第6話 オアシスギルドにて、仲間現る。


 砂漠のど真ん中、仕方なく俺は。


感知サーチ


 魔力感知でとりあえず探せるものを探す、モンスターでもなんでもいいから、生体反応が欲しい。


 すると魔力が集中している場所を見つける、そんなに遠くない、しかも。


「この反応、モンスターじゃない……?」


 どうやら魔力にも匂いがあるらしい、これは恐らく人のものだった。


「人が集まってる! やたっ!」


 俺は筋力EXを活かした脚力で、そこへ向かった。

 砂漠は足が取られる、思ったより疲れた。

 魔力感知であらかじめモンスターの位置も把握している。

 今日は避けて進もう。

 一面の砂地。途方に暮れそうになる時、遠くに緑を見つける。


「蜃気楼とかじゃないよね……?」


 見つけるはオアシス、その一帯に広がる街並み。

 オアシスの周りに発展した町のようだった。

 俺は水を求めて町に乗り込む。

 すると――


「幼女様だ!」

「幼女様! ささっ、オアシスギルドにお越し下さい! キンキンに冷えたサボテン水をどうぞ!」


 オアシスギルド? サボテン水? なんのこっちゃ分からんが。

 歓迎ムードなのは良い事だ。ありがたく案内されよう。

 そうして住民に連れてこられたのは宮殿のような建物。

 明らかに日本語ではない文字だが、今の俺には読めた。


『オアシスギルド・憩いの水源』


 と書いてあった。

 そもそもギルドって何するところなんだ。

 俺が見てたアニメじゃ冒険者登録とかするとこだったが。

 よくよく考えると謎組織だ。自分の知識不足を痛感する。


「ささっ、中へとお入りください幼女様」

「えっとあたし、アリスって言うの! よろしくね?」

「おっと失礼、アリス様、オアシスギルドはあなたを歓迎しますよ」


 そう言って中に通される。

 中はTHE酒場って感じだった。

 しかし俺が入って来た途端に空気が変わる。

 

「幼女様だ……!」

「やっと来た!」

「幼女様が来ればもう安心だ!」


 安心? どういう意味だ?


「この方はアリスと仰るそうだ、さっそくサボテン水を出して差し上げろ」


 このおっさん良い人だなと思いつつ、空いてる席につく。疲れた。


「あのー、ここって何するところなんです?」

「おや、もしかしてアリス様はまだローリガルドに来て日が浅い?」

「というかほぼ今日、召喚されたばかり……」

「それはそれは! 大変でしたな! しかし、この砂漠の近くには幼女召喚神殿は無いはず、失礼ですがどちらから?」

「どちら……? えっと、村、ですけど」


 そういえばあの村の名前も知らなかった。


「もしかしてスターティアの村ですかな、いきなりモンスターの殲滅を命じられませんでしたか」

「あ、はい、そうです」

「あそこは悪名高いところです。幼女様を戦闘兵器にしか思っていない」

「へ、へぇ」

「モンスターの殲滅に失敗して追い出されでもしましたか?」

「いや、それが……魔王が現れて……」


 そこで空気が固まるのを感じた。

 なんか地雷を踏んだっぽい。


「まさか幼女裁判を?」

「……はい」

「合否は」

「不合格……」


 ギルドにいる全員が溜め息を吐いた。

 なんかマズい事を言っただろうか。


「死刑を受けていないという事はチャンスはあるでしょうが、しかし、厳しいですね」

「えっえっ」 


 サボテン水が運ばれてくる。

 思わず手が伸びる。飲み干す俺、喉が渇いていたのだ。


「ぷはっ!」

「……アリス様、適性検査を受けていただけますか」

「てきせいけんさ?」


 ギルドの奥へと通される、石造りの受付。丸い水晶のようななんらかの装置。


「ここに手をかざして下さい」

「……はぁい」


 不承不承と言った感じでおっさんの言う通りにする。

 すると俺のステータスが水晶に映し出される。

 筋力以外はD+ 筋力はEX。魔力感知に開放。レベルは3。そして。


嗜虐的な殺戮者サディスティックマーダー


 の文字。

 おっさんが頭を抱える。


「不合格の理由はこれですか……」

「えっえっ?」

「あなたには少し嗜虐心が強すぎる気があるようだ」


 否定は出来ない、戦闘になると何故か性格が変わってしまうのだ。

 モンスターの尊厳を踏みにじり、否定したくなる。ゾクゾクとする感覚を止められない。


「いいじゃねぇか! モンスターをボコボコにしてこそ冒険者だろうが!」


 酒場から声が届く、そこから現れたのは胸にさらしを巻いて、サルエルパンツを着込んだ小さな体躯の少女。


「ロリ……?」

「如何にも! 天然モノの幼女様だ!」

「イカルガ、お前は調子に乗り過ぎだ」


 天然モノとはどういう意味だろうか。

 聞いてみた。


「召喚された幼女様は基本的に不老です。しかしこの世界で生まれた少女は歳を取る。そういう事です」


 ……なるほど、つまりこの世界で生まれた幼女がこのイカルガという訳だ、赤ん坊から育ち今に至ると。

 

「なぁ、アリスって言ったか? 俺とパーティを組まねぇか? 俺とアンタなら良いコンビになれるぜきっと!」


 ……むぅ、一人旅は寂しかったところだ。願ったり叶ったりのところはある。


「じゃあ、お願い出来るかなっ!」

「そうこなくっちゃ!」

「これイカルガ!」


 おっさんの咎めも聞かず、俺とイカルガはギルドにパーティ申請をした。

 その時、ちらっと見えたイカルガのステータス欄には大量の魔法が並んでいたのだった。

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