第6話 ヤダ。帰りたくない
何か.....うーん。
いや本気で何かスッキリしない。
どうスッキリしないかといえば.....そうだな。
現状を整理してみる。
先ず、土方先輩と幸奈が付き合い始めた。
しかしながらその土方先輩は俺に、君は運命に抗うべきだ、と言い始める。
どういう意味なのだろうか、と思ってしまう。
そして今に至っているのだが.....俺は今。
教室で考えていた。
しかしながら答えは浮かばず、だ。
でも有り得ないよな。
付き合い始めた奴が俺を好いている可能性。
それは0に近いと思う。
つまり俺は遠島を愛せばそれで良い訳の筈なのだが。
うーん、と悩む事が多いな。
考えていると.....幸奈がやって来た。
俺の元に近付いて来る.....って何だよ?
「あのさ。よーちゃん」
「.....何だ。幸奈?」
「.....今度、土方先輩は誕生日なんだ。だから一緒に.....誕生日プレゼントの買い物をしてくれない?」
「え?.....あ、ああ。良いけど.....」
俺はビックリしながらも頷く。
すると何だか手を叩いて幸奈は嬉しそうな顔をした。
その様子に、全くな、と思う。
彼氏居るのに、とも。
「約束だよ」
「.....約束は破らねぇよ。俺は」
「有難う。じゃあ.....」
そして去って行く幸奈。
俺はその姿を見送りながら目の前を見ると。
そこに郁郎が立っていた。
よお、と言いながら、である。
それからかったるそうに椅子に腰掛けた。
「しかしオメェも大変だな」
「何がだ?」
「.....色々とな。でも.....それはそうと諦めたんだな。満田さん」
「.....やっぱり俺を好いているのか?幸奈は」
「ようやっと気付き始めたのかこの鈍感。そうとも言えるしそうとも言えない。だって考えてみろ。満田さんは結局、土方先輩と付き合い始めたぞ。という事はその可能性は希薄になったって事だ」
やっぱ好きなのかアイツ。
でも土方先輩と付き合い始めたって事は0だな。
それを考えながら俺は幸奈を見る。
何で俺を好いていたのに土方先輩と付き合い始めたのか。
分からんのう。
「まあそれはそうと聞いたぞお前」
「.....は?何を?」
「お前.....満田さんの妹にも好かれたんだよな?告白されたって聞いたぞ」
「ブファ!!!!!」
何で知ってんだよ!!!!!
俺は驚愕しながら居ると。
クラスメイト達が聞き耳を立てていた様でバットを持って立ち上がった。
それから俺に迫って来る。
極秘にしていたのにそれは無い!
「お前という奴は.....極秘にしていたのに!」
「何処で知ったか教えてやろうか。俺の妹と満田さんの妹は同級生で.....俺の妹は何でもベラベラ話すクズだ!アッハッハ」
「殺す!!!!!」
「誰を殺すって?俺を?無理に決まってんだろ。ケケケ」
このクソ馬鹿!
目の前から嫉妬に燃えた男子生徒が迫る。
その後ろでは、眉を顰めた.....幸奈が居た。
アイツ聞いていたのか!?
俺は驚愕しながら男子生徒達に向く。
よし!落ち着けお前ら!、と。
「落ち着け?お前さ。美少女を界隈していてそりゃない」
「そうだな。ぶっ殺すに値する」
「俺もそう思う」
「右手が疼くぜ」
シャベルが出た。
誰だ界隈って言った馬鹿は!
っていうかマジに落ち着けってばよ。
俺は青ざめながら逃げようとするが捕らえられた。
離せコラァ!
と思っていると目の前から代表しての感じでハイライトを消した幸奈がやって来る。
それから俺を見てくる。
「ねえ。よーちゃん。私の妹が何で君を好いているのかな.....?」
「頼む。マジに落ち着いて話を聞いてくれ。俺はそんなつもりじゃ」
すると、そんなつもりじゃ!?、と言ってから男子生徒の目に火が点いた。
それから大暴れし始める。
何だってんだコイツはよぉ!、的な感じで、だ。
そしてまた迫って来る男子生徒軍団。
「満田さんの為にぶっ殺せぇ!!!!!」
「オラァ!!!!!」
「うおおおお!こんな所で死ねるかぁ!!!!!」
何の戦いだっつーの!!!!!
俺は束縛から逃げてからそのまま教室を飛び出して別の場所に向かう。
中庭のあそこに逃げよう。
そう思いながらそのまま逃走した。
それから中庭のドアを開ける。
そうしてから中庭のドアの鍵を勢いよく閉めた。
そして前を見る。
ため息を吐きながら、だ。
全くアイツらという奴は、と思いつつ、だ。
「お兄ちゃん.....?」
「.....ハァハァ.....ん?お兄ちゃん?」
「何しているの?」
真正面を見ると。
何故か知らないが.....セーラー服の幸子が居た。
その姿は怯えている様な感じだが。
ちょ。何やってんだ!?
ここ高校なんだが!?
「どうしたんだお前?!」
「.....この横、一応、私の中学校。.....そこから来たんだよ」
「え?でもお前.....こんな場所に勝手に来たら.....」
「.....女子同士で陰口言われて.....それで嫌になって逃げて来たの。そしたらいつの間にかここに来ていたの」
中庭の木で死角になっているベンチに腰掛けている幸子。
俺は息を整えながらそのベンチに同じく腰掛ける。
此処は生徒の間で、秘密の愛の場所、と呼ばれている場所だ。
何故なら教師に見つからない様に死角になっているから、である。
このベンチの横から木の間をすり抜けて中学校に行けるのだが.....。
だから中学生がこのベンチを利用する事もある。
コッソリと、だ。
でもまさか幸子が居るとは思わなかった。
「.....イジメられているのか?」
「違うよ。.....でも顔が可愛いから嫉妬されているの。それで嫌な事を言われた」
「.....お前は可愛いもんな」
「またそんな事を。お兄ちゃんのばか」
「.....ハハハ」
俺達は空を見上げる。
それから流れる雲を見つめる。
そうしていると俺の肩に幸子が寄り添って来た。
そして、お兄ちゃんが好き、と言う。
「恋人と別れてとは言わない。だけど私も見てほしい」
「.....」
「.....私、お兄ちゃんが好きだから。昔から必死な姿に憧れていたの」
「.....幸子.....」
お姉ちゃんも絶対に貴方が好きだよ。
絶対にね、と笑顔を浮かべる幸子。
俺はそんな姿に、だな。最近自覚し始めた、と答える。
そして.....幸子をまた見る。
心配げな顔で、だ。
「俺は良いけどお前は中学校に戻った方が良いんじゃないか」
「ヤダ。お兄ちゃんと一緒に居る」
「.....オイオイ.....良いのか?探しているぞきっと」
「.....ヤダ」
渋る幸子。
参ったな.....と思いながら。
俺は苦笑いで幸子を見る。
そして空をまた見上げつつ。
俺は過去話をしようか考えていた。
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