは不満そうに僕を見た。

 しかたない、すっきりとはしないだろうがこのまま先に進むしかない。


「行くんだリングレット」


 動きと言葉でリングレットに匂いの先を追うようにと指示を出す。

 しかし、リングレットはなかなか動こうとはしない。


「行け、行くんだリングレット」


 再度しっかり力を込めて、リングレットに指示を出す。もちろん力を込めようが抜こうが出す指示の意味に違いなどないが、それでもリングレットは僕の気迫に押されるように離れた場所にいる三人、衣服の持ち主候補者達へ向かって駆け出した。

 三人の候補者は等間隔で横一列に並んでいる。リングレットはその中から右端の人物に近づいた。


「──っ!」


 反射的に犬笛を吹いた。リングレットに聞こえるかどうかという距離だったが、幸い訓練どおりにリングレットは開きかけた口を引っ込めた。

 そう、リングレットは嗅覚訓練の時、いつも匂いの元と選択肢の全てを一度口に咥えていた。犬笛による制止の条件付けをしておいてよかった。候補者を噛んだとあればどういった評価を付けられるかわからない。

 ほっと安堵する僕にリングレットは再度その顔を僕に向ける。習慣通りのことができなくて混乱しているのだろうか、それとももう一度匂いの先を追うように指示が出るのを待っているのか。とりあえず後者の可能性を想定し、手振りで支持を出す。

 そこからは散々だった。正直この辺りは思い出したくもない。

リングレットが隣の候補者へ近づき、同じように咥えようとしたところを僕がそれを犬笛で止める。そして僕を見るリングレットに指示を出す。動き出したリングレットはまた隣の候補者へ近づき咥えようとし・・・・・・・・・。

 などということを延々と繰り返して、リングレットは候補者の前をうろうろと動き、僕は何度も犬笛と手振りを交互に行い、そうこうしているうちにいつの間にか試験の規定時間が終了していた。


「ここまで」


 審判員が言葉の後に笛を鳴らす。


「えっ・・・・・・。」


 甲高い笛の音に当てられたようにリングレットは動くのをやめ、僕もまた動けなくなった。

 笛は止む。試験は終わる。

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