2人居た幼馴染の女の子

第11話 亡くなった3人目の幼馴染の存在

「だから俺には彼女が居るって.....言ってるじゃないか」


「そんなの関係無いって言ったじゃない。.....私は気にしない」


リビングにて。

幸子は俺に頬を膨らませる。

それから.....見てくる。


可愛いんだけど.....うん。

だけどな。

俺には彼女が居るってばよ、と何度も説明している。


「私お兄ちゃんとデートしたい」


「.....良い加減にしないとお尻ぺんぺんするぞ」


「やってみて良いよ?そんな事したらお姉ちゃんに、エッチな事された、って言うもん」


「お、おう。それはちょっと」


嫌だよね?じゃあデートして、とニコニコしてくる幸子。

八重歯を見せながら、だ。

俺は.....その白い歯に少しだけ赤面しながらそっぽを見る。


すると電話が掛かってきた。

その相手は.....幸奈だ。

え?、と思いながら俺は目を丸くする。


『そっちに幸子居ない?』


「.....居るが。どうした?」


『.....幸子何している.....?』


脅す様な声音の幸奈。

俺はゾッとして本音を告白してしまう。

青ざめながら、だ。

幸子が首を振る中だったが、だ。


「え?.....えっと.....俺とデートしたいって.....言うから」


「お兄ちゃん!!!!!何で言っちゃいうの!!!!!」


『.....ふーん.....幸子に変わってくれない?』


脅す様に俺に声を発する幸奈。

俺は顔を引き攣らせながら.....幸子に変わる。

幸子も青ざめている。

出し抜いた事を怒っている様だ幸奈は。


因みに幸奈についてだが.....怒ると相当に怖い。

それは俺と幸子しか知らないが.....。

滅多に怒らないので。


「お、お姉ちゃん。違うから。出し抜こうって思った訳じゃないから.....」


『幸子。.....デートを隠していたのは出し抜こうって思ったんだよね.....?それは間違いとは言わせないよ.....?』


「じゃ、じゃあお姉ちゃんと一緒に遊びに行くってのは.....」


『.....それなら良いかも。.....ちょっと恥ずかしいけど』


幸奈は満更でもない様な返事をした。

何で幸奈まで!?、と俺は驚愕しながら幸子を見るが。

幸子は、だって怖いです、と首を振る。

俺はその事にどうしようもなくなり。

盛大に溜息を吐いた。


「分かった.....。でもデートはしないぞ。お前ら」


「デートじゃなくなったのはショックですがまたデート出来ますよね」


『そうそう』


「お前ら......話を聞いているか?俺には彼女が居るってばよ」


だからその彼女さんは結婚した訳じゃ無いんですから。

と笑顔を浮かべる幸子。

そして、そうだよ、と返事する幸奈。

俺はそいつらに顔を引き攣らせながら、もう良いや.....、と思ってしまった。

全く.....でも。

恭子もバトルしたいと言っているしな。


「まあ恭子も納得しているし問題は無いだろうな」


「.....」


『.....』


「.....ん?どうしたお前ら」


恭子って何.....お兄ちゃん。

と目からハイライトを消す幸子。

え?恭子ってのは.....あ。

俺は顔を青ざめる。

しまった。


『.....そんなに遠島と仲が親密になったんだね。.....ふーん.....』


「そうだね。お姉ちゃん。これは殺そうか」


「おいおいおいおい!!!!!怖いって!!!!!」


ヤベェ!、と思ってしまった。

恭子と呼んでいる事をコイツらに伝えるのは初めてだった!

思いつつ俺はワタワタしながら言い訳する。

お。お前らだって下の名前で呼んでいるよな!?、と。

しかしそれがまた悪い感じになって行った。


「.....じゃあ私だって幸子じゃなくてさっちんとか呼ばれたいです」


『それは確かにね。私だって下の名前だし。.....下の名前以上に親密になりたいしね』


「.....お前ら.....」


どうしたら良いのだろうかこれ。

考えながら俺は額に手を添えてから盛大にまた溜息を吐く。

そうしていると、まあ良いや、と声がした。


それから、私用事があるから。遅くならない様にね幸子、と言う。

俺はホッとしながら言葉を聞く。

しかし。


『それからよーちゃん』


「は、はい」


『遠島の事は今日は譲ったけど明日は一緒に帰るよ。帰りたいから』


「そうっすね。はい」


『.....じゃあ幸子。あとは任せた』


「はい。監視しておくよ。お姉ちゃん」


監視って何だよ。

俺は苦笑いを浮かべながら.....幸子を見る。

幸子はニコニコしながらも。

何か黒かった。

怖いんですけど.....。


「という事で.....イチャイチャしましょう」


「今の話を聞いていたかお前.....」


「お姉ちゃんにバレなければ大丈夫です.....」


「いやいや!」


そして俺に縋って来る幸子。

それから俺の胸辺りに息を吹き掛ける。

俺はゾクゾクしながら幸子を見る。

幸子は潤んだ目で俺を見上げてきた。


「ウフフフフ.....」


「おいおいおいおい!」


「私に全部任せれば良いんですよ.....よーくん.....」


「よーくんっておま!」


「.....ウフフフフ.....」


ニヤニヤしてくる幸子。

理性が吹っ飛ぶってばよ。

誰か助けてぇ!

俺は悲鳴を上げながら逃げていると。

幸子は少しだけ離れて笑った。


「.....こういうの楽しいね。お兄ちゃん」


「お前な。冗談がすぎる」


「.....私は.....部活を失敗してから.....お兄ちゃんに出会ってから好きになったから。.....だから今が一番楽しい」


「.....それは水泳か」


「.....だね。攣って溺れて.....やれなくなったから」


確かにな。

懐かしいよな。

実は幸子は金槌だ。


だけど昔は違う。

水泳の選手権で溺れてから.....金槌になったのだ。

あの日の事を.....俺も覚えている。


「.....悔しかったな。エースなのに水にもう入れないって.....思ったら」


「.....お前にとってはあの時は地獄だったな」


「そうだね。お兄ちゃん。.....水泳出来ないし部活も辞めざるをえなかったから.....」


「.....それを考えると頑張ったな。幸子」


うん。

でもさっちんだよ、お兄ちゃん。

と俺にまた赤面でニヤニヤする幸子。

それは勘弁してくれよ、と思いながら俺は苦笑いを浮かべる。

それから窓から外を見た。


「お兄ちゃん」


「.....何だ」


「私。絶対に負けない。.....勝つからね。この大会に」


「.....そうか」


幸子も幸奈も。

それから恭子も.....みんな必死に戦っている。

俺はその姿を見ながら.....その必死な感じのあの娘を思い出す。

小学生の時に.....仲が良かった笑顔のあの娘を、である。

艶やかな黒髪が特徴的だった幼馴染の3人目。


茅場湊(かやばみなと)を、だ。


享年9歳。

もう2度と会えない。

何故かって?

湊は.....病弱だった。

そして小児がんの全身転移で死んだから。


もう会えない。

だけどみんなに秘密にしているが俺は.....湊が一番好きなのだ。

だからだろうな。


好きになれないのは、だ。

今でもずっと.....涙が出るしな。

思い出せば.....だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る