柳生宗矩 幕府の深淵を垣間見る 1
駿府郊外にある怪しい屋敷に忍び込んだ十兵衛と与六郎。二人は苦戦しながらも、巧みに連携して敵の術式を書き写すことに成功した。あとはこれを家光に届けるだけである。
脱出した二人は途中雅行と合流し、駿府の町を目指すのであった。
時刻は丑三つ時(午前二時頃)。人はもちろん草木すら寝静まっている夜闇の中、雅行は駿府郊外の小さなお堂内にて息をひそめながら十兵衛たちの帰りを待っていた。
(あいつらが忍び込んでからそろそろ一刻か。もういい加減戻ってきてもいい頃合いだが……)
十兵衛たちと共に謎の屋敷の調査に向かった雅行であったが、彼は十兵衛たちに結界抜けの術を施すと、自分がいては邪魔になるからと早々に離脱して少し離れたこのお堂にて待機していた。予定では十兵衛たちも半刻ほどで合流することになっていたのだが、刻限を告げる鐘がなっても彼らはまだ帰ってきてはいなかった。
(いくらなんでも遅すぎる。まさかあいつらの身に何かあったのか?)
雅行は十兵衛たちの実力を信じてはいたが、一方で相手も高度な術が使える未知の集団である。返り討ちにあっている可能性は十分にあった。そしてもしそうだった場合、今度は自分の身まで危うくなってくる。
(もしも敵が追跡系の術を持っていたとしたら……。どうする?一度町に戻って宗矩様に指示を仰ぐか?)
雅行は一旦移動した方がいいのではないかと考えお堂を出ようとする。しかしそう思って扉に手をかけようとしたまさにその時、ガサリとこの場に近付く足音を耳にした。
「!?」
(だ、誰だ!?十兵衛たちか?それとも俺を追ってきた敵の奴らか……?)
息を殺してゆっくりと部屋の奥に後ずさる雅行。こんな時間に普通の旅人ということはないだろう。つまりは無事戻ってきた十兵衛たちか、あるいは彼らを返り討ちにした敵が結界を破った自分を追って来たのか……。雅行は護身用の短刀を握りしめて相手の出方を伺う。
すると足音の主は扉の前までやってきて声をかけてきた。
「雅行、いるか?こっちは終わったぞ!」
聞きなれた声に雅行はほっと安堵し、扉を開けた。
「十兵衛!あぁ無事だったんだな。遅いから心配したんだぞ」
「悪いな。念のために追手を撒くように動いてたら遅くなってしまった。そっちは大丈夫だったか?」
「ああ、こっちは問題ない。そっちこそ目的の物は手に入ったのか?」
雅行が尋ねると十兵衛はニヤリと笑って懐から紙の束を取り出した。
「ホレ、この通り」
「おお、これがか。少し見ても構わぬか?」
「そうだな。先に確認しておくのもいいだろう」
三人はお堂に入り、月明かりを頼りに入手した敵の呪詛の写しを床に並べ始めた。
「ほう、これはよく描かれている。術師でもないのに、よくぞここまで精密に写したものだ」
雅行は床に写した紙を並べながらそう感嘆した。仕事をしたのは与六郎であったが、彼は術に詳しくないからこそ目に見えるものを正確に描くことに努めた。そのおかげで術に使われた道具の数や形がよくわかった。これらの要素はこの手の術では非常に大きな意味を持つ。きっと分析の役に立つことだろう。
また写した紙にはいくつか印がつけられており、それを重ねるように並べると線がつながって一つの大きな絵ができるようになっていた。十兵衛らがその印に従い並べると、まもなくして例の術式を再現した半畳ほどの一枚絵が完成した。
「見事。陰陽寮の同僚らに手本として見せたいくらいだ」
「恐縮です。とはいえ某ではどのような術かまではわかりませぬ。そこは雅行様方に任せる他ありません」
「ああ、任せろ。これだけはっきりしているのだからきっと読み解けようぞ」
それから十兵衛と雅行は月明かりの下、術式の分析に入る。彼らは与六郎の成果に応えようと丁寧に術式を読み取り、そして一つの結論に到達した。
「間違いない。これは対象が持つ愛情を暴走させるための術式だ。狙いは駿府城――大納言様とみて間違いないだろう」
雅行らが確信を得たところで、ここで一度彼らがここに至るまでの経緯をまとめておこう。
事の発端は将軍・家光が、実弟・忠長の周囲で政治的に何かきな臭い動きがあると気付いたことだった。
「最近忠長を貶めるような噂をよく耳にする。それに合わせて年寄たちも動き出している。嫌な予感がするから事の真意を確かめてきてほしい」
家光は噂はどこまで本当か、暗躍している者がいないかという調査を宗矩に依頼した。これは老中たちを通していない家光独自の勅命であった。
極秘の調査を命じられた宗矩は信頼できる駒として十兵衛を、そして陰陽寮への伝手を利用して術の専門家である雅行を招集する。こうして十兵衛たちも駿府の調査に乗り出すこととなったのだが、その最中敵が『善意』を利用している可能性にたどり着く。
「敵は悪意ではなく、善意を利用して大納言様を貶めようとしているのではないだろうか?例えば家族愛だとか。確か一度前例があるのだろう?」
例え善の感情であっても、行き過ぎれば悪行になりかねない。忠長ほどの地位を持つ人間ならばなおのことである。実際彼は一度、家光上洛の際に良かれと思ってしたことが問題となっていた。その時は上洛の祝典ムードに水を差さないよう寛大な処置が取られたが、次また似たようなことが起これば今度こそ厳罰は免れられないだろう。
このことを前提に調査を進めた十兵衛たちは、やがて駿府郊外に怪しい屋敷を発見した。郊外であるにもかかわらず妙に厳重で、しかも術による結界までかけられている屋敷である。
明らかに何かある。そう睨んだ十兵衛たちは翌日早速忍び込み、そして紆余曲折あった末に、この術の写しを手に入れたというわけだ。
「これで誰かが大納言様を貶めようとしている証拠が手に入ったというわけだな。これならば上様も満足してくれることだろう」
「ああ。だがこれで解決というわけではない。誰が命令したかはわかってないわけだからな。屋敷のこともあるし、むしろ本当に大変なのはここからだろう」
十兵衛が言ったように、この件の黒幕については未だ闇の中である。また並行して例の屋敷が、かつて徳川家が所持していた屋敷であることも発覚した。この一件、まだまだ根は深そうである。
「とはいえ一段落は一段落。あとは父上たちの判断に任せよう」
「そうだな。そろそろ夜明けだし帰るとするか」
しばらくして空が白むと十兵衛たちはこそりとお堂を出た。そして明け六つの鐘が鳴るとほぼ同時に駿府の町に戻ったのであった。
明け六つの鐘が鳴り町の門が開くや、十兵衛たちはするりと駿府の町に入った。
一行は軽く歩いて尾行がないことを確認すると、宗矩が待つ屋敷へと戻る。屋敷の門前では蜂助が彼らの帰りを待っていた。
「与六郎様!十兵衛様!それに雅行様も!皆様、ご無事だったのですね!」
「ああ。皆は起きているか?」
「はい。皆さん、心配してお待ちになってましたよ。さぁ皆様、どうぞ中に」
蜂助の案内で中に入る十兵衛たち。そんな彼らを友重、常隆らが出迎えた。
「おお!戻ってこられましたか」
「ご無事で何よりです、十兵衛様!」
口々に帰還を喜ぶ家臣たち。どうやら心配であまり寝付けなかったらしく、その目の下にはうっすらと隈もできていた。
そんな中で宗矩だけは戻ってきて当然と言わんばかりに調査報告を求めた。
「よく戻った、七郎。して首尾は?」
「はい。あの屋敷では確かに怪しげな呪詛が行われていました。それがその写しです」
十兵衛は早速与六郎が書き写した術式の写しを座敷に広げた。一度お堂で並べていたため、並べ終えるのにそう時間はかからなかった。まもなくして半畳ほどの術の写しが一行の前に現れると、その異様さに宗矩たちは息を呑んだ。
「ほう、これはまた……。雅行殿、解説をお願いできますかな?」
雅行は快く頷いて前に出た。
「こちらの術式ですが、予想通り善良な感情――家族愛や兄弟愛といったものを過剰に増幅させるものでした」
これを聞いて宗矩たちが「うぅむ」と唸る。事前に聞かされてはいたが、実物を見るまでまさか本当にこんな変わった手段で敵が忠長を狙っているとは信じられなかったからだ。
「まさか本当にあったとは。敵の狙いはやはり大納言様か?」
「そうだと思われますが……、実はこちらの術式、個人を狙い撃つような仕掛けは発見できませんでした」
「む?特定の誰かを狙ったものではないと?」
「駿河城全域に術がかかるようになっております。ですが日夜問わず城内にいるのなんて大納言様とその御家族くらいですからね。実質大納言様を狙ったものとみて間違いないでしょう」
雅行によるとこの術式に細かな対象指定はなされていないとのことだった。しかしほとんどの武士は仕事を終えれば下城する。つまり一番影響を受けるのは、城で暮らす忠長とそれに近しい人物ということだ。
「もちろん影響を受ける普通の武士もいるでしょうが、仮に影響が出たとしてもほんの少し家族や友人に優しくなるだけですからね。誰も異変に気付くことはないでしょう」
「うぅむ。よくできている。憎らしいくらいにな……」
「おっしゃる通りで。ですが意地の悪い仕掛けはまだあります。ここに描かれている護符ですが、この護符は呪詛の効力を弱めるものです」
雅行が指さしたのはいくつかの梵字を組み合わせた護符の写しであった。当然これだけでは宗矩たちには伝わらない。
「弱めるもの……。それがここにあるとどんな不都合が?」
「ここで術を弱めているということは、逆に言えば敵は好きな時に術の効果を高めることができるということです。例えば将軍様が何かしらの理由で駿府の城に参られたとしましょう。その折にこの護符をはがして術を行えば、大納言様に強力な術をかけることができます。それにより肥大した家族愛に呑まれて理性を失った行動をとってしまうなんてこともあるかもしれない。例えば自分から離れないように監禁したり、何かしらの危害を加えるなんてことも……。愛憎は表裏一体の感情ですからね」
雅行の推察に一行たちは苦い顔をした。どうやら敵の凶手はすでに忠長の喉元にまで迫ってきているようだ。
「もしそんなことが起これば改易は必至。最悪腹を切るよう命ぜられるなんてこともありうるでしょう」
「ああ、その通りだ。しかし『愛情を高める術』がここまで恐ろしい術になるとはな……」
「何事も『過ぎたるは猶及ばざるが如し』です。薬も飲み過ぎれば毒となる。この手のまじないは年に一回、正月にでもすればそれで十分なんですよ。それを弱めたものとはいえ連日連夜ですからね。いつ堤が崩壊したとしてもおかしくはない」
「……崩壊はいつぐらいになると思う?」
「残念ながら、いつからこの術がかけられていたのかがわからないので何とも言えません。ですが向こうが本気を出せば、決壊まで三日もいらないということは断言いたしましょう」
これを聞いた宗矩は頭を押さえて心底苦しそうに溜め息をついた。
「……なるほど、よくわかった。これは一刻も早く上様に報告した方がよさそうだな。駿府での用事は終わっているから、早速戻るとしよう」
「某も江戸まで同行いたしましょうか?」
「いや、ありがたい申し出だがそこまでしてもらう必要はない。江戸にもいい術師はいますからな。京に戻ったら友景に『いい人材を送ってきてくれた』と礼を言っておいてくれ」
宗矩はそう言うと、あっという間に荷物を整えて側近たちとともに江戸へと帰っていった。それを見送った十兵衛たちもまた今日一日疲れを癒したのち、柳生庄へと帰る。
こうして宗矩と十兵衛の駿府での調査は幕を閉じたのであった。
それから数日後。江戸に戻った宗矩は駿府での調査結果を家光に奉じていた。
「ふぅむ……。肉親への情を高めて暴走させる、か……。これはまた面妖な……」
家光も当初は敵の作戦に驚いていたが、宗矩が根気強く説明したことにより事の重大さを理解し、すぐさま専門の調査団を結成すると約束した。
「なるほど。これは確かに急いで動いた方がよさそうだ。すぐさま信用できる者を駿府に向かわせよう」
「それがよろしいかと。某も再度駿府に向かいましょうか?」
「いや、お前はもう十分によく働いてくれた。年越しも近いのだし江戸でゆっくりと養生してくれ。……ここから先はお前でも荷が勝ちそうだからな」
改めて確認したところ、呪詛が行われていた屋敷は間違いなくかつて家康・秀忠が所持していた屋敷であった。江戸の資料では現在の所有者までは確認できなかったが、一介の剣術指南役が相手できるような者でないことは容易に想像できた。ゆえにこの報告を区切りにこの一件は宗矩の手を離れ、家光預かりとなるのであった。
そして宗矩が再度この事件に関わることとなるのは、年が明けた一月下旬のことだった。
宗矩が忠長の件を報告してから数十日の月日が経った。その間に年は明け、慌ただしく正月を過ごしているうちに、宗矩は忠長に関する事件のことをすっかり忘れてしまっていた。
そんな一月下旬のある日、宗矩の元に前触れなく城からの使者が現れた。
「宗矩様。卒爾ながら上様の命により、城までお越しいただきたい。今すぐ某と参られよ」
(登城命令?はて、剣の稽古は一昨日したばかりだし、いったい何の用だ……?)
この時宗矩は忠長の件を忘れていたため呼ばれた理由に心当たりはなかった。しかし城からの呼び出しとあらば行かないわけにはいかない。
「承知いたしました。今すぐ向かいましょう」
宗矩はいつも通り動きやすい裃を纏うと、使いの者と共に江戸城へと向かう――と思ったのだが、どういうことか使いの者は大手門を通り過ぎて南の方へと進んでいく。
「む?どこか寄るところでもあるのでしょうか?」
宗矩が尋ねると、案内人は「ああ」と自分の失念に気付いて詫びた。
「ああ、申し訳ございません。お伝えするのを忘れていましたが、今回宗矩様をお呼びなされたのは大御所様にございます」
「大御所様!ということは西の丸ですか」
彼らの言う大御所とは先代将軍・徳川秀忠のことである。数年前に将軍職を家光に譲った秀忠は、現在江戸城本丸から見て西の建物・西の丸にて公私の活動をしていた。
(大御所様か。私的に呼ばれるのは久しぶりだな)
思わぬ相手に宗矩は少し驚きはしたが、割とすぐに冷静になった。家光の指南役に就いてからは少々縁遠くなってはいたが、元々宗矩は秀忠の剣術指南役も務めていたため全く知らぬ関係でもない。また秀忠は武芸に熱心だったため、その方面で宗矩が呼ばれたとしてもそうおかしな話でもなかった。
(年が変わったことでお体を動かしたくなったのかもしれない。いいことだ。健康のためにも体を動かすことは大事だからな)
軽い稽古か、あるいはちょっとした武芸関係の世間話のために呼ばれたのだろう。そんな風に呑気に考えながら宗矩は使いの者と共に内
西の丸下。現代では皇居外苑に位置する場所であり、当時は酒井や土井といった幕府高級官僚の屋敷が立ち並ぶ区域であった。ここに西の丸へと通じる西の丸大手門があり、その後いくつかの厳重な門を越えた先に大御所・秀忠が待つ西の丸はあった。
西の丸に入った宗矩はそのままとある座敷にまで案内された。この時まで宗矩は、秀忠が自分を呼んだのはちょっとした世間話のためだと思っていたのだが、中にいた人物を見て(おや?)と違和感を覚えた。というのも座敷には先んじて老中である酒井忠世や土井利勝などが座していたからだ。
(右兵衛督様(忠世)に大炊頭様(利勝)!?他にも重鎮ばかり……!いったいどういうことだ!?)
座敷に並んでいたのは知行数万石を越える幕府の重鎮ばかり。対する宗矩は知行三千石の剣術指南役。宗矩は一瞬入る部屋を間違えたのかと思ったが、案内役の坊主はここの下座に着くよう促してきた。どうやらこの部屋で間違いないようだ。宗矩はごくりと唾を呑みこみ、覚悟を決めて下座に腰を下ろした。すると少し驚いたような顔をした利勝が早速話しかけてきた。
「やあ、宗矩殿。貴殿も召されたようだな」
「はい。今朝方使いの方がいらして……。もしやお待たせしてしまったでしょうか?」
「なに、某らも今しがた来たようなものだ。気にすることはない。……それよりも宗矩殿。貴殿は今回呼び出された理由を聞いているか?」
やや警戒した様子の利勝に宗矩もわずかに眉根を寄せた。
「いえ。坊主に案内されるがままに来ましたので。……もしや大炊頭様も何も?」
「ああ。奥で仕事をしていたら急に使いの者が来てな。まったく、詳しく知っている者がいるのならば教えてほしいものだ」
そう言うと利勝はさりげなく非難するかのような目を部屋の一角に向けた。利勝の視線の先には金地院崇伝が黙して座していた。
(金地院様もいらしていたのか……)
金地院崇伝。初代・家康の頃から徳川家に仕えている重鎮で、国内外を問わず幕府の対外交渉を一手に引き受けている傑物である。
そんな彼は利勝の視線など我関せずという風に、静かに目をつぶってその場に座していた。おそらく宗矩が来る前からこの調子なのだろう。このなしのつぶてに利勝も諦めたかのように鼻を鳴らすのであった。
さて、そんなやり取りをしていると西の丸警護の武士がやってきて一行に深々と頭を下げた。
「皆様。本日はお忙しい中お集まりいただき、まことにありがとうございます。まもなく殿が参られます」
「!」
その一言で宗矩たちは一様に口をつぐみ背すじを伸ばす。そして畳の目一つのズレもなく所定の位置に着くと一同は上座に向けて深々と頭を下げて主君を待った。
まもなくして奥の戸が開き二人分の足音が聞こえてきた。足音の主たちはそれぞれ上座に着くと、そのうちの一人が落ち着いたはっきりとした声で宗矩たちに声をかけた。
「面を上げよ。今日は見知った者のみだ。そう畏まることはない」
顔を上げる宗矩たち。そこには現将軍・家光と、彼の父親で先代将軍でもある徳川秀忠が座していた。
徳川秀忠。言わずと知れた徳川幕府二代目将軍で、数年前に家光に将軍職を譲ってからは大御所という立場で幕政を指揮している。その影響力は未だ健在で、名目上こそ将軍ではなくなったものの、政治の実権は家光ではなく未だに彼がその大半を握っていた。この時秀忠御年四十八歳。顔にはシワが、髪には白いものが目立ってきたが、それでもまだまだ活力に満ち溢れているこの時代の真の天下人であった。
そんな大御所・秀忠はしばらく当たり障りなく時候の挨拶を述べたのち、早速本題を切り出した。
「さて、貴殿らとの間に余計な気遣いは無用だろう。早速だが今回集まってもらったわけを話そう。今回集まってもらったのは他でもない、今後の
秀忠の言葉に息を呑む一同。ここに集まっているのはほとんどが現政権の中心人物である。そんな彼らを極秘裏に集めて知らせる政治方針。ただ事ではないのは明白である。
そう身構える宗矩たちであったが、対する秀忠はまるで些細な業務連絡でもするかのように、あっさりとこう宣言した
「我々は今年中に駿府の忠長を改易させる。各々それを念頭に置いて政を行うように」
「……えっ!?」
秀忠による突然の忠長改易宣言。この思いもよらぬ発言に、宗矩を含めたこの場にいたほとんどの者が唖然として言葉を失うのであった。
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