第2話 オークの群れを煽る俺。
ビッグボアを倒した俺はそのまま意気揚々と森の中を突き進む。
薄暗い森の中、少し開けた場所に出る。
「なんだろう、ここ?」
幼女らしく幼女らしくと言葉づかいに気を付ける。
誰が見てるかもわからないのだ。
どうやらそこは何かの集落らしかった。
簡素な家らしき藁の束が並んでいる。
そこからヌッと現れる緑色の肌をした豚顔の二足歩行生物。
(オークか……!)
どうやらここはオークの集落らしかった。
木の棍棒を持ったオークが一匹、集落を見回っている。
(一匹だけなら殺れるか?)
多勢に無勢は避けたいところだ。ここは各個撃破と行きたい。
俺は身を屈めて、オークに忍び寄る。
「貰った――」
小声が漏れる。すると。
「誰だぁ!?」
オークが振り返る、そのまま戦斧は棍棒に防がれてしまう。
「しまった、声が漏れちゃった……」
てへっといった感じで誤魔化す俺。
オークは俺を見て。
「げぇ、ロリ!?」
「げぇってなによオークのおじさーん、こんな可愛い子捕まえてー」
「クソ、急いで仲間を呼ばねぇと――」
「させないぞ☆」
俺は戦斧を振るう、今度は棍棒で防がれなどしない。
さっきは不意打ちのつもりで全力が出せなかった。
だけど今回は真正面からの大切断。
仕留めてみせる。
オークの防御態勢。しかし――
「うりゃ☆」
今度は棍棒ごと叩き切った。オークから血飛沫が舞う。
「グハァ!? いてぇ!?」
「あはっ! オークのおじさんざこーい♡ そんなんじゃあたしに勝てないよー、仲間も呼べないよー?」
「く……クソが……」
「それともあれかなー? あたしのために手加減してくれたのかなー? ありがとー!」
倒れ込むオーク。俺はそれを踏みつけにする。
ぐりぐりと頭を足で踏みにじる。
「ねぇ、今どんな気持ち? どんな気持ち?」
この煽り文句をリアルに使う時が来るとは。
「クソ幼女が……! 調子に乗るなよ!」
「あはっ! そうでなくちゃ!」
血を吸った
片や相手は叩き切られた棍棒、実質武器無し。
徒手空拳でこちらに挑む事になる。
戦斧を振り回す俺、意味はないかっこつけだ。
しかしオークはすっかり怯えている。
「――しゃらくせぇ!」
オークの突進。戦斧を振り下ろそうとした時。
俺の
「……?」
一瞬の痛み、なんだ今の。
疑問も束の間、オークがにやりと笑う。
「俺のスキル『フェイント』だ。効いたろ?」
俺もにやりと笑う。
「ぜーんぜん☆」
俺はオークの無駄に太った腹を掻っ捌いた。
血を吸う戦斧。脈動するそれは不気味に輝く。
「オークの癖にスキルがフェイントとかだっさーい! もっとパワー系で攻めなよー」
俺はオークの最後の抵抗をそうやって笑い飛ばした。
オークは歯噛みしながら。
「どうしていつもお前ら幼女はそこまで力を持っている……俺らが百人居てやっと一人倒せるか倒せないかだ……いつもいつも!」
「結構、戦闘経験あるみたいだねー? でもその言い方だと負け続け逃げ続けだったのかなー? だっさーい!」
俺は今、人生を謳歌していた。弱者を踏みにじる。そんな快感に溺れていた。
「クソがクソがクソがーー!!」
「今、楽にしてあげるね?」
首を刎ね飛ばす。血飛沫は戦斧に吸わせる。
まずは一匹、しかし、あの神殿の老人の依頼は殲滅だ。
藁の家の中に入り込む、幸い中には誰もいない。
(……子供のオークとか居んのかな)
それを手にかけるのはちょっと心苦しい気もしたが、まあ今更だ。
一匹二匹、個体差などもう関係ないと割り切ろう。
しばらく藁の家の中で待っているとガヤガヤとした声が聞こえて来る。
「今日は大量だったんじゃないか!?」
「ああ! 大の男一人に女が二人だ!」
ボロボロになった男女三名がオーク三匹に引きずられている。
まだ生きてはいるようだ。助けなければ。
しかし三匹か……行けるか?
そんな疑問が浮かぶ。
血の戦斧に蓄えた血はビッグボアとオークそれぞれ一匹分。
足りるだろうか。その時だった。
「さっそく男の方は食べちまうか、腹減って仕方ねぇよ」
「いいな、俺には足を寄越せ」
「俺は頭がいい」
ええい、どうにでもなれだ。やるしかない。
俺は藁の家から飛び出す。戦斧を振るう。
オークの一匹の首目掛けてた不意打ちは成功した。
今度は声を出すようなミスはしなかった。
オークは無言のまま死んでいった。
血飛沫を戦斧に吸収させる事を忘れてはいけない。
「なんだお前って――」
「――幼女!?」
「大正義、幼女ちゃんだよ! これから死ぬオークのおじさんに名前は覚えてもらわなくていいよね☆」
男女を引きずっていたオークの腕を刎ね飛ばす。心なしかさっきより身体が軽い。
いや違う。戦斧が軽いのだ。
血を吸った分だけ性能が良くなるとはこの事か。
開放された男女を逃がしてやる。
「さぁ逃げて! お兄さんお姉さん!」
「ああ、ありがとうございます……幼女様」
その場から離れていく男女三人組。
「ああ、餌と性奴隷が!」
「うわぁ、ドン引き」
「お前、許さねぇからなぁ!」
戦斧を振り回す、またもやかっこつけである。無駄な動きが多い。
しかし、それでオークはビビるのだからチョロい。
「ビビっちゃってかわいいー」
「舐めやがって……」
「いくぞ兄弟! 『クロスアタック』だ!」
オークが俺を挟み込むように棍棒を構えて突進してくる。
おっと? ちょっとまずいかもしれない?
しかし――
「とおっ」
跳躍、上空にその突進を躱す。オークは突然の事に対処できない。
互いに激突するオーク達。
「クロスアタックが――」
「――失敗したぁ!?」
「ださぁい☆ もっと頑張って♡」
戦斧を空中から振り下ろす。
オークの一匹の脳天をかち割って脳漿をぶちまけた。
「あはっ! オークにもちゃんと脳みそってあったんだね!」
なんだろう、この感覚、煽る感覚が身に染み付いている。
子供ながらの嗜虐心か。それとも俺の本質か。
そんな事を思いながら残りの一匹と対峙する。
「さて、もうお仲間はいないのかな?」
「幼女……もう降参だ……許してくれ……」
「えー? もう? でもでもー、私、この森のモンスターを殲滅しろって言われちゃってるんだよねー」
「ここから出て行く! だから!」
「ふーん、なるほどね。そうやって言い訳して、今まで幼女から逃げて、逃げた先でまた人を襲ってたんだ」
無言になるオーク。図星のようだった。
「じゃあもう死刑だよね☆」
「や、やめ――」
「じゃあね、ざぁこ♡」
一撃で殺すには首を刎ねるに限る。
血飛沫は俺にはかからず、すべて戦斧が吸い取った。
「まだモンスターって居るのかなぁ、ちょっと面倒くさくなって来たぞう」
手持ち無沙汰に戦斧を振り回す。
俺は森の奥へと進んでいった。
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