第十話 地獄の肝試し (2)

続々とクラスメイトがくじを引いていく中、俺の番がついに来た。


どうやら俺が一番最後らしい。何においても最後になる確率が高い、貧乏くじを引くのが俺なのか…


そんな事を考えながらも、俺は明里が箱を持つ場所へと重い足取りで向かった。


背後からクラスメイトの連中の視線が一気に俺に集中する。

心の中は既に帰りたい思いで一杯だが…


「優ちゃん、この中から一つ選んでね!」


「わーったよ!」


星川の言うままに恐る恐る箱の中から手を伸ばしくじを掬い上げる。


このような体験は、久々の感覚かもしれない。


小さい頃、家族と商店街のくじを引いた以来だ。


恐る恐る紙を捲ってみると、7番と記されていた。

番号を確認した俺は、同じ番号の人がいないかか暫し待つことにする。


そうこうしている間に、ペアが決まったようで星川の口が開いた。


「これで集まったね!それじゃあ、今からペアが誰か伝えるよ」


「1番赤いハートは瀬川さん、青いハートは鈴木くん。それじゃペアになった瞬間に地図を渡すから順番に目的地へと向かって!健闘を祈るよ」


「はい!分かりました」


ちなみにくじは数字が記されており、小さくハートマークやスペードの文字が記載されている。


色は分かりやすいように、赤が女子で男が青という仕組みらしい。


次々と順番に呼ばれるので呼ばれるまで待機することにした。


ようやく、俺の番になり星川からペアになる相手を告げられた。


「陰キャオタク君のペアはね、仲良しこよしの明里ちゃんだよー!」


「へー……ってか明里なのか!星川、明里は怖いの苦手なんだぞ!」


「あかりんは優君がいるから大丈夫だもんね!」


「ねー!」


「うん!優君がいるから大丈夫!」



明里は小さく微笑みを浮かべた。


「まー良いけど、星川なんとかならんのか。明里が可哀想だぞ」



「おやおや、明里ちゃんのこと心配なの?ひょっとして明里ちゃんに気があるの?」


「んな訳ねぇーだろ、馬鹿!!明里、さっさと終わらして戻るぞ」


「優君はぶっきらぼうだけど優しいよね」


「べっ…別にそんなんじゃねーよ!お、おう…!」


「何、二人でいちゃついてるのー!仲良しさんだね!それじゃ無事に帰ってきてね…健闘を祈る!」


「へーい!」


星川から地図を受け取り、暗がりの闇の中から目的地に俺達一行は目的地に向かうのだった。


周りは薄暗く、どこを見渡しても墓地だらけ。

人っ子一人おらずの環境だ。


夜に墓地を渡り歩くのはどうかしている。何でも死んだ霊が俺達に乗り移らないか心配だ。


地図を広げて、携帯のライトで照らしてみると目的地に辿るまでに星マークで記されている。


説明によると、地図に同封されているスタンプ用紙に星エリアにあるスタンプを押してから、目的地に向かうとのことだった。


スタンプ台とやらは5つ…暗がりの中で探すのも大変なので

俺と明里の携帯のライトで照らしながらゆっくり進むことにした。


墓地はどうやら抜けたようだが、辺りはカラスの鳴き声や不気味な声がする。


どこからか、叫び声も聞こえるが真っ暗闇の空間なので見つけることさえも一苦労だ。


最早、目的地に進んでいるかもわからんが長年の勘とやらで進む事にした。


暫く道なりに進んでいると、星マークが描かれた看板がありスタンプ台を見つけることが出来た。


古ぼけた看板だが、スタンプ台があるのでライトの明かりを頼りにして一つ目のスタンプを無事に押す事が出来たのだ。


「よかったな、明里!あとスタンプは4つ!早く終わらして帰るぞ」


「優君がいるから私も頑張るよ!うん!」


明里と励まし合いながら進んだ瞬間、明里がトラップである落とし穴に落ちてしまったのだ。


「明里!体は大丈夫か?ほら、手を貸せ!」


「優君、私足を捻ったみたいで動けない!私を置いて先進んで!」


「馬鹿、んな事出来るわけねぇーだろ!ロープが近くにあったからこれに掴まれ!」


「優君、ありがとう!掴まってみる。」


しかしながら、落とし穴は思ったより深く人を一人引っ張り上げるのも困難だ。どうしたものか…


立ち尽くしていると、背後から声が少し聞こえる。ようやく姿を現し、顔を見上げると星川だった。


「星川、助けてくれ!明里が怪我をしたんだ。明里は体が強くないから手を貸してくれないか」


「ったく、何もたもたしてるんだよ!あかりんが可哀想。一先ず、ロープを貸して!ほら、早く!」


「わかった、引っ張るぞ!」


幸いにも、ロープはしっかりしていたため、なんとか明里を引っ張りあげることは出来た。


しかしながら、明里の制服は残念ながら泥まみれになっている。


「明里、大丈夫か?」


「優君、ありがとう!」


「私は優君がいたから助かったよ!優君、ぶっきらぼうだけど優しいもん。今も変わらず大好きだよ!」


「おい……!」


十数年ぶりに、明里から抱擁されたが柔らかい何かが当たっているようで俺には下腹部…いや、心臓に悪かった。


そもそもこんな夢のような経験すらもなかったからな…


明里は安心しているのか、子供のようにべったりしている。


星川は深く溜息を吐いていたが、少し不貞腐れているような気がした。


「ほらほら、いちゃつきバカップル!ここはいちゃつきの空間じゃないからね」


「んなんじゃ、ねーよ!!!」


「星エリア、あと4つ残っているみたいだけど2つだけ特別に場所を教えてあげる」


「特別にね!あかりんは怪我しているし休憩所に連れて着替えさせるから後は頼んだよ」


「明里を頼んだ。面倒を見てやってくれ」


ほんとは、二つ目のエリアで驚かしたかったんだよねとぼそっと呟いていたようだが


聞いていなかった振りをして、星川と別れ、二つ目、三つ目のエリアに進む事にしたのだった。


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