第十一話 地獄の肝試し(3)
「明里ちゃん、怪我は大丈夫?」
--浮かない表情を浮かべている明里に星川は声をかけた。
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
「着ている服、少し汚れているからよかったら使って」
「ありがとう、ハルちゃんはいつも優しいね」
「そうかな、私はハルちゃんが羨ましい。ハルちゃんと会ってから優君は少し笑うようになったし」
「そうなんだ、ボクは陰キャオタク君の過去の事情はさっぱり分からないや」
「そっか...あと、私ね...ハルちゃんに伝えたいことがあるの」
「うん、どうしたの?」
「私ね、優君がずっと前から好きなの。だから、協力してくれない?」
「えっ...」
「突然すぎるよね...ごめんね」
「大丈夫だよ、あかりんのお願いだもん。考えてみる!!」
「ありがとう、ハルちゃんは心強い!!」
「えへへー!! あかりんの為なら頑張る!!」
何だかよくわからない胸の痛みがあるが、彼女が喜ぶ笑顔を守れるなら何してもいいと星川は考えていたのだ。
「ハルちゃん、どうしたの?考えこんだ表情をして」
「うぅん、何でもない」
「そっか、よかった!!そういえば、優君大丈夫かな?」
「確かに、連絡も音沙汰ないよね…」
「私、ここで待っているからハルちゃん様子見てあげて」
「あかりんはそれで大丈夫なの?」
「私は大丈夫だよ!終わるの待ってるから」
「そかそか、わかった!じゃあ、行ってくる!」
「はーい!じゃあ、またね」
とは言ったものの、ズキズキする。この痛みが何なのかは分からない。
明里が優のことを好きだったという事実に愕然とし、肩を落としたまでであった。
「気にしない、気にしない…進むぞ!」
妙に空元気ではあるが私は優の元へと向かうのだった。
ーー今現在の時刻は21時半。
カラスの鳴き声や羽虫が飛び交う中、俺は歩いていたのだ?
何とか地図のルートの通り進んで、現在は4ヶ所目を終えたところである。
「段々、寒くなってくるし上着も忘れたからやっちまったなぁ」
そこまで向かうのにトラップが複数あったが、持ち前の運動神経が効いて上手く交わすことが出来た。
どちらかと言うと、反射神経に近いが日頃のゲームの成果がこの場で発揮出来たかもしれない。
暫く進んでいると、木々でふさがれておりどうやらこれらを掻き分けないと前には進めないらしい。
近くに掻き分ける道具もないし、本当に困った。
「どうっすかなぁ...」と途方に暮れていたら背後から少女のような声が聞こえた。
「陰キャオタク…君?」
星川に背中に手を置かれたのだ。
「ひぃぃぃぃ、頼む、成仏してくれ!!」
響くような声で泣き叫んだ。
「ひぃぃぃぃじゃないよ、ボクだよ!!」
「星川か、びっくりした…」
「びっくりしたじゃないよ、君を探しに来たの」
「それは助かった、最後のスタンプ探しているんだがどこにあるんだ」
「それはあっち!」
星川が指を刺す方向を見ると、崖を下った先だった。
「そんな場所、常人には無理だろ!」
「まあ、そうだね。あとは正面の木々を掻き分けるしかない」
「そうか…仕方ない、掻き分けてから向かうか。案内頼むぞ」
「わかった…」
俺達は何とか掻き分けながらも、どれくらい時間が経過したがわからないか向かうことにした。
不気味な声が聞こえるが、気にせず一目散に走って向かった。
その時、俺等は周りを見ておらず星川が勢い余って落とし穴に落ちてしまったのだ。
「いたっっっ…足捻った」
「星川は大丈夫か?えっ…怪我してるじゃん大丈夫か?」
「大丈夫、これくらい。私を置いて、先進んで!」
「馬鹿か、お前!怪我人がいるのに放っておけないだろ」
「最後の場所で君を脅かすつもりが失敗に終わっちゃった」
「そんなことはないだろ、この状況はまずいから…星川は携帯を持っていないか?」
「はい、あるよ…」
星川のスマホを渡された。
「いいか、星川。肝試しは中止にして今から家の電話番号を教えろ。わかったな」
「わかった...電話して訳を話せば自家用ヘリが目的地まで運んでくれるはず」
凄いのは分かるがそこまでブルジョワだと思っていなかったので逆に驚いているが…
俺は星川から尋ねた電話番号を入力し、訳を話した。
事態は終幕し、10分後にヘリが到着する模様。
「ったく、お前学校では優等生ヅラをしているのに意外とおっちょこちょいなんだな」
「ま、まぁ…」
星川は目を合わせようとせず、目を背けたままだった。
「どれどれ、傷を見せてみろ…」
「大したことないわよ、これくらい」
「結構、傷だらけだからな。気をつけろよ、本当に…」
「あ、ありがと…」
そうこうしていたら、ヘリが到着し俺たちは病院へと向かうのだった。
明里に電話で肝試しは中止、各自解散(?)とのことだけは告げた。
まだ、肝試しに参加している連中は星川寄りのSPが捜索してくれるそうだった。
俺達はこのまま病院に向かうのだった。
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