第2話 自転車

「そろそろ新しい自転車買おうかな?」


古くなった自転車を見ながらそんなことを考えているときだった。


突然、自転車の前輪部分がくいっと左を向いたのだ。


単にそこが傾斜だったから動いただけなんじゃないかとも思った。


すると今度は前輪部分が右を向いたのである。


なんとなく犬の動きに似ていた。


まあギアは壊れてないんだし、もう少し乗ってみてガタが来たら他のにすればいいかと思い、私は近くの河川敷にサイクリングに行くことに決めた。


自転車に跨るといきなりバイク並の速さで動き始めて、目の前の壁に激突しそうになった。


けど、すぐにターンして、そのまま道路に飛び出た。


いや、普通に危ないわ。


ペダル漕いでないのになにこれ。


女の私でも驚くわ。


電動自転車かこれは。


なんてことを考えてると、自転車は私を乗せたままビョンと空を飛び、河川敷の方へと進んでいった。


なにこの絵本ののような世界観すごすぎるわ。


サイクリングから帰ってきた後に、この自転車どうしようか悩んだ。


「まあ、普通の自転車の方がいいんだけどね、私。」


ほんの数十秒で答えは決まった。


自転車は茫然としていたようだった。


というか無機物なのだから感情があるのかどうか分からないけど。


――――


次の日、私はその自転車を粗大ごみ置き場に出しに行った。


けど、気づいたら家の前に戻ってた。


「あんたやっぱり犬だね。」

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