第9話 最大の愛の告白

「ハアハア.....」


「も、もう!急に走り出すから逃げるにしても.....!」


「す、すまん」


そして俺達は屋上まで逃げて来た。

屋上のドアの鍵を閉める。

それから汗を拭う。


そうしてから改めて幸奈を見る。

幸奈は少しだけモジモジしていた。

それから俺を見てくる。

しまったな。

俺とした事が.....これでは付き合っている土方先輩に申し訳ない。


「土方先輩に申し訳ないな.....行くか」


「.....ちょ、ちょっと待ってよ。もう行くの?」


「当たり前だろ。土方先輩に申し訳ない」


「.....そ、そんな事ないもん.....」


頬を膨らませながら俺の袖を少しだけ掴む幸奈。

何だよ一体、と思いながら幸奈を見る。

幸奈は俺を潤んだ目で見上げていた。

いや。何だこの反応は?

俺は目を丸くする。


「.....私は.....貴方に.....気付いてほしかったから.....だから.....」


「.....???.....え?」


「わ、私は悔しかったけど.....腹いせに.....土方先輩に協力してもらってるけど.....!」


「.....どういう意味だ?」


「だから私は.....!」


言葉が出てこない感じで俺を見上げてくる。

泣きそうな顔だ。

そして.....こう話した。


私.....よーちゃんの前だと言葉が上手く出ないから.....ゴメン、と、だ。

俺はますます顔を歪める。

鈍感過ぎるって事ですかね?私。


「.....聞いても良いか」


「.....何」


「.....お前は俺が好きなのか?」


「.....」


それから遂に認めた。

真っ赤になりながら頷く幸奈。

俺は赤く頬を染めて俯く。


何で俺なんだ、と聞いてみた。

すると、命懸けで私を救ったんだよ?それで嫌いになる?普通、と言ってくる。

それから俺をジッと見つめてくる。


「私は昔からよーちゃんが好きだった。大好きだった。だから.....悔しかった」


「.....それじゃ土方先輩と付き合ったのは.....」


「悔しかったから.....見せてやりたかった。それだけ」


「.....この事は土方先輩も了承済みって事か。全く.....」


「.....御免なさい.....」


全くもう.....。

何がどうなっていたのか、と思ったぞ。

俺は額に手を添えながら.....幸奈を見る。

すると幸奈は俺の首に手を回してくる。

それから俺を見つめてきた。


「.....でも言えた。嬉しい。.....絶対に負けない。他の子に」


「でも俺は遠島と付き合ってんぞ。.....負けないって.....」


「多分、幸子ならこう言う。.....『結婚してないんだから』って」


流石は姉妹。

同じ事を言っているではないか。

俺は顔を引き攣らせながら.....見つめる。

でもちょっと待ってくれ。

あの、さっきからのこの手を回しているのは何だ?


「.....このままキスしちゃえって感じだし」


「.....おい。冗談だろ。俺は.....恋人が!」


「別に.....遠島なんかに負けないし。私。それにもう我慢出来ない。嬉しくて」


「ちょ、ちょっと待って!マジに待って!」


「.....私は待てないよ?.....よーちゃん?」


うっかり躓いた。

そしてバランスを崩してそのまま尻餅で後退りする。

すると目の前の幸奈は迫って来た。

四つん這いで、だ。


俺を紅潮しながら見てくる。

潤んでいる、目が。

理性が壊れるぅ!!!!!


「よーちゃん。.....誰も居ないしキスぐらい良いよね」


「.....良くないです。とっても良くないよ。何言っているのかな?幸奈さん?」


「.....私に任せなさい。全部を」


「おいおいおいおい!!!!!」


ヤバいこれスイッチ入った!

誰か助けてぇ!、と思いながら俺は逃げる。

しかし壁際に追い詰められた。


その次の瞬間。

ドアが勢い良く開く。

何故か知らないが鍵が外れてながら、だ。

そして予想外の人物が入って来た。


「此処にいた.....ちょ!」


「.....と、遠島!?」


「何で.....」


「ちょ、ちょ、ちょ!何イチャイチャしているんですか!!!!!先輩!念の為に職員室で鍵の束を借りて良かったですね!!!!!」


それから俺の間に割って入って来る遠島。

そしてキッと睨む遠島。

遠島に対して猫が威嚇する様に睨む幸奈。

それからバチバチと火花が散る。

そして睨み合う。


「.....へえ.....遂に告白したんですね。満田先輩」


「.....そうだね。泥棒猫さん?」


「.....じゃあライバルですね。これからは。でも付き合っている状態な私が優勢ですけどね。アハハ」


「はあ.....?」


ブチッと何かが切れる音がした。

いやつーか、ナニコレ.....。

助けが助けになってないんだが.....。

俺は苦笑いで冷や汗をかく。

バチバチと火花を散らす目の前の2人を見ながら、だ。


誰かマジに仲介してくれ。

本気でアカンこれ。

考えながら見ていると.....メッセージが来た。


(楽しそうだな。お前)


(見てんなら助けてくれよ!?)


(屋上を偶然に眺めていたんだけど.....お前ら何やってんの?アッハッハ。まあどうせお前の事だろうから助けないけど)


(郁郎テメェ!!!!!)


何で観察で終わらせてんだ!

助けろよそこは!

つうか何、観察してんだよ!!!!!

良い加減にせえ!


俺は思いながら郁郎に怒りのメッセージを送りながら。

目の前の2人を見る。

2人は、フンッ!、と言って互いにそっぽを向いた。

割と.....どうしたら良いのだろう。

考えながら俺は.....苦笑いで対応した。

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