5
夕顔は紫陽花を引き摺りながら、私たちを屋上へと案内した。
そして、屋上へ出るとがちゃりと扉に鍵をかける。
「ここならええやろ?」
私はその言葉に無言で頷くと、一歩前へと進み、両腕を体の前へと構え、膝を軽くまげ、深く呼吸し丹田へと力を込めた。
「ふへっ、空手け……おもろいわ……行けっ、紫陽花っ!!」
夕顔は握っていた紫陽花の襟首から手を離すと、紫陽花がまるで解き放たれた矢の様な勢いで私の方へと向かってきた。
疾いっ!!
先程の夕顔よりも疾いっ!!私の右側頭部に針の様に鋭く尖った殺気が突き抜けて行く。
咄嗟に両手をクロスしで右側頭部をガードした。骨と骨のぶつかり合う音が響く。なんという重たい蹴り。ガードしていなかったら一撃で持っていかれる所だった。
その後も紫陽花は攻撃の手を休めない。私は防戦一方になりながらも彼女の隙を伺っている。しかし、彼女は隙を見せるどころか、一体いつ呼吸をするのだろうかと思うくらいに動きが止まらない。
攻撃は最大の防御。
そんな言葉を聞いた事がある。まさに彼女の攻撃はそれであった。
じりじりと後退していく私に、容赦なく連撃を浴びせてくる。だが、最初の蹴りの一撃以外は、数こそ凄いがそう重たくもない。
彼女が突きを放つ。私はその突きを狙っていた。その突きの動きに合わせ、彼女へ渾身の一撃である正拳突きを入れた。いわゆるカウンターである。
来る日も来る日も鍛錬し続けた正拳突き。
その鍛錬はこの正拳突きを私の必殺技へと昇華させていた。紫陽花の拳が私に触れるか触れないかのところで、私の正拳突きが彼女の鳩尾を貫いた。
紫陽花が数メートル後ろへと飛ばされる。しかし、私の渾身の正拳突きが鳩尾を貫いたのにも関わらず、膝をつくまいと堪えていた。手応えはあった。これ以上ない位の正拳突きだった。美しいその顔の口から無様に涎を垂らし呼吸もままならなず、足はがたがたと震え立っているのがやっとの状態であった。
それでも倒れまいと堪えている。
しかし、そんな
私は紫陽花へと詰め寄り、下がっている側頭部へ上段回し蹴りを放った。美しい半円を描き、その頭蓋骨を粉砕する勢いで……
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