第9話 女王会談、おっぱい談義。
「問おう、おっぱいとはなんだ」
錨を担いで降りて来た砂賊の女王はそんな事を言う。
立派なモノをお持ちですねとでも言えばいいのか。
サラシを巻いただけの上半身にダメージジーンズ。
眼帯を付けているのは海賊もとい砂賊アピールか?
「えと、きゅうになぁに?」
とりあえず真意を問おう。
と思って聞いたのだが――
「ふん」
錨が振るわれる。
俺は咄嗟にそれを
すると、俺の身体が浮きあがった。
「!?」
「もう一度聞こう。おっぱいとはなんだ?」
「え、えーと……女の子のチャームポイント……かなっ☆」
我ながら苦しい。というかこのジェンダー論が叫ばれる時代でこの発言はいかがなものか。
異世界だからいっかー(思考放棄)
「下らん、胸なら男にもあるだろう」
いや、それ聞いて来たのお前ですけど!?
危うく口に出かけた。何が言いたいんだこいつ。
分からねぇ。そう思っていると、砂漠の女王はにやりと笑った。
「しかし面白い。その貧相な胸をチャームポイントとはな!」
「……カチーン、ちょーっと怒っちゃったぞぉ?」
俺は唱える。
「
衝撃波を空中から飛ばす。それは女王に直撃する。
しかし。
「ははっ! なかなか! その一撃に免じて我が名をとスキルを開帳しよう! 我が名はウルスラ! 重力を操る砂賊の族長なり! こい! デスワーム共!」
すると先ほどまで船を引っ張っていたミミズの化け物が現れる。
空中に固定された俺はどうする事も出来ない。
「さて、再び問おう。おっぱいとはなんだ」
「……」
「答えろ、さもなければデスワームの餌だ」
「……ど」
「ん?」
「感度」
俺は言った。
三十路童貞の俺は言った。
言ってやった。
おっぱいとは何か。
チャームポイントでもなければ大小でもない。
じゃあなんだ。
俺の桃色の脳細胞が導き出した答えは一つ。
感度。
エロい事しか思いつかなかった。
すると俺はふわりと地面に着地する。
ウルスラの重力制御が解けた……?
「……もう一回聞かせてもらえるか?」
「……感度」
「ぷっ! あはははははははは!!」
「!?」
「よもや、幼女からそんな言葉が聞けようとはな! お前は同志だ!」
受け入れられた!?
嘘だろ童貞!?
「そうだとも! おっぱいで重要なのは感度だ! 男女関係無く! イけるかどうかだ! せっかくの身体だ! 満喫しなくては!」
こ、こいつ狂ってる!
相当キてる!
幼女化の影響か、それとも魔王に魔力をぶち込まれた時か。
頭の回路がショートしたに違いない。
「どうだ幼女、お前も砂賊にならないか」
「おことわりするわ、あたしにはアリスって名前があるから」
「そうか残念だ。ならば――」
やっぱり戦うしかないのか……?
重力制御相手なんて勝てる気がしないぞ!?
その時だった。
「相棒! 無事か!? 砲撃が止んだと思ったのに、お前が帰って来ないから――ってウルスラ!? なんで砂賊の女王が下に降りて来てるんだ!?」
「ふむ、二対一か、面白い」
「ちからをかしてイカルガ。私達でウルスラを倒そう」
「えっ、えっ!?」
「おっぱい談義の礼だ、手加減はしてやる。下がれデスワーム」
地面に潜っていく化け物ミミズ達。
錨を構えるウルスラ、戦斧を構える俺、おろおろとしているイカルガ。
戦いが始まる。
「
衝撃波を飛ばす。
いなされる。
想定済み。
俺の狙いは地面の砂。
巻き上げてウルスラの視界を奪う。
そして。
「今だ! イカルガ!」
「えっ!? わ、分かった! 『
炎の弾がウルスラ目掛け飛ぶ、砂ぼこりを振り払うウルスラ、眼前に炎。
「面白い!」
爆発。
爆炎でウルスラが見えない。
「やったか!?」
「あ、ばか――」
そこには凶悪な笑顔のウルスラ。
サラシが燃えて大きな胸が露わになっている。
「あわわ、隠した方がいいですよ……!?」
「隠すほど恥ずかしいものは持っていない!」
そんな事は誰も言ってねぇ!?
しかしサラシまではダメージは通った。
これはチャンスはある。
もう一度、もう一度、イカルガとコンビネーション攻撃を繰り出す隙さえあれば。
「今度はこちらからだ!」
迫るウルスラ。戦斧と錨がぶつかり合う。
――今だ!
「
超至近距離からの解放。その衝撃波は確実に届くはず!
そしてイカルガにアイコンタクトする。
今度こそ意を酌んでくれたイカルガが呪文を詠唱する。
『
電撃が宙を走る。
それはウルスラを捉えた!
しかし、ウルスラは仁王立ちしたまま。
「お見事」
そう言って笑った。
……どういう事だ。
今、攻撃は当たったはず。
「ああ、私が無傷な事が不思議なのか。なに魔王様の魔力を注入された時に得たスキルでな。俺に魔法は通じん」
俺と同じ魔法無効型!?
クソッ!? なんでその想定をしてなかった!
いや待て、そうだ俺だって魔法無効のスキルを持ってるはずだ。
なんでウルスラの重力制御は俺に届いた?
仕方ないから聞いてみる事にする。
「ウルスラさんの重力制御ってまほうじゃないんですかぁ?」
「ん? そうか、さてはお前も魔法無効型だな? だからそんな疑問が出た」
「うっ」
図星である。だが話を促す。
「だがいいだろう。一撃、いや二撃入れたその功績に免じて教えてやる。俺は魔法無効型のモンスターなどに対処するために基本的に重力制御は対象を含む空間に行うようにしている」
対象を含む空間……つまり、俺以外の空気やら地面やらに重力制御が効いて、俺が巻き込まれたって事か?
なんか難しくなって来たぞ……。
「えっとウルスラさん。まだつづけますか?」
恐る恐る聞いてみる。
「いや、満足した。問答にも、戦いにも」
「え、じゃあ」
「ああ、これ以降もうこのオアシスを襲うのは止めようじゃないか」
「や、やったー!」
「やったぜ相棒! あのウルスラを打ち負かしやがった! いや俺達か! すげーな俺達!」
さすがに今は
雑魚と相手を煽る気にもならない。いやなれない。
何故なら相手は無傷だから。
「それに、そろそろ反逆の時かと思っていたんでな」
「はんぎゃく?」
「ああ、魔王様……いや魔王へのな」
「!」
つまり、それは。
「どうだ、アリスと言ったな。俺をパーティに入れないか?」
こうして三人目の幼女、半裸のおっぱい、ウルスラが仲間になった……?
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