素直になれない気持ちのドアが開く時

第8話 大嫌いだけど?

「おー。どうだった?」


「ぶっ殺されそうになった。教師に」


「まあそりゃそうだな。何処で何をしていたのかしらんが全く」


5時限目の後の話。

苦笑する郁郎。

秘密の花園には沢山の花が咲いていた。


そして俺はとても幸せな気持ちになったのだが。

残念ながら探しに来た高校の教師に見つかってしまい大目玉を食らった。

全く.....良いじゃねーか1回サボるぐらい、と思うのだが。

こん畜生めが。


「サボるならもうちょっと有能に頭を使ったらどうかね。少年」


「お前に言われたくはないな。郁郎さん」


「ハッハッハ」


そんな会話をしながら幸奈を見る。

幸奈は女子生徒と会話していた。

俺は郁郎に、何か変わった事あったか?アイツに、と聞く。

郁郎は、うんにゃ、と手を広げて首を振る。


「何もないぞ」


「そうか」


「おう」


「.....取り合えずアイツと会話してくる」


「まあ気を付けてな」


何に気を付けるのか。

俺は郁郎と拳をぶつけ合ってから。

そのまま幸奈に近付く。

するとビクッとしながら幸奈は俺を見てきた。

何?、的な感じで。


「俺さ。思い出した」


「.....何を?」


「昔の事。.....お前には随分と迷惑を掛けたな」


「.....!.....ベ、別に。大丈夫だし」


「それで俺は聞きたい事がある」


「.....何を聞きたいの?」


俺は真剣な顔をする。

それから直に聞く。

その事を、だ。

何を聞くかと言えば、お前は俺が好きなのか、という事を。

今聞くべきだな、と思ったのだ。


「お前さ。俺が好きなの?」


「.....別に?大嫌い」


「あれ!?そうなの!?」


「うん。大嫌い。.....ずっと嫌いだけど」


「.....うーん.....?」


いや、何だこれ?

滅茶苦茶に嫌いって顔されたんだけど。

どうしたもんなのか。


やっぱり気のせいか?

俺は困惑しながら溜息を吐く。

それから、本当に俺が嫌いか?、と聞くが、そうね、と帰ってきた。

俺は本気のマジに困惑しながら背後を見る。

郁郎えもん、助けて!


「.....郁郎えもん。助けてくれ」


「助けるもクソも無い。お前が嫌いって事だ」


「.....えー」


何この結末。

俺は額に手を添えながらそのまま踵を返す。

すると小さな声でこんなのが聞こえた。


大好きなのに、と。

俺は小さな声に背後を見るが.....幸奈はプイッとそっぽを見ていた。

溜息しか出ない。


「郁郎。全然駄目じゃないか。どうなっているんだ」


「まあ.....そんな事もあるよ」


「郁郎えもん勘弁してくれ」


「誰が郁郎えもんだよ。お前は。ド〇えもんか俺は。秘密道具とか出て来ねぇぞ」


「そうか」


そして俺は困惑の中。

次の時間を受ける事になった。

それからの放課後の話だ。


また俺達は部活をやろうとした時。

何故か知らないが.....新部員が入って来た。

それは.....幸奈だ。

帰宅部の筈であるが、だ。



「初めまして。幸奈です」


「お、お前.....何してんの?」


「何って見れば分かるでしょ。私は部活に入りたかったから」


「.....」


遠島は何かを感じ。

そして部長は、これは面白くなってきたな、と笑顔を浮かべ。

男子部員達はみな嫉妬していた。

女子部員は俺達に、きゃー、と言っている。

面白くないんだが。


「お前。土方先輩の為に入るのか?時間を合わせる為に?」


「.....そうだけど。.....何か問題でも?」


「いや。それなら別の部活でも.....」


「何?私が嫌いなの?よーちゃん」


「いや。そういう訳じゃ無いんだが.....」


遠島が目を燃やしている。

俺は闘争心の様なその目に冷や汗が出る。

部長は、まあ良いじゃないか、と言いながら手を取った。

幸奈の手を、だ。

それから笑みを柔和に浮かべる。


「ようこそ。.....この文芸部に」


「はい。先輩。優しそうな先輩で良かったです」


「.....私の事は部長と呼んでくれ。時に君は.....やっぱり噂通り美少女だね。私と良い感じに仲を深めようじゃないか」


「.....はい?」


え?、という感じで目を丸くする幸奈。

イカン。

部長の百合スイッチが入っているではないか。

このままではマズい。


女性と美少女と可愛い女の子を見るとこの人興奮するのだ。

それも小学生でも何でも。

つまり.....変態すぎるのである。


それは遠島もそうだったが。

俺達は慌てて腕と足を持ってから部長の動きを直ぐに止めた。

ルパ〇が〇二子に飛び付く様に飛び付くので、だ。

それから言い聞かせる。


「落ち着いて下さい。部長」


「そうですよ!駄目です絶対に!」


「ですね!」


けものフ〇ンズのサーバルがかばんちゃんを襲った様には襲わせんぞ。

俺の大切な幼馴染を!、という思いで必死に止める。

部長は、失礼だね君達は、と眉を顰める。

それから、こんな美少女を前にしてどう止めろと、と言う。

マジ犯罪!


「え、っと。よーちゃん.....」


「取り合えずは落ち着かせるまで待ってくれ。この人、百合小説が大好きでね。申し訳無いんだが」


「う、うん」


ビックリしている幸奈。

俺は先輩を、どうどう!、と言いながら落ち着かせる。

それから先輩の前に遠島が百合小説を素早く置いた。

獣の様にそれに縋って呼び始める部長を他所にしてから。


俺は幸奈の手を握ってからそのまま脱出した。

その恐ろしい部室から、だ。

遠島に、サンキュー、と思いながら、である。

ちょ。ちょっとよーちゃん!?、と言っていたが。

聞かずにそのまま逃走した。


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