第5話 土管
俺がこの町を離れている間、ある程度工事や人の入れ替わりなどで、結構町中も変わったみたいだ。
近所の空き地に行ってみたが、日常漫画に出てくるような土管のある空き地はもうなかった。
空き地にあった土管は、撤去され業者が勝手に廃棄していった粗大ごみなどはどこにも見当たらない。
なんだか悲しくなった。
「あれ、隆じゃん!」
急に呼びかけられて、驚いてしまったが、落ち着いて後ろを見ると、小学生の頃によく遊んだ信二だった。
「久し振りだね。今何してんの?」
しばらく、信二と立ち話をすることになった。
小学生の頃にどんな遊びをしたとか、昔この町であった出来事なんかを話したとか、20代なのにおっさん臭そうな会話をした。
「そいえば、小学生の頃によくかくれんぼをしたけど、信二だけ見つからなかったんだよな。お前かくれんぼのプロだろ。」
「ああ……、そうだったね……。」
歯切れが悪そうだった。
気づいたら辺りは、真っ暗になっていた。
そんなに会話してたのか。
「俺もう帰るね隆。」
「ああ、じゃあまた。」
俺も帰るかと思い、空き地から出ようとしたら、いきなり「隆。」と声を掛けられた。
ほんとそういうのやめて心臓に悪いから。
そんな俺の気持ちなど微塵も感じずに、信二は続けてこう言った。
「俺は今も土管に隠れてるんだよ。」
すると、みるみる信二の身体全体の皮膚は薄くなり白骨の部分が剥き出しになり、着ていた服もろとも粉々に砕け散った。
あの光景は今でも覚えてる。
こいつの声がなんとなく、トンネルの壁に反響したような声だったということも。
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