第七話 心の準備
真っ暗で夜が静まり返っている中、俺はデスクで机に突っ伏すように寝ていた。
そんな時、携帯の着信が鳴ったのだ。
咄嗟に着信履歴を見たら、星川からだったので急いで出ることにした。
星川の言うことは、絶対なので.......
「やっほー、遥だよー! 陰キャオタク君、ところでゲームは全て終わった?」
「終わった?じゃねぇよ… 何時だと思ってんだ。全く深夜2時に連絡を寄越しやがって」
「え? もう、そんな時間だったの? ごめんごめん、気がつかなかった」
「ったくよぉ…何なんだよ、お前は。俺の調子を崩すなぁ」
「そんな口、聞いていいのぉ? 陰キャオタク君…」
「僕、君の情報は全て握っているから、いざ学校中にばら撒こうと思えば実力行使でぜーんぶ、ばら撒く事もできるんだよ」
「わかった、わかったよ、それだけは頼む…やめてくれ!進路に響いたら困るんだよ」
「ふーん、じゃあその口の聞き方は今度からやめてね。指導もできなくなるから、わかった?」
「はい……」
「で、僕は君のパソコンやあらゆる所にカメラを設置して監視しているんだけどちゃんとノルマはクリア出来たみたいね」
「えっ......いつの間に、俺の部屋にカメラを取り付けているんだよ」
「言ったでしょ、僕の家はスーパー金持ちだから何でもできるの。つまりは打つ手がないのよ。雛沢君……」
「お、お前……俺の名前読んだ……?」
「それに関しては、ともかく……履修したことならまぁいいけど後程チェックするね!」
「えっ……そんな……」
「私の言うことは、絶対だからね。わかった?」
「はい、わかりました……」
まずいまずい……今回のゲームの目標は、終わるのが飽くまで目標なので女の子を口説いた√なんて全く覚えていない。
その辺に転がっていた攻略サイトを見て、スキップして進めたので内容は全く覚えていないのだ。
全く履修していない事を星川に見透かされるのが怖かったのか、俺は上ずった声しか出なかった。
確かに、星川が言った内容を履修していれば自然とクラスメイトの女子から話しかけられるようになり、恋愛経験が皆無な俺にとっては小さな喜びだったのだ。
そんな事も束の間、新たな地獄(ラウンド)が始まるのだった。
5分程、頭の中で考えを巡らせていたら星川から大声でドスの効いた声で話しかけてきた。
「ちょっと……陰キャオタク君いい?明日は明里ちゃん達と花火大会に行くのよ」
「わかった、何時に向かえばいい?」
「19時に会場の最寄りの白浜駅に来て、分かった?」
「へーい、19時な」
「皆にも伝えてくるから、ダサい格好で来るのはやめてね。」
「気になるんだったら、こないだのエロゲが入っていた段ボール箱の中に浴衣が入っているからそれを着て向かって」
「わかった」
「あんたの話で、もう3時回ってんじゃない!!それじゃ!!」
「星川……」
ツーツー……ツーツー……
星川に聞きたい事があったので、話そうとした所、切れてしまった。
星川は変わらず、そんな奴だ。大事な時にいつも電話を切る。でも、そんな星川にも慣れてしまって俺にとっちゃ何てことはない。
「さて、寝る支度をするか」
俺はぼさぼさ髪のまま、風呂場へと向かい、シャワーを浴びて歯磨きを済まして寝ることにした。
ーー午前12時ーー
寝不足だった為か、昼頃に起きてしまった。
正直、ベットで寝ていたいが疲れが響いて作業する気力もない。
「だらだらしていよーーってもう12時か、やべ。昼飯食って、準備するか」
流石にこの姿は不味いので、朝の身支度を済ませて俺は近所にあるいつもの美容院へと向かった。
中に入ると、高身長で爽やかな男性が立っていた。
俺に近づいてきて、話しかけてきていたのだ。
見たこともないので、どうやら新人だろう。
「いらっしゃいませ、本日は予約していますでしょうか?」
「予約はしていないです、スタイリングをお願いしたいのですが」
「していないです、髪は以前切ったのでスタイリングをお願いしたいのですが…」
「承知しました、今日は彼女とデートとかそんな感じですか?」
「いえ、クラスの連中と花火大会なんすよ」
「まあ、素敵ッッ…!! 花火大会なんですね。とびっきり良くしますね。後、お客様は少し髪が長いのでカットしてスタイリングしますね」
「わかりました、お願いします」
「それでは、こちらにどうぞ。お座りください」
「お客様の場合は、いま流行りのトレンドのヘアスタイルが合うのでそちらに致しますね。それでは、早速始めさせて頂きます」
1時間位でカットとスタイリングが終わり、俺は見違えるような別人に変わっていた。
「お客様の場合は、髪が広がりやすいのでおまけでスタイリング剤とワックスをお渡ししますね」
「えっ、、ありがとうございます。こんなにいいんですか?」
「はい、それではまたのご利用をお待ちしております」
見たことない新人だったが、対応も早かったので今度もその人に頼もうと思う。
今日は格別に良い日だったので、会計を済ませ、颯爽と自宅に戻り段ボール箱の奥底に眠っていた浴衣を着てみることにした。
いざ、着てみようとしたら自分に合うかわからないが今日は一段と違うので着てみることにしよう。
「よし、こんなもんか。白浜駅に向かおう」
時間まで、少し時間あるが遅刻はしたくないので俺は目的地へと向かうのだった。
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