第八話 花火大会(前編)
星川の言う通り、
白浜駅に19時に待ち合わせだった為、俺は30分前に現地に到着していた。
改札付近で待機していると、まだそれらしき人は集まってはいなかった。
向かい側に、金髪サイドテールで花柄の浴衣を着ている女性が立っていた。
彼女は目鼻立ちが整っており、透き通った青い瞳に柔かそうな白い肌、同時に容姿端麗の為通りすがりの人が一度は振り返ってしまうほどの美しさを保っていた。
そんな俺は彼女に見惚れていた――
小柄な女性だが、どこか儚げで寂しそうな表情をしていた彼女を見ると
鼓動が少し高早まったような感じがした。
ぼっーと少しの間、立ち尽くしていたら金髪美少女が俺のもとに近寄ってきた。
「陰キャオタ...いや、雛沢君。探していたよ、どこにいたの?」
「ん?反対側の柱にぼっーと立ち尽くしていたが...」
「立ち尽くしていたじやないよ...僕、ずっと君を探していたんだよ」
「悪い、待たせたな」
なんだか、悪いような気がしたので星川の頭を撫でてみることにした。
すると、彼女は頬を赤らめ俺に一蹴をした。少し意識が遠のいていくようだった。
「俺は悪いことしていないのに、どうか神様。俺にご加護を...」
すると、俺達の後ろに僅かな人だかりが出来ていた。
「なぁーに、二人とも熱いことしてんすか?」
「ひゅーっ、ひゅーっ‼」
名前は分からないが、クラスメイトの女子と男子が俺達を囃し立ててきた。
星川の情報によると、
男子の方はクラス内ではお調子者の佐藤と女子の方は夏見というらしい。
二人とも話したことはないが、俺達を歓迎してくれた(?)みたいだ。
そうこうしていると、後ろから小柄な女性が俺達に近寄ってきた。
「ハルちゃん、お待たせ。今日、花火大会だよね」
「そうだよ、私も楽しみ‼」
女子のきゃっきゃっとした空間に入ることは出来ず、一人アウェイになっていた。
「さて、みんな集まったみたいね。花火大会が始まるから目的地に向かうよ」
すっかり、夜は真っ暗になり商店街に人だかりはできていた。
俺達は時間も無いので、奥へと進み会場へ向かうことにした。
人の多さから、クラスメイトと俺達は分かれ、各々で見ることにした。
いつの間に海岸沿いには多くの人だかりが出来ていたのだ。
俺と星川と明里の三人で眺望の良い場所を見つけて見ることにしたのだ。
定刻になると、夜空に煌めくような花火が散っていた。
数々の色とりどりの花火が夜空に咲いている。
その一瞬がとても良い。
儚く散っている花が輝いており、優美でとても綺麗だからだ。
星川は目が輝くように見つめていた。花火を見るのがとても好きなのだろう。
「雛沢君、花火綺麗だね」
「ああ、今日はちゃんと名前で呼ぶんだな」
「うん、クラスメイトとも溶け込めるようになったんだね」
「今日は君を認めてあげる。引き続き頑張ってね」
「ありがとう」
見つめている星川の姿が、あまりにも綺麗だったため俺はそっと星川の手を握ってしまった。
彼女は頬を赤らめていたが、握り返してくれた。
夜空は静まり返っていたが、鼓動が鳴り止まない一日だった。
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