第十二話 揺れ動く思い

翌朝。




病院の窓ガラスから鳥の鳴き声が聞こえる。


いつもと変わり映えしない景色、朝の明るさが加速度を増して広がる。




俺は、ふと目を開けた途端一人の少女が病室のベッドで眠っていた。




「そうか…俺は肝試しが終わったまま眠ってしまったんだな」




と小言を呟くと、彼女星川遥が今にも動き出しそうだった。




幸い、彼女は疲れているようで、魘されており暫くは起きなさそうだった。




彼女の様子を見ると、目を瞑ったまま眠っている。


普段はちょっかいをしているのに、大人しく眠っていてなんだか調子が狂う。




彼女の肌はぷっくりとしていて、色白の透き通った肌だ。


子猫のように愛くるしい顔で、すやすやと眠っている。眠っているのだが、何かを言っているようだった。




「ゆ...くん」




「え...?」




まさかな...見覚えのある声だけど星川は別だ。彼女は星川ではない、誤解してはならない。


決して、あ・い・つ・ではないのだから。




それとなく、まじまじと彼女の顔を見ていると、俺の存在に流石に気付いたようで


突然彼女は言い放った。




「ねぇ、陰キャオタク君...ナニを見ているの?」




「何も見てねぇよ...何か俺に用があるのか?」




「用があるのか?...じゃないわよ!!私達、あのまま眠ってしまったのよ」




「みたいだな...って、星川さ、体の具合とかどうなんだ。調子は?」




「頭の痛みが少し残っていて、ズキズキするくらいかな。。なんだか、過去の記憶とかがフラッシュバックして一向に思い出せないのよね」




「そうか...あまり無理すんなよ。休む時は休むんだぞ、体が資本だからな。」




「ありがとう、、、って別に陰キャオタク君に感謝することでもないけど?」




と彼女は顔を赤らめながらムスッとした表情を浮かべている。可愛くない奴だ。




「うるせーよ!!バーカ!!」




「馬鹿とは何よ。そこまで言わなくて良いんじゃないの?」




「あのなぁ...」




不毛な茶番のやりとりが一向に終わる気配がない。




時刻はもう正午を過ぎている。時間があっという間に過ぎていく、この茶番劇を早く終わらして欲しいと切に願う。




さっきから、何で俺は星川のことを気にしているのだろう。


あいつは、俺の為に指導していてくれるだけの存在なのに今まで湧いたことのない感情が湧き出ていつもと様子がおかしいと感じる。




色々と頭の中を張り巡らせながらも、彼女に見透かされないように俺はいつも通り演じていくのだ。


そう、彼女に気づかれないように今まで通りにな、そう俺は決心したのだった。




すると、彼女から突然こう言い放ったのだ。




「明日から、また指南書マニュアル通りに動くからね!覚悟しなさい!!それと、徐々に成果が出始めているからグレードを上げていくわ。さぁ、覚悟しなさい?」




何かを企むような顔で俺を煽ってくる。




「おう!!いいぜ、星川...かかってこい!!」




とは、言ったものの自信の欠片もないまま勢いで言ったようなものだ。


俺は根っからの負けず嫌いだからな。売られた喧嘩は対応するタイプだ。




果たして、俺はこの試練に耐えてハーレム生活を送ることが出来るのか...


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心を閉ざした陰キャオタクな俺が、金髪美少女と出会い学年一のイケメンになり恋をした話。 こげたま @kogetama

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