第11話 バランスボール

ネット通販に記載されていた赤いバランスボールを男はじっと見つめていた。


膨らませて上に座りバランスをとるだけで運動になるということに前々から疑問に思ったのである。


男自身、ミニマリストであったが、我慢できず気づいたらワンクリックで買ってしまった。


自宅に配達された箱を嘗め回しながら見た後、恐る恐る箱を開ける。


触れてはならぬと言いたげに、きちんと扇形に畳まれ、包装用の透明な袋に入れられていた。


「テレビとか暖房器具とかの方が良かったのかもしれない。」


彼女もいない一室で、男はぽつりとさみしそうに言った。


早速膨らませて腰かけてみたところ、バランスを崩して頭を壁にぶつけてしまった。


「どこがバランスボールなんだ!バランスがとりづらいじゃないか!」


バランスボールの意義を理解していない男は、ふてくされてしまった。


しかし、再びその赤い球に体を向け、一つのことを考え始めた。


(バランスを私がとるべきなのか、それともバランスボール自身がバランスを取っているのだろうか。)


球が神々しく光り始めた。


それに引き寄せられ、男はバランスボールの上に乗った。


今度はこけることはなかった。


そんなことを考え続けながらボールの上に乗り、30年経過した。


私はどんなことにも物怖じしない性格となった。


気づけば私は、バランスボールこそ地球なのだという真実に至ったのだ。

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