柳十兵衛 囮となる 2

 先発隊として先んじて七里の渡しを渡った十兵衛たちは、周囲の安全を確保しながら本隊を待っていた。

 その後道順率いる本隊が到着したのだが、彼らの様子はどこかおかしかった。

 何事かと心配する中、十兵衛たちは計画の変更を告げられる。一行は後続を待つことなく、あわただしく次の宿場へ向けて出発した。


 あわただしく宮宿を出た護衛団一行。十兵衛たちはその先頭を歩きながら、今回の計画変更についてあれこれ語り合っていた。

「それにしてもどうして急に出発することにしたのだろうか?尾張の監視の目が気に障ったとかか?」

「いえ、そのくらいならば想定の範囲内でしょう。それに本隊は船の到着前からどこか変でした。やはり船上、あるいは桑名宿の方で何かあったのかと」

「だがそれにしては対処が安易ではないか?もともと今日は鳴海なるみ宿で一泊する予定だったのだろう?」

 一行は現在東海道に沿って次の宿場である鳴海宿を目指していた。彼らはこの鳴海宿に本日泊まる宿を予約しており、そして時間的にその宿場で一晩過ごすことはほぼ間違いなかった。

 つまり計画の変更は三組目を待つことなく出発したことのみであり、それ以外は概ね当初の計画通りということだ。問題が起こったがゆえの対処にしてはあまりにも小規模な対応である。

「んー、三組目だけに問題が起こったとかか?……いや、それならそうと教えられててもいいはずだ。やはり護衛任務に支障をきたす何かがあったのか?」

「まぁこれ以上考えても推測の域は出ません。素直に報告が下ってくるのを待ちましょう。もう鳴海宿も見えてくるところですしね」

 出発から半刻と少しほどで一行は次の宿場・鳴海宿へと到着した。そして彼らは予約していた宿に逃げ込むように連れていかれる。そこで何かしらの説明があると思っていた十兵衛であったが、百地の忍びは特に報告もなくさっさと休むように指示を出した。

「部屋割りは以上だ。各々今日は疲れただろうから、変な真似はせずに素直に休んでおけよ」

(む。計画の変更についての話はなしか)

 それらしい話もなく解散させられる一同。のちに与六郎から聞いたところによると、他の班も心当たりがなく困惑していたそうだ。そして置いていかれた三組目も半刻ほどして宿に到着し、ますます計画変更の意図がわからなくなったところで日の入りを知らせる六つの鐘が鳴った。

 時間的にどうやら今日の報告はないとみてよさそうだ。十兵衛たちは歯の奥に何かが詰まったかのようなむずがゆさを覚えながらも、暗くなるに任せて各々床に就いた。


 翌日早朝。宿の一室にて十兵衛は、誰に起こされたわけでもなく自然に目を覚ました。日はまだ昇っていないようで部屋の中は影すら見えないほどに暗い。そんな中で身じろぎすると、先に起きていた与六郎が声をかけてきた。

「おや、お目覚めですか、十兵衛様」

「……与六郎か。今何時だ?」

「まもなく七つの鐘が鳴る頃(日の出二時間前)です」

「そうか。……夜中に報告等はあったか?」

 昨日は寝る直前まで説明の伝令を待っていた。これに与六郎は首を振る気配で返す。

「少なくとも某が起きている時には来ませんでした」

 記憶が確かならば与六郎は昨晩最後まで起きていたはずだ。また彼は夜更けであっても、声をかけられればすぐさま覚醒するように訓練している。つまり昨日のうちに伝令の報告は来なかったということだ。

 十兵衛は「そうか」と軽く返事をしたのち、他の者を起こさぬように改めてゆっくりと伸びをした。

(夜中に叩き起こされるのも覚悟していたが、どうやら杞憂だったようだな)

 やがて七つの鐘が鳴ると各自目覚め始め、そして一行は今日もまた日の出前に宿を出た。

 余談だが、宿を出た与六郎はすぐに尾張の監視がいることに気付いて報告してきた。

「今日もまた遠くで尾張の忍びが監視をしてますね」

「相変わらず俺にはわからんが……どうだ?障害になりそうか?」

「いえ。敵意のようなものは感じ取れません。おそらく目的は変わらず監視のみ。こっちが無事に抜けたら勝手にいなくなるはずです」

 その予想通り、護衛団一行が境川を越えて三河国に入ると、尾張の監視は煙のように消えていったそうだ。

 そんなささやかなイベントを除けば、この日は拍子抜けするほどに順調な旅路となった。

 夕刻頃、一行は何事もなく二川ふたがわ宿へと到着し、宿に入った。二川宿は浜名湖の西にある宿場で、駿府までは三日ほどかかる位置にある。十兵衛たちの旅もいよいよ終盤に差し掛かってきた。


 事態が動いたのは宿に着いてから半刻ほどした頃だった。

 連日の疲れに加え明日もおそらく早いだろうということで、早々に就寝の準備を始めていた十兵衛たち。そこに百地の伝令が訪ねてきたのだ。

「十兵衛様、今よろしいでしょうか?」

 十兵衛たちは互いに顔を見合わせる。もうすでに今日の定時連絡は済ませていたからだ。だが急に予定が変更されるのもない話ではない。

(まさか休むことなくいきなり出発したりはしないだろうな?)

 十兵衛たちは若干身構えながら、ふすまを開けてこの伝令を招き入れた。

「はい。何かありましたか?」

「遅い時間に申し訳ございません。時に少し小耳にはさんだのですが、十兵衛様方は故郷に手紙を出したいと申していたと聞いたのですが、相違ありませんか?」

「えっ?あぁ、まぁそんなことを言ったこともあったといえばありますが……」

 予想だにしなかった質問に少しばかり面食らう十兵衛たち。確かに、あれは七里の渡しの船上だったか?里の者たちが心配しているのではないかと、善祐たちとそんな話をした覚えがあった。

 とはいえ任務の性質上それが難しいことは理解していた。あの会話も本気ではなくちょっとした世間話程度のものである。勘違いさせたのなら申し訳ないと十兵衛が謝ろうとしたところ、伝令は思わぬ返事で返した。

「実はそれを同乗していた仲間の一人が聞いておりまして、その話が道順様まで伝わったところ一筆書く許可が下りたのですが、いかがなされますか?」

「えっ!よろしいのですか!?」

「ちょうど西の方に使いを出す必要ができたため、ついでということで……。もちろんつまびらかに書かれては困りますが、安否を伝える程度なら問題ないとのことです」

 それは予想外の僥倖だった。

 十兵衛が柳生庄で任務を受けた時点では、彼らは駿府まで行くことは知らされていなかった。そのため里に残った者たちは十兵衛がいつごろ返ってくるのかを知らず、それがいらぬ心配を生んでしまうのではないかと懸念していた。だがここで幸運にも一筆書く機会が設けられた。手紙で安否を知らせれば里で待っている彼らも安心してくれることだろう。

「おぉっ!ありがとうございます。すぐにしたためますゆえ、少々お待ちください」

 こうして十兵衛は懐紙と矢立て(当時の筆記用具)を取り出し、善祐らと共に一筆したためる。もとより書ける内容が限られていたため、書き終えるのにそう時間はかからなかった。

「よし。こんなもんだろう」

 内容はあと十日ほどで帰れそうだということ。お供含めて全員無事だということ。そしてもし火急の用があるのなら伊賀の柘植に人を置いておくようにとも書いておいた。柘植ならば帰る際に立ち寄るし、あそこは伊賀忍者の本拠地の一つだ。きっと的確な判断を下してくれるだろう。

 書き終えたことを伝えると、百地の伝令は道順に検閲を頼むようにと言ってきた。

「内容が適切かどうかの判断は道順様が行います。部屋まで案内いたしますので与六郎様と共についてきてください」

(ん?二人して向かうのか?)

 手紙の検閲だけならば使いの者に託せばいい。ましてや与六郎と二人で向かう必要もないはずだ。しかしこの時十兵衛は旅の疲れからか、そういうものなのかと言われるがままに納得し、伝令に連れられて道順の部屋までやってきた。

「道順様。十兵衛様と与六郎様をお連れ致しました」

「うむ。入ってくれ」

 ふすまを開け、かしこまって入室する十兵衛と与六郎。そして二人は中を見るなりギョッとした。

 そこには道順のほかに例の覆面の貴人。箱木専女はこぎのとおめ・ゑい。陰陽術師の栗斎などが待ち構えていた。


「え、あ……これは……?」

 道順の部屋にやってきた十兵衛と与六郎。しかしそこで待ち構えていた面子に二人は思わず言葉を失った。

 待っていたのは道順本人に彼の側近が二名。そしてここまでの道中後方で守られていた覆面の貴人とその側近。さらには津から同行している箱木専女はこぎのとおめことゑいえい。また末席には陰陽寮の栗斎なども控えていた。

 言ってみれば護衛団一行の主要人物が一堂に会していたのだ。思いもよらぬ光景に十兵衛の心臓は一度大きくドクンと跳ね、そしてそれ以降はまるで血が凍ったかのように冷たくなった。

(これは……ハメられたのか……?)

 自分が何かしらの罠に嵌ったことはすぐに自覚した。しかしその意図まではわからない。少なくとも道順たちから悪意や殺気のようなものは感じられなかった。

 どうしていいかわからず十兵衛が呆然としていると、道順がまるで友人を世話するかのように声をかけてきた。

「どうかなされましたか、十兵衛様。立ってばかりではなくそちらに座ってはいかがです?」

 見れば末席の栗斎たちの隣には、これ見よがしに二人分の空きがあった。十兵衛と与六郎はまるで夢遊病にでもかかったかのように、言われるがままにそこに座す。

 十兵衛たちが腰を下ろしたのを見るや、道順が早速場を仕切ろうとした。

「さて、十兵衛様たちもいらしたことだし、改めて話の続きと参りましょうか」

(これはマズい……!)

 何が何だかわからずにいた十兵衛であったが、ここで流れに呑まれればそのまま帰ってこれない恐れがある。本能的に危機を悟った十兵衛は、少々不躾であったが道順の話に割り込んだ。

「あの、某は柳生庄に出す手紙の件でこちらに伺ったのですが……」

「ん?あぁそうでしたな。では拝見させていただきます」

 しかし抵抗むなしく、側近から手紙を受け取った道順はそれをざっと見るとさっさと懐に仕舞った。

「内容に問題はありませんでした。これは後で他の書状と共に届けさせましょう。……ところで十兵衛様にお話ししたいことがあったのですが、お時間よろしかったでしょうか?」

(くそっ!断れるわけがないだろうが!?)

 部屋中の瞳がすべて自分の方に向けられている。その射抜かれるかのような視線に当然抗えるはずもなく、十兵衛は歯噛みしながらも渋々頭を下げた。


 十兵衛が渋々ながらも頭を下げるのを見るや、道順は改めて会議の音頭を取った。

「では十兵衛様への説明がてら、改めて状況の整理をいたしましょう」

 どうやら先んじて部屋にいた面々はすでに現状を把握しているようだ。道順はほとんど十兵衛個人に向けるように話し始めた。

「某たちは現在、敵の術によって現在地が筒抜けになっている状態です。このままでは数日以内に奇襲を受けてしまうことでしょう。我々は何とかしてそれを阻止したい、というのがここまでの話です。ここまでは大丈夫ですか、十兵衛様?」

「そうなんですか、敵の術で……って、えっ?ええっ!?」

 思わず変な声を上げてしまった十兵衛。道順は軽く話したが、どうやら今現在護衛団一行の居場所は敵に筒抜けになっているらしい。しかもそれが敵の術によるものと聞き激しく動揺する。なぜなら十兵衛は道中、そんな術の気配など一切感じなかったからだ。

(馬鹿な!?確かに二六時中気を張っていたわけではないが、それでも変な術の気配がしたら気付いていたはずだ!?)

 妖術、道術、陰陽術……。この世には様々な体系の術が存在しているが、どんな術であれ発動している最中は独特な、非自然的な気配を発するものである。だが道中そんな気配はなかったし、なんなら今もそれらしい気配は感じられない。

 一瞬十兵衛は(これは……俺を試しているのか……?)と疑いもしたが、部屋の空気はそんな雰囲気ではない。どうやら道順の言うことは事実のようだ。十兵衛は恥じ入りながら術の詳細を尋ねた。

「その……お恥ずかしながら、某にはまるで感じ取れませぬ……。いったい敵はどのような術でこちらの居場所を把握しているのですか?」

「うむ。それはこちらのお方――十兵衛様もちらとは目にしていたでしょう、護衛対象であらせられるこちらのお方に掛けられていた術だそうです」

 そう言って道順が視線で指し示したのは例の覆面の貴人であった。ここで十兵衛はこの覆面の貴人が護衛対象であったと正式に知らされるのだが、今はそれはどうでもいいだろう。道順によると彼に掛けられた術が一行の居場所を敵に知らせているらしい。だが言われて見てもこの貴人から術の痕跡らしきものは感じられなかった。

(どういうことだ!?やはり何も感じないぞ!?)

 失礼になるくらいに覆面の貴人をまじまじと見つめる十兵衛。しかしそこに怪しげな術式の気配はない。いよいよ自分の感覚がおかしくなったのかと十兵衛が焦りだしたそんな時、ここまで黙っていたゑいが堪えきれなくなったかのように笑いだした。

「ふっ、ふふふ。まぁ気付けなくとも無理はない。今は術は発動していないのだからな」

 思わぬ言葉に十兵衛の困惑はさらに深まる。

「……どういうことでしょうか?」

「なに、これはな、常時発動しているような術ではないということだ。『あること』を契機として一瞬だけ術が発動する。逆に言えばその瞬間以外は発動していない。発動していないのならば気配も何もない。つまりお前が気配を感じ取れなかったとしても無理もないということだよ」

 楽し気に微笑むゑい。そして道順はバツの悪そうな顔をしていた。

「申し訳ない、十兵衛様。本題に入る前に貴殿がどのくらい術を見抜けるかを確認したかったのだ。だが箱木の姫君がおっしゃられた通り、気付かないのが普通らしいから気にすることはないですぞ」

「い、いえ。未熟を恥じるばかりです……。それでかの人にはいったいどのような術がかけられているのですか?」

 これに答えたのはゑいだった。

「それはな、『不浄祓い』に連動して発動するように仕掛けられた術だ」


 不浄祓い。文字通り不浄を祓う儀式や術式の総称である。

 言葉からいかつい印象を受けるかもしれないがそれほど珍しいものではなく、使用するタイミングは人や動物の死体を見た時や病気になった時。あるいはくしゃみをしたり、トイレに行った後に行うような簡易的なものもある。民間にも広く知られており、葬式後に塩を被ったり『えんがちょ』なんかもこれに相当する。

 そしてゑい曰く、貴人に掛けられた術式はそんな不浄祓いに連動して発動する術式だそうだ。

「不浄祓いに連動?」

「そう。日常で出会う穢れや不浄を祓う『不浄祓い』。こやつがそれを行うと、それに反応して自身の居場所を発信する術が発動するというわけだ」

「そ、そんなことが……」

 ゑいの説明に困惑とする十兵衛であったが、理屈で言えば可能である。要は特定の術や状態に反応して発動する術式だ。十兵衛も簡単な罠程度なら作ることもできた。問題はそのクオリティである。

 彼らはもう四日以上、京都からの期間も含めれば六日以上旅を続けていた。その間幾度となく不浄祓いが行われ、そのたびに例の場所を知らせる術式が作動していたはずだ。しかし十兵衛や陰陽寮の術師たちはその痕跡に気付くことができなかった。

(そんな高度な術式が本当に存在しているのか?)

 未だ話が呑み込めない十兵衛。それにゑいが思慮深く頷いた。

「まぁ百聞は一見に如かず。実際に見た方が早いだろう。少し待て」

 ゑいがそう言って一つ手を叩くと、隣の部屋から日中彼女の駕籠を担いでいた従者が一つの皿を持って入室してきた。そこには腹を裂かれて絶命している蛙が乗せられていた。まだ殺されたばかりなのか不快な匂いは感じられなかったが、だらしなく開かれた四肢や傷口から見えている内臓は思わず眉を顰めたくなる、まさに不浄の象徴のような存在であった。

 従者はそれを覆面の貴人の前に置いた。貴人は一瞬たじろいだような雰囲気を見せたが、ゑいはそれに視線で圧をかける。

「さあ」

「むぅ……」

 ゑいが促すと貴人は一つ頷き、軽く印を結んだのち覆面の下で何やらごにょごにょと呟き始めた。おそらく神道系の祝詞――しかも宮廷独自の体系のものだろう。彼がそれを唱え終えると、一瞬場の空気が晴れた日の草原のような爽やかなものに変わる。

 それと同時に貴人から透明な煙のようなものが漏れ出し、やがてそれは一本の針のようにまとまったのち天へと登っていった。

「これは……!?」

「ふふっ、感じ取れたようだな。今の針のようなものが敵に位置を知らせる術式だ。おそらく都(京都)を出る以前からかけられていたのだろう。そして旅先で不浄祓いをするたびに自分の居場所を相手に伝えていたということだ」

 目の前で術式の発動を見せられ唖然とする十兵衛。実際に目にした以上信じざるを得ないのだが、それでもなお信じ切れない、それほどまでに洗礼された術式だった。

「まさかこんな術式があったとは……。一瞬で、残り香もない……」

「まぁそういうわけだから気付けなかったことに気を病むなよ。私とて気付けたのは偶然だったと言わざるを得ない。七里の渡しの海難除けのまじない。あれがなければ私も気付けなかっただろう」

 ゑいによると彼女が気付けたきっかけは、七里の渡しの海難除けのまじないだったそうだ。あれもまた海での不運を祓う不浄祓いの一種である。そのためささやかながら術が反応したらしい。

(それが宮宿で計画を変更した理由か。しかしこれに気付ける彼女も恐ろしいな……)

 術の反応はほんの一瞬。しかも原因となった不浄祓いは馴染みのない神道系である。仮に術式発動の瞬間を目撃したとしても、そういうものなのかと気付かなかった可能性すらあった。

 同じ術者としてゑいの実力に畏怖する十兵衛。これに対し妖術を見ることのできない与六郎は別の感想を抱いたようだ。

「あの……某は見えませぬが、術式がかけられていることは理解しました。ならばなぜそれを放置しておられるのですか?」

 与六郎の指摘に十兵衛はハッとした。確かに今術が発動したということは、いまだ術が健在であることを意味している。七里の渡しで気付いたというのなら、もう丸一日以上承知の上で一行の位置情報を垂れ流しているということだ。護衛という観点から考えればこれはあり得ないことである。

 しかしこれに対し道順らは「いいところに気付いた」とでも言いたげな表情をしていた。

「確かに敵に情報を与えるのは普通は愚策です。しかし考えようによっては、この術は敵との唯一のつながりとも言えます。これを利用すれば敵に大打撃を与えることもできるかもしれない。そのためには……」

 道順の瞳がまっすぐに十兵衛に向けられた。

「十兵衛様。貴殿には囮となってもらいたいのです」

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