第3話 幸奈の願い

簡単に言ってしまうと。

何だか今の今が全部、話が拗れたりしておかしい気がする。

どうしたら良いのだろうか、と思い。

俺は友人の吉田郁郎(よしだいくろう)に屋上で相談した。


顔立ちはそばかすのある顔立ちながらも。

それなりに好青年の野郎。

俺の悪友といえる。


「それはまあ.....対決姿勢を見せているんじゃないか?お前に」


「やっぱそうなのかね。.....うーん。そこまで見せんでも良い気がするんだが」


「.....そうだなぁ。そこら辺は意味が分からんな。しかし珍しいな。満田がそんな感じだとは」


「だよなぁ」


正直言って.....本当に分からないな。

何が起こっているのか、だ。

そうしていると.....屋上のドアが開いた。


そして突然.....何故か知らないが噂の土方先輩が顔を見せる。

やあ、と言いながら、だ。

俺達以外に人が居ないので.....つまり土方先輩は俺達に用事があったのだろう。


「君が的場くんかい?」


「.....はい。俺ですが.....どうしたんですか?初めてですよね」


「.....そうだね。君に会いに来たのは初めてだ。.....僕は君に相談があって来たんだ」


俺と郁郎は顔を見合わせてから驚きつつ土方先輩を見る。

土方先輩は先輩は側に座っても良いかい、と笑みを浮かべる。

俺達は席を譲った。

それから驚きの顔を見せる。


「的場くん。君はよく一緒に満田幸奈さんと一緒に居るよね」


「.....はい?確かにそうですが.....」


「実はね。.....俺はずっと幸奈さんが好きでね。.....それで告白しても良いかなって許可を取りに来たんだ。君達は幼馴染の様だからね」


「.....え!?.....あ、えっと、でも.....はい。大丈夫ですよ?俺は彼女が居ますし別に.....」


驚愕じゃないかそれ。

良かったなアイツ、と考えていると。

好青年はニコッとする。


それから、そうなんだね、と答えた。

だが直ぐに何だか複雑な顔をした土方先輩。

それから.....俺を真剣な顔で見てくる。


「君はそれで良いのかい。.....小学校からの幼馴染なんだろう?」


「.....俺は別に.....その。恋愛感情とか持ってないですし。アイツに」


「.....そうかい。.....それなら告白しようかな」


もうじき.....高校も進路を本気で考えなくちゃいけないしね。

とコロッケパンを口に入れる土方先輩。

俺は.....その様子に、ですか、と答えていると。


土方先輩は、万に一つの可能性だが.....彼女は君を好いている可能性は無いのかい?、と言ってくる。

いやいや、あり得ないだろ。

アンタが好きなんだぞアイツは。


「土方先輩。それは無いっす。アイツは.....俺を好きにならないですよ。だって昔の事がありますから」


「.....昔の事?それは一体?」


「俺、アイツと遊んでいて.....それで遊んでいる場所に迷ってしまって暗闇に置き去りにしたんです。.....夜が怖くなって逃げてしまって。それで警察に世話になったんです。そんな滅茶苦茶な過去がありますから」


「.....そんな事があったのかい?」


「だから万に一つも可能性は無いですよ。アイツは俺を嫌っています。俺を好いている可能性は0でしょうね」


その時の事もあるしな。

俺は首を振る。

すると土方先輩は、そうなんだね、と笑みを浮かべた。

本当にこの人は聞き上手で柔和だな。


この人ならアイツを幸せにしてくれるだろう。

そう思っていた矢先の事だった。

いきなり屋上の影から幸奈が出て来た.....えぇ!!!!?

コイツ何やってんだ!!!!?

拳を握り締める幸奈。


「.....そんな事無いもん.....置いて行かれたけど君は.....!」


「.....?.....幸奈?」


「.....私は.....!わ、私は.....!!!!!私は.....」


「.....?????」


キッと俺を力強く睨む。

そして幸奈は涙目で俺を見てくる。

力を込めに込めたが感じでガックリと肩を落とした。

そうしてから土方先輩に目配せを行ってからトボトボと去って行く。


その様子を俺達は、え?、という感じで見ていた。

特に俺が、え?、である。

何だアイツは。


喜ぶと思ったのに。

それに先輩が居るのに失礼だな。

しかもそれは好きな人に言う言葉じゃないだろ。

と思っていると土方先輩が苦笑した。


「.....アッハッハ。.....成程ね。.....これは俺は駄目だな」


「え?土方先輩?」


「.....君は本当にこれで良いのかい?もう一度聞くけど」


「.....え?え?」


「考え直すべきかもしれないよ現状を君は.....どうやら間違った道を歩んでいると思うよ君は。.....心に手を添えてみてくれ」


そう言葉を発して、じゃあ野球部のミーティングがあるから、と立ち上がってポケットに手を入れて笑みを浮かべて去って行く.....土方先輩。

何かを諦めた様に、だ。


え?何か間違っているのか俺?

だって.....彼女居るんだぞ.....俺。

それ関係無いかもだけど。


「.....うーん。土方先輩.....分からん」


「.....俺はちょっと分かった」


「.....え?いや、ちょっと待て教えてくれよ。一体何が分かったんだ」


「.....いや?教えないけどな。お前が自らで気付け。これ大切」


郁郎は言いながら人差し指を立てつつ周りの昼食のパンの袋とかを片した。

いやいや何でどいつもコイツも教えてくれないんだよ。

勘弁してくれよマジに.....。

考えながら俺は額に手を添えてから。

訳も分からず溜息を吐いた。

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