第3話 対スライム、戦斧開放


 森を進む俺は気づいてしまう。

 今の俺は筋力EX、先ほどのオーク戦で防御力も筋力にカウントされている事が分かった。

 しかし、だがしかしだ。

 そもそも物理無効の敵とか出てきたらどうする?

 そう例えば――


「じゅるじゅる」

「そうそう、こういうスライムとか……ってスライム!?」


 なんでこんなところにスライムが!?

 モンスターいすぎだろこの森!?

 俺は可愛い声で驚きながら、戦斧を構える。

 どうする俺……どうする……! 一発殴ってみるか!?

 戦斧を振るう、スライムに叩き付ける。

 しかし、びちゃあ、と飛び散ったスライムは、すぐさまぎゅるんと再生してしまった。


「あ、あはは、おにーさん? おねーさん? つよいね! なぁんて……」


 言ってる場合ではない。このままだとヤバい。


「じゅるじゅる」


 スライムが纏わりついてくる! 嫌だ気持ち悪い!

 いくら今の俺は可愛い幼女だと言ってもスライムに組み付かれるなどごめんだ!

 そういうのは二次元の中だけにしてくれ!

 そんな時だった。

 俺の脳内に声が響いた。


 ――聞こえますか田中さん。


 それはミケの声だった。

 俺をローリガルドに送り出した猫又。

 これはきっと助け船に違いない!


 ――このメッセージが再生されているという事はきっと戦斧のでは倒せない相手と対峙してしまったのでしょう。これはそういう時のための保険です。まあ、私の説明不足でもあるのですが。


 いや、そういうのいいから早く教えてくれない!?

 早くしないと足から這い上がってきたスライムが大事な所に!


 ――えー、血の戦斧ブラッディアックスには『開放』というスキルがついています。

 それまでに蓄えた血を一気に開放しに変えるシステムです。


 おお! まさに今にうってつけ!

 で、どう使うのそれ。


 ――方式としましては、吸い込んだ血を魔力に変換しエネルギー波として放出する仕組みとなっています。呪文と違い、自分の魔力を消費しないのがいいところですね。


 い、いいから使い方! はよ! はよ!


 ――ああ、そうそう使い方ですが、開放リベレーション! と唱えるだけでいいです。説明はこんなところでしょうか。

 では良き冒険ライフを。


 ええい、ままよ!


開放リベレーション!」


 すると血の戦斧が赤く発光する。

 吹き飛ぶスライム、いやするスライム。

 衝撃波は魔力を伴って、辺りに伝播していった。

 辺りの木々をなぎ倒し、草を吹き飛ばし、辺りを更地にしてしまう。


「すごい威力……」


 これでどれだけ血を使ったのだろうか。

 もしこれでビッグボア一匹分とかだったらめっちゃコスパいいのだが。

 幸い、まだ血の戦斧は輝きを失っていない。

 ちょっと試してみよう。


開放リベレーション!」


 あちらこちらでスライムを探し(というか多いなスライム)開放を試していく。

 吹き飛び蒸発するスライム。


「あはっ! ざぁこざぁこ♡」


 楽しくなって来た!

 血の戦斧は輝きを失わない。

 疑問に思っていると。


 ――あーあー、テステス、言い忘れてました。

 血の戦斧は一度吸った血を失う事はありません。

 永久保存です。一度、血を吸えば貯め込む魔力は最大値ごとMAXで増えていきます。

 そこんとこよろしくです。


 なんだその神武器!? チートじゃないか!

 いや最初に物理無効に当たってたら死んでたけど。

 とにかく最高だ。

 血を吸わせまくって最強になろう。そうしよう。

 俺はそう決意して、この無駄に広い森の奥へとさらに歩を進めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る