ケルベロス
1
あの日から私と凛は毎日中庭で昼食を食べる事が日課となった。凛のお弁当は相変わらず三段重ねのお重箱で、中身はほとんど……と言うか全てが肉料理。それをあっという間に食べてしまう。一体、あの体の何処に吸収されているのか……胸か……あのたわわなおっぱいか……
そんな私達の日課が、女学校中に波紋を拡げている事なんて、つい先日まで知らなかった。
なんでも凛は中等部まで一人で過ごす事が多く、また、秀外恵中、才色兼備、まさに立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言う言葉がぴったりで、一部の生徒達から『黒猫姫』と呼ばれ慕われ、その中でも熱烈な彼女の
その黒猫姫こと猫ヶ原凛が高校に進んだ途端、高校入学組の一般生徒であり、特に美少女でもなく、普通の容姿の生徒である華小路櫻子、そう私と毎日、中庭で仲良くお弁当を食べているではないか。
そんなこんなで私は一気に女学校中の注目の的となってしまっていた。しかも、中等部の生徒達まで偵察に来る事がある。
しかし、凛はそんな事などどこ吹く風と言う様に、昼食時だけではなく、教室を移動する時や体育の時間、はたまた、トイレに行く時まで私とぴたりと横に並んで共に行動している。
柱の影、教室の窓、中庭の木の後ろ……
色んなところから私達は見られていた。
とある日の事である。
私は凛とではなく珍しく一人でトイレに行き、洗面所で手を洗っている時だった。
「やいやいやいやいやいっ!!そこのお前っ!!」
後ろから大きな声が聞こえてきた。ちらりと両隣を見たけど誰もいない。そして、鏡で後ろを確認するとショートカットの女の子が私を指さしているではないか。
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