第10話 疑問、その一


 ウルスラはオアシスギルドから恨みを買っている。

 ので、仕方なく俺の攻撃でボロボロになったウルスラの船に乗り込む事に。

 そこで一休みだ。

 そして、思い出した事について考察する。

 俺は魔法無効のスキル持ち。

 なのに、何故あの魔王の魔力が流し込まれた時にそれが発動しなかったのか。

 

 ――単なる魔力の流れに魔法無効は通用しません。


 ミケの回答。

 それはつまり俺の開放リベレーションでも同じじゃないのだろうか。

 魔力による衝撃波。

 ウルスラにダメージは通っていたはずだ。


 ――彼女の体力が無駄に多いのかと


 ミケは便利だなぁ……。

 ふむ、ウルスラ、重力制御に魔法無効、莫大な体力。

 俺より遥かにチートだ。

 

 ――すみません。


 ? どうしてミケが謝る。


 ――私の神通力が足りないばかりに、きっとウルスラという転生者を送り出したのは本当の神のような存在です。


 ……なるほど、まあ、どっちにしろミケの謝る事じゃないな。


 ――え?


 俺は転生させてくれただけで感謝してる。ありがとう。


 ――いえ。


 そっけないなぁ。さて少し眠くなって来たし……寝ようかな。

 ウルスラに船内を案内され、比較的無事な船室へと通され、そこのベッドで眠る。

 寝心地は……三十五点。


 夢の中。

 そこに居たのは三色髪で十二単の少女。


「ミケ?」

「すいません、私のせいで」

「謝るなって。転生させてもらっただけ感謝してるよ」

「いえ、私が設定を間違えたえせいで」

「設定?」


 俺は首を傾げる。


「はい、魔王の幼女裁判に負けてしまった」

「……そういえば」


 ああいう言動にしたのはミケだったか。

 言動で一点負け、魔力ので二点負けだったな。


「どうしてあんな性格に」

「あなたの理想に合うように」

「……理想?」


 スッと差し出される薄い本。

 そう、薄い本。

 男がお世話になる薄い本。

 そこには「メスガキわからせる」の文字。

 俺はそれをミケから引っ手繰ると。


「人ん家から勝手に!?」

「ご家族にバレたらお嫌かと思って」

「そこはありがとうございます!」


 しかし、これの、その、女の子側を理想と受け取られた訳か。

 いや男側にされても困るが。

 もっと、その、なんだ。

 少年漫画の主人公とかでも良かったんじゃないか。

 本棚には有ったはずだ。

 いや確かにキャラメイク出来るゲームとかじゃ女の子にしてる。

 幼い女の子にしてる。

 画面の前リアルじゃモンスター相手に煽りまくりだ。

 大きな武器を持つギャップに萌えてるのはミケと会った時に言った通りだ。

 これが、俺の理想。

 わからされるとこまで再現しなくても……。

 ……まあいい。

 いいんだもう。終わった事だ。

 ミケにそう伝える。


「え、でも」

「他にも聞きたい事は山ほどある」

「なんでしょう」

「ミケがウルスラのステータスが分かるのは何でだ?」

「転生者のステータスは薄っすらですが透けて見えるのです」

「それも神通力か」

「はい」


 これはアドバンテージだと思った方がいい。

 そもそもの疑問を聞く。


「どうしてこうやってミケと会話出来る?」

「別に私と断絶した訳ではありません。この世界はローリガルドと地球。その境界なのです」


 なるほど。この夢は境界に入り込んでいるって事か。

 そしていつも境界と混じっているのが俺……もとい転生者。

 これはアドバンテージだ。使わない手はない。


「これからはもっと情報をくれないか?」

「神通力にも限界があるのです。確約は出来ません」

「それでも構わない。これは重要な事だ」

「分かりました。出来るだけの事はしましょう」


 よし、これでローリガルドを俯瞰で眺めるような情報を手に入れたに近い。

 他の強力な転生者を見つけ、仲間に入れて、対魔王連盟を作るのだ。

 イカルガ、ウルスラだけでも強力だが、まだ足りない。

 あの魔王を倒すためにはもっと幼女の力が居る。

 やるぞ!

 すると世界が明るくなる。


「そろそろ夜明けです」

「もうそんな時間か。またなミケ」

「ええ、また」


 俺はミケと別れ、目覚めた。

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