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「黒猫……猫ヶ原凛の事や」


 やっぱりこの二人は凛の信者ファンの人達。実力行使してきたと言う事は、もしかしたら『黒猫を愛でる会』なのかな?そして、私へ凛に近付くなと警告しに来たのだろう。


 だけど、凛は私がこの女学校に入学して初めての友達なんだ。そう簡単に引き下がる事は出来ない。引き下がったら凛も悲しむ。


 そんな事を考えている私の方へ紫陽花が近づき、私の肩に手を掛けようとしてきた。


 ……その瞬間


 私は彼女の手首を掴み相手の懐へと入り込むと同時に投げた。


 一本背負い。


 これ以上なく綺麗に決まった。床に叩きつけられ目を回している紫陽花。私はぎろりと夕顔を睨む。先手必勝。


「……えぇっ!!」


 突然、妹が投げられ驚きを隠せない夕顔に私は警戒を解かず、一歩近づいた。


「なんしとんの!?私らは黒猫の事を少し……」


 慌ててそう言う夕顔は、それでも警戒を解かない私を見ていたが、すっとその表情が変わった。


「そか……ならやるか」


 今までの雰囲気と変わった。トイレの洗面所に張り詰めた空気が流れていく。


 隙がない。


 まさかお嬢様達が集まるこの女学校に、こんな気を発する女の子がいるなんて。


 私の額に一筋の汗が流れ落ちていく。


「油断しとったとはいえ、紫陽花を倒した腕はほんもんやろからな」


 夕顔はぼそりとそう言うと、とんっと軽く地面を蹴った。


 思った以上の速さだった。あっという間に間合いを詰められた私は寸での所を半身で躱すと、逆に無防備となっている夕顔のがら空きのボディーへ天を突く膝蹴りをお見舞いしようとした時だ。


 にやりと笑う夕顔。それを常人とは思えない身のこなしで躱すと私は夕顔に背後を取られた。


「取ったでぇ」


 ぞくりとしたものが背中を伝い流れ落ちていくと同時に、夕顔の手が私の首筋に触れる。

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